134話 異常者。
134話 異常者。
センのサイコっぷりを目の当たりにして、おびえ始めた受験生たち。
そんな彼・彼女らを舐るように見渡して、
「あは……ははは……ははははははははははっ!」
と猟奇的に嗤ってから、
「はい、お前、不合格ぅ! お前もぉ! 不合格、不合格、不合格ぅう!」
次々に、順番に、受験生たちの腕を刈り取っていく。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! うひゃひゃひゃひゃひゃ! 弱い、脆い、しょぼいぃいいい! げひゃひゃひゃひゃひゃ!」
異常性の集合体。
ヤバすぎるセンの暴挙を前に、
この場にいる受験生全員が引いていた。
★
――ここまでの試験があまりにタルかったので、試験官ごっこを開始するセン。
『猟奇的に暴れまわるセン』を、みんな、必死になって、抑え込もうとするが、
センの動きがあまりにキレッキレすぎて、誰もついていけない。
「おらおらおら、てめぇらも、ここまで残った受験生なんだから、せめて、多少の抵抗ぐらいしてみせろや! どいつもこいつもカスすぎて、アクビも出ねぇぜ!」
「な、ナメやがってぇ……三級試験のために、体力も魔力も出来るだけ温存しておこうと思ったが……てめぇだけは、許さねぇ! 死ねぇ!! 極炎撃ランク4!!」
受験生の中の一人……この中では、かなりの上澄みである『バリソン』が、『最大の切り札』を放った。
――バリソンの存在値は39。
年齢は30代。
ダソルビア魔術学院の卒業生であり、現在は、気ままな冒険者家業を営んでいる。
学院在籍中に、『四級』まではとっていたが、色々あって、三級が欲しくなり試験に参加した。
冒険者として生きていく中で、バリソンは、『三級と四級の格差』に気づいたのだ。
『税金』なり『公共料金』なり『宿屋のサービス』なり『コスパのいい依頼が回ってくる割合』なり……そういった細かいところで『三級』と『四級』の差を思い知った。
『三級だと恩恵を受けられるが、それ以下だとあまり旨味がない』という場面が、この社会だとあまりにも多い。
もちろん、『四級取得者』だって、社会全体の割合でみると、『そんなに多いわけではない』ので、そこそこの恩恵を受けているのだが……この辺の『壁』に関しては、実感してみないと分からないところがある。
だから、社会に出て以降、バリソンは、とにかく三級が欲しくて、5年ごとに、毎回試験を受けている。
しかし、毎回、四級が限界。
バリソンの実力だと、『三級は厳しい』というのが現実。
だが、バリソンは諦めなかった。
三級試験に合格することだけを考え、今日までずっと、訓練を積んできたし、ここまでの試験でも、いかに体力を温存するかだけを考えて、必死に頑張った。
自分の実力が『ギリ三級合格ラインに届いていない』のは分かっていたので、『三級試験の時に全身全霊をぶつけられるよう』に、出来るだけ……出来るだけ、全ての力を温存しておきたかった。
――バリソンの炎撃を受け止めたセンは、
『熟練のソムリエ』のように、バリソンの『炎の質』を味わいながら、
「おお、なかなか悪くないじゃないか、お前。お前は……まあ、流石に不合格じゃねぇなぁ。……『テンプレのノリだけでお前を落とす』ってのは、俺ルール的に、ちょっとダメだな。……こういう線引きは大事にしていくタイプなのよ、俺」
そんなことを言いながら、
センは、バリソンの首を掴むと、
バリソンに対し『極炎撃ランク4分の魔力』を注いでいく。
バリソンが、この『センの試験官ごっこ』に対して使った分の『コスト』を返却。
ついでに、回復魔法でバリソンの体力を回復させた上で、
「君、合格。いい五級試験合格者になりなよ」
などと言いながら、バリソンを、限定空間の外に放り出す。
そのままの流れで、センは、
「お前は不合格」
近くにいた、存在値29ぐらいの受験生の腕を刈り取る。