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138話 不合格だ。


 138話 不合格だ。


「リーブル、これはお前がはじめた物語だ。涙を呑んで、受け入れろ」


 そう言いながら、リーブルに背中を向けるセン。

 歩きだそうとしたところで、


 ガシッ……


 と、足元に、ガキの手の感触がした。

 見てみると、

 リーブルが涙と鼻水を垂れ流しながら、

 センの足元にしがみついていた。


「ひぎぃ……ひぎぃ……」


 歯を食いしばり、声にならない声をあげながら、

 グっと顔をあげて、鼻水と涙でまみれた顔でセンを睨んでいる。


「死にたいのか?」


 と、そう問いかけると、リーブルは、

 首を横にふりながら、


「死にたくない……死にたくない……死にたくない……」


 と、ボロボロ泣きながら、


「でも……おかあさんを……死なせたくない……」


 と、そう言った。

 リーブルの発言を聞いたセンは、


「不合格だ」


 と、最後の最後まで辛辣に、冷めた顔で、そう言った。


 ……が、続けて、


「不合格は不合格だが、努力賞ぐらいはくれてやる」


 そう言いながら、

 アイテムボックスに手を伸ばし、

 そこから一枚の魔カードを取り出すと、


「受け取れ、リーブル」


「……ぇ」


 差し出された魔カードを、いぶかしげな顔でみつめるリーブル。


「さっさと受け取れ。それとも、死ぬか?」


 と、冷たい声で言われて、リーブルはビクっとなる。

 すぐさま、カードを受け取り、

 袖で涙をぬぐい、内容を確認。

 結果、リーブルは、


「べぇ?!」


 驚きのあまり、涙も鼻水も引っ込んでしまった。

 自分が今、手に持っているもの、

 それは、

 『大治癒ランク10』の魔カード。


「じゅ、じゅ、じゅ、10?! ランク10の魔カードぉ??!!!」


 ランク10の魔法は、存在値200ぐらいの者にしか使えない大魔法。

 つまり、この世界においては、使い手が存在しない神の魔法。

 この世界最強の種『龍神族』の中で歴代最高位の実力を誇るクロッカでも、

 使える魔法の最高位は『ランク9の龍毒』。


「こ、こ、こんな……こんな魔カード……ぁ、ありえな……」


 ありえない魔カードを前にして、先ほど以上にビビリ散らすリーブル。

 そんな彼に、センは、淡々と、


「そいつを使えば、どんな病気やケガだろうと治るはずだ。親に使いたければ使うといい。テメェ自身のためにとっておくのもいいだろう。好きな道を選択しろ。ただ、売るのはやめておいた方がいい。上級国民の連中に、それの存在がバレれば、出所でどころを聞くために、お前を徹底的に拷問するだろう。その魔カードは、この世界においては、あまりに過ぎた力。神の奇跡と言ってもいい。神の奇跡は、うまく使えば幸福を呼ぶが、へたな使い方をすれば、とんでもない災厄を招く」


「……」


「このまま、弛む事なく成長を続ければ……『お前の資質』を鑑みるに、5年後には3級をクリアできるだろう。もう急ぐ理由もないんだし、のんびり行けや」


「……」


「感謝の言葉が聞こえねぇな」


「っ……あ、ありがとう……ございます……ありがとう……ございま……あの……えっと……」


 混乱しつつも、感謝をしつつ、そしてまた混乱するリーブル。

 何が何やら分からないという顔で、


「あ、あの……あなたは……いったい……誰……なんですか?」


 という、まっすぐな疑問を突き付けられたセンは、


「……」


 数秒だけ悩んでから、

 仮面を外し、ニっと笑って、


「センエース、探偵さ」


 そう言ってから、

 空間魔法を解除し、

 その場を後にした。


 場が静かになる。

 リーブルの付近には、先ほど、センに四肢を切断されて気絶させられた受験生たちの山。

 気絶はしているが、


(……この人たち……切られたはずの手足が……戻っている……)


 何事もなかったかのように、五体満足の受験生たちを見つめながら、

 残されたリーブルは、

 しばらく呆けていたが、


(……センエース……クロッカ様が飼っている魔人……確か……魔法学校で教師をしているとか……)



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