129話 一日で終わりますように……
129話 一日で終わりますように……
「うわ、私のチーム、魔人がいるんだけど、最悪……」
センが配属されたチームの女性……高飛車感がエグい彼女は、
ゴキブリでも見るような目でセンを見下している。
センに嫌悪感を示しているのは彼女だけではなく、
ほかのメンツも、軒並み、『魔人と同じチームであること』に不満がありそうな様子。
とはいえ、十七眷属のルーミッドに文句を言うことは出来ないので、黙って従うしかない。
センは、心の中で、
(わざと負けたろかな……そうすれば、ここで帰れるし……)
などと、つぶやいたが、
なんだかんだ、責任感が強いセンは、
「はぁ……」
と軽いため息をつくだけにとどめ、
試験にはまじめに参加した。
とはいえ、本気を出せば、相手チームも味方も吹っ飛んでしまうので、
もちろん、ある程度、抑えた状態で、上手に勝利を奪っていく。
「……これで、七級クリア……試験は、まだ、あと、6つも残ってんのか……今日中に終わるかなぁ……日をまたぐのは、ダリィなぁ……」
等級試験は、一日で全ての試験が終わることもあるが、
二日にわたって行われることも結構ある。
最長で3日かけたこともあるのだが、今年の試験が、どのパターンになるかは、完全にルーミッドの気分裁量次第。
センは、胸の前で、手を組み、
「一日で終わりますように……一日で終わりますように……できたら……半日で終わりますように……」
と、必死に、このダルいミッションが爆速で終わることを天に祈った。
★
七級試験で半分が落ち、
現在残っているのは1800人ぐらい。
組み合わせの配慮がシッカリしていたのか、現状、まだ、魔術学院の学生は一人も落ちていない。
六級試験が始まる前に、責任者兼試験官のルーミッドが、
「よしよし……遅れもなく、順調に試験を進行できているな。試験がスムーズに進むことが何よりも喜ばしい」
これは、彼の特殊性癖。
試験に関わることを全て一手に支配したいと言う欲求。
自分が支配している試験が滞りなく進行していることに対する喜び。
ルーミッドにとって、等級試験は、サラリーマンにとっての釣りやゴルフみたいなもので、実に楽しい趣味なのである。
趣味だからこそ、真剣にやるし、
趣味だからこそ、不正を許さない。
「さて、それでは、六級試験を開始しようか。六級試験も極めてシンプルだ。『今から、テキトーに選んだ100人』と『俺』で、『100VS1』の闘いをする。合格条件は一つ。1分、生き残れ。1分後に気絶していなかったら合格だ。生き残れとは言ったが、お前らを殺すつもりはないから安心しろ」
軽くストレッチをしながら、
そんなことをいうルーミッドに、
この六級試験から参加することになるクロッカが、
「あなたを2秒で倒せば、わざわざ1分逃げ回らなくても合格になるけれど、それでもいいのかしら?」
「もちろん、ダメに決まっていますよ、クロッカ様。この六級試験では、俺に対して積極的に攻撃することを禁止します。自衛のために反撃するのは問題ありませんが、その時ですら、俺を倒そうとするのはダメです。俺が行動不能になった時点で、全員、不合格とします。よろしいですね」
そんなルールを聞きながら、センは、心の中で、
(100人の審査に1分……それを18セット……合間の入れ替え時間に数十秒かかったとして……まあ、30分もあれば終わるかな。……そんな感じの試験が、ここから5回行われると仮定して……帰れるのは最短で3時間後……悪くないペースだ。ぜひ、このテンポを保っていただきたい)
★
六級試験が始まってから15分が経過した。
現在、7セット目。
この7セット目で、ようやく『センが配属された100人』の出番がやってきた。
所定のポジションにつきながら、センは、
(うっかり、強めに反撃して、気絶させないように気をつけないとなぁ……)