141話 直属戦闘団。
141話 直属戦闘団。
センを得たことで、クロッカは『邪道ではなく、王道の真正面から、世界の支配構造を破壊しよう』と考えた。
昔は、『どれだけの邪道・非道を尽くすことになろうと、必ず世界を変えてみせる』と思っていたが、センを得たクロッカは『まっとうに世界をひっくり返してやる』と、方向性をガラっと変えた。
(特級をもっている者になら、正式に、龍神族の法にのっとって、『直属戦闘団』の団長の地位を与えることも可能になる)
別にセンが、特級をもっていなくとも、いくつかの抜け道を使うことで、部隊を与えることは可能。
だが、正式な手順を踏んでいれば、通しやすくなるのも事実。
戦闘団という大きな部隊の運用には、社会的な信用というものがあった方がいい。
今後、クロッカが成そうとしている革命には、『実質的な地位・信用』も不可欠な要素。
クロッカの革命フローチャートは以下の通り。
・まずは、あらゆる手段を用いて、センの地位を向上させる。魔人だからどうこうという愚かな差別が出来ないぐらい、完璧な実績とバックボーンを確立させていく。
・センの地位が上がるほどに、センに与えられる魔人の数が増える。
・センの指導で、有能な学生や魔人を大幅に強化していく。
・センに対し、『正式(現行の社会ルールを漏れなく踏襲した上で)』に『強力な部隊(センが鍛えた学生や魔人を中心とした部隊)』を与えて運用させる。
・センエース戦闘団で大量の成果をあげさせる。センエースが主軸の部隊なら、どんな面倒事でも確実に対応できる。
・クロッカ直属の『センエース戦闘団』という、強力な部隊の社会的地位を、出来る限り底上げする。
・マッチポンプでもなんでも使って、あらゆる角度から、センエース戦闘団の社会的信用度を底上げし、世界にとって、なくてはならないものに押し上げる。
センエースという、強大な力を持つカリスマがいれば、
ここまでのチャートを成立させることは可能。
問題はこの先。
・世界にとってなくてはならない『センエース戦闘団』の地位を、さらに盤石なものにしていく。
・センエース戦闘団の地位が向上すると同時に、クロッカの発言権も底上げ。
・『センエース戦闘団を率いるクロッカが世界を支配することこそ』が『世界にとって、もっとも利がある』……と、民衆に理解させる。
・クロッカ以外の龍神族の発言権を相対的に抑え込むと同時に、十七眷属の一部も味方に引き込んでいく(信念どうこうはなく、強い方、長い方に巻かれるという者が、十七眷属の中にも何名かいる)。
・最終的には、カドヒト率いる邪教団ゼノを、センエース戦闘団に引き込み、戦力を増強。
・ここまできたら、『クロッカ直属センエース戦闘団』と『民意』を武器にして、本格的に、革命を起こす。
・クロッカに反目する上級国民を皆殺しにして、社会規範をつくりかえる。とりあえず、邪魔だから、家族は全員殺す。
・今のように、一部の上級国民だけが甘い汁を吸い、地位的に下位の者が苦しむ世界ではなく、より多くの者が幸福になれる社会を実現する。
・ハッピーエンド。フィニッシュ!
――センエース戦闘団をつくることまでは問題なくできるだろうが、
それをうまく運用して、最終フェーズまでもっていくのは非常に難しい。
なんとか家族を皆殺しにできたとしても、ただの暴力革命では、下の者がついてこないから、その辺の塩梅もうまいことやっていく必要がある。
つまりは政治。
分配と制定と管理。
正しい支配。
幸福を追求する社会の構築。
クロッカが求めるのは、結論の平等性ではなく、チャンスの平等性を重んじる社会。
理不尽な不公平を徹底的に排斥し、全ての命が、輝く明日を求めることができる世界。
『敵を殺す』というだけでは達成不可能な夢……果て無き理想を求める、クロッカの闘い。
……クロッカは思う。
(目標を達成するために必要なのは、ただしい現状理解。なのに……私は、私の革命にとって、もっとも大事なコマである『センエース』の底を、まだ理解できていない。真に世界を整地したいと願うのであれば……私は、センエースを正しく理解しなければいけない)