135話 他人の不幸は蜜の味。
135話 他人の不幸は蜜の味。
「お前は不合格」
近くにいた、存在値29ぐらいの受験生の腕を刈り取るセン。
その後も、スパスパスパっと、存在値30付近のザコどもを狩っていくセン。
四肢を切断し、気絶させ、蹴り飛ばす。
鬼畜なムーブを繰り返しながら、大方を狩り終えたところで、
――最後に一人、少年が残った。
8歳の少年、リーブル。
「さて……お前に関しては『判断』が難しい……正直、現時点の実力だと、不合格なんだが……年齢であったり、将来性を鑑みたりした場合、合格にしてもいいんじゃないかという葛藤もある……さて、どうしたものか……」
そう言いながら、センは、ゆっくりと、リーブルの近くに歩いていく。
リーブルは、ギリっと奥歯をかみしめて、
「う、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
魔力とオーラを全開にして、
全力でセンに殴り掛かった。
その拳を、センは、あえて、顔面で受け止めた。
避けようと思えば、『リーブルの拳がセンの顔面に届くまでの間』に80回ぐらいよけられたが……しかし、センは、わざわざ顔で、リーブルの拳を量った。
リーブルの拳を顔面で測定したセンは、
「……悪くねぇが……そんな良くもねぇなぁ。『存在値30は超えていません!!』って感じの拳。『ちょうど、五級試験で落ちるぐらいの拳です!』って感じなのよねぇ。さて、どうしたものかしらっと。むずいなぁ。将来性を見込んで合格にしてもいいが……しかし、あえて、ここでシバき倒して、社会の厳しさを教えるって道もある……んー、どうしよっかなぁ……ムズいなぁ……んー、よし、じゃあ、まずは面接しようか」
そう言いながら、センは、リーブルの足を払い、
「うわっ!」
その場に転倒させると、
「呪縛ランク5」
リーブル視点では『だいぶイカつい魔法』を使って動きをとめる。
(ランク5の魔法だって? っ……や、やばい……この仮面……僕でどうにかなる相手じゃない……)
ランク5の魔法を使われたことで、リーブルの心は折れてしまった。
この仮面のキチ○イが相手だと、自分は何をしても勝てない。
そう理解し、抗う気力を失ったリーブルは、
「お、お願い……殺さないで……腕も……切らないで……仕事が出来なくなる……お願い」
涙目で、必死になって命乞いをする彼に、
センは、
「いい顔をするじゃないか、クソガキ。他人の不幸は蜜の味。他者の絶望に触れている時だけ、命の重さを実感できる」
などと、悪人ムーブをかましつつ、
リーブルの首をなでながら、
「言うまでもないが、てめぇの命は、俺の気分次第。ここから先、ミスったら死ぬと思え。いいな」
そうささやきつつ、呪縛の魔法を解き、動けるようにしてあげるセン。
リーブルは、へたな動きをせず、その場で、首だけを、ゆっくりと縦に振る。
そんなリーブルの素直さに、センは仮面の中で、にっこりと微笑みつつ、
「簡単に自己紹介しな。てめぇは誰で、なぜ試験を受けている? ダラダラ喋ると殺すから、そのつもりで。10秒以内ぐらいが望ましい」
「は……はい……」
と、震えながら返事をして、
一度、ゴクっと息をのんでから、
「名前はリーブル……8歳です。母が、病気で……薬代を稼ぐために、冒険者として働いているのですが、8歳なので、ナメられて、なかなか、いい仕事をもらえません。三級試験に合格すれば、いい仕事がもらえやすくなるので……だから、試験を受けています」
「9秒23! 実に簡潔で非常によろしい! グリフィ○ドールに10点!!」
「あ、ありがとうございます……」
グリフィンド〇ルどうこうに関しては、意味が分からなかったが、センの機嫌を損ねるべきではないと考え、空気を読んだ鬼スルーをかますリーブル。
存在値が高いだけではなく、全体的に高性能な少年。