136話 なかなか胸をうつ、いいプレゼンだった。
136話 なかなか胸をうつ、いいプレゼンだった。
存在値が高いだけではなく、全体的に高性能な少年。
そんなリーブルに、
センは、
「追加で20秒やろう。全力で、俺に訴えかけろ。生きたい理由、合格したい理由。この20秒間のアピール熱量次第で、お前を生かすか、それとも殺すか決める。さあ、お前の人生における最大の分岐点! 命がけの全力プレゼン、いってみよう! キュー!」
鬼のパワハラを受けるリーブル。
そこらの8歳なら泡吹いて泣き出すところだが、
リーブルは、根性がイカついので、
必死に頭をまわし、
「母は……元々病弱で……でも、必死に僕を育ててくれました。僕が3歳の時に父が死んでしまって……それ以降、身体と心にムチを打って、無理をして、僕を育てたから……今では心身ともにボロボロで……だから、助けてあげたいんです。そのためには、稼ぐ必要があって……だから……三級がどうしても欲しいんです。お願いします。どうか、見逃してください。望むなら……今後、僕が稼いだ額の何割かを、あなたにお支払いします……なので、どうか――」
「はい、20秒! そこまで!」
と、リーブルの言葉を遮ってから、
センは、
「なかなか胸をうつ、いいプレゼンだった。グリ○ィンドールに20点!!」
「……あ、ありがとうございます。じゃあ――」
と、希望が灯った顔になるリーブルに、
センは、仮面の下で、ニィっと黒く微笑み、
「ちなみに、合格ラインは10万点だ。お前の今の持ち点は30点。合格まで、あと9万9970点。……だいぶ遠いな。くく」
「……」
家計のやりくりも担当しているリーブルにとって、その程度の数字を理解することはたやすい。
だからこそ、明確に絶望する。
センエース試験の合格まで、のこり99970点。
30秒で30点を稼いだので、もしかしたら、あと99970秒をかければ、稼げるかもしれないが、
そんなもん、稼いでいる間に、この5級試験は、余裕で終わってしまう。
リーブルは、その場で、土下座をして、
必死に、
「お、お願いします……母のためにも……お金が必要なんです……だから……どうか……見逃してください……」
と、必死に懇願するリーブルに、
センは、
「母のため、母のためって……うるせぇなぁ、このマザコンクソ野郎が。俺は、お前みたいな、親離れできていないクソガキが大嫌いだ。男なら三歳ぐらいで家を棄てて自立しろ。それが、真の漢ってもんだ。8歳にもなって、お母さんがどうだの、こうだの、やいだの、せいだの……虫唾が走る。気に入らないやつは親でも殺す。それがサ〇ヤ人だ。お前には、サ〇ヤ人としての誇りが足りない」
センが何を言っているのか、さっぱり分からないリーブル。
しかし、分からないことを質問している余裕はないので、
ただただ、必死に、
「お願いします! どうか、見逃してください! 僕は、使えるコマです! 働かせて、上納金を取った方が、絶対に、あなたの得になります! だから、どうか!」
「震えるプレゼンだぜ。親がどうこうなんて戯言よりもよっぽどなぁ。てめぇは確かに、有能だ。マセているだけの生意気なガキ……ってわけじゃねぇ。ちゃんと知恵も回るし、空気もよめるし、実力もそこそこ。確かに、お前を生かしておいたほうが、得になりそうだ」
「じゃ、じゃあ――」
と、また希望の灯った顔をするリーブルに、
センは、また、
「だが、断る」
「……ぇ?」
「この俺の最も好きな事のひとつは、『スペックの高いマセガキの懇願』をノーと断ってやる事だ」
「……」
またもや、絶望の底に叩き落されるリーブル。
そこらのガキなら、とっくの昔に折れているだろうが、
しかし、リーブルは、グっと奥歯をかみしめて、
「どうすれば……いいんですか……どうすれば……」