142話 知らないままでいたい。
142話 知らないままでいたい。
クロッカの『王道革命』において、もっとも重要なピースである『センエース』。
センエースがどれだけうまいこと機能するか……それが、王道革命を完璧に果たせるかどうかのカギ。
だが、その大事な鍵であるセンエースが……あまりにも規格外すぎて、クロッカですら、いまだ、はかりきれずにいる。
これまで、十七眷属とのあれこれや、カドヒトとのあれこれや、学校でのあれこれなど、色々と、センのムーブを見せてもらったが、
しかし、まだまだ、センエースの底が見えない。
クロッカは思う。
『センエースの底を知りたい』
――しかし、同時に、
『知らないままでいたい』、
という気持ちもあったりする。
『自分なんかでは、はかり切れないぐらい、壮大な存在』であってほしい……
という、夢見がちな乙女心もあったり、なかったりする。
『支配者』の視点では、『完全な理解をしておきたい』が、
『一人の女』としては、『パートナー』に無限の輝きを求めてしまう。
相反するいくつかの想いを胸に、
クロッカは、今回の等級試験に望んでいる。
センエースは、そんなクロッカの想いを知ってか知らずか、
「ふぁーあ……」
と、呑気にアクビをしている。
センにとって、今回の試験は、本当に、興味の対象外。
『さっさと終わらせたい』以外の感想はゼロ。
センにとっての等級試験は、学生のとっての朝の朝礼ぐらいの価値しかない、と言えば、センが感じている『面倒くささ』が多少はご理解いただけるだろうか。
★
――そして、はじまる四級試験。
試験内容は、いたってシンプルなダンジョン攻略。
『最深部で待っているルーミッド』の元まで辿り着いたら合格。
ダソルビア魔術学院には、全部で三つの地下迷宮が存在している。
その中の一つを攻略することが、今回の試験内容。
ちなみに、この試験の内容に関しては、当初の予定通り。
ルーミッドは、最終的にセンを落とす気でいるが、一級試験や特級試験までは、普通に予定通りに試験を遂行するつもりでいる。
もちろん、四級、三級、二級の試験でも、チャンスがあれば落としてやろうと、虎視眈々だったりもするが。
ルーミッドは、『五級試験を合格した101人』に向けて、
「このダンジョンには、それなりのモンスターが大量にわく。それにくわえ、俺の手製のワナもしかけてある。今回、このダンジョンに仕込んだのは、相当なワナだ。普通に命を落とす可能性があるから、死にたくない者は、このまま帰るように。騙し打ちするつもりはないから、最初にハッキリ言っておくが、俺の見立てだと、この中の何人かは確実に死ぬ。嫌なら帰れ。俺は別に、お前らを殺すことを目的にはしていない」
そう言われて、何名かが『どうしたものか』と悩み始める。
特に、3組の面々が数名悩んでいたので、
そんな彼・彼女らに、センが、
「リノ、マト、ヤン……お真らは、ここで帰れ。お前らの今の実力だと、ここらが潮時だ。四級以上の等級は、また次回以降にとれ。お前らはまだまだ成長できる。将来的には、三級まで確実にとれるようになるだろう。今、ここで無理に命をかける必要はない」
センの言葉を受けて決心がついたのか、
リノ、マト、ヤンの三名は、逆らうことなく、そのままこの場を後にした。
ほかにも、2組のメンツや、一般の参加者等が、数名、この場を後にし、
残ったのは70名。
その70名を見たルーミッドは、
(まあ、こいつらなら、生き残るぐらいはできるだろう)
と、心の中でつぶやきつつ、
「もう帰る者はいないようだな。ここから先、死んでも完全に自己責任だ。自分の判断以外を恨むのはお門違いだぞ」