127話 等級試験。
127話 等級試験。
「今年の受験生はかなり多いな。ふむ……これは別に隠していることでもないから、最初にハッキリと言っておくが、どの等級であれ、合格させる数というのは、俺の中で、だいたい決まっている。意味わかるだろ? 仮に、ここにいるやつらが全員同じぐらい優秀であったとしても、受かるやつと受からないヤツが出てくるってことだ。それを踏まえた上で頑張れ。世のなかというのは理不尽なものだし、運というやつがとても大事になる。運がないやつってのは、それだけで、『切り捨てられるべきダメなヤツ』なんだ」
そこから、さらに5分ほどかけて、
「ちなみに、今年から、慣習を変えて、魔人も試験を受けられるようにした。時代ってのは変わっていくもんなんだよ。ちゃんと言っておくが、俺は魔人が嫌いだ。普通に汚らわしいからな。しかし、試験中は、変に差別したりはしない。これは俺なりのルール。お前ら受験生同士での足の引っ張り合いに関しては、注意も何もしないから、好きにしろ」
などと言った感じで、定例の挨拶や、軽い注意事項を口にしていく。
その途中で、
「ああ、そうそう、もう、みんな、気付いていると思うが、今年は、クロッカ様が、等級試験に参加なされる。参加というか……もう、ほとんど、仕込みの試験官みたいなものだが……まあ、とにかく、クロッカお嬢様も参加なされるので、粗相のないように。別に、粗相したけりゃ好きにすればいいと思うが……そんなバカは、俺がこの手で絶対に殺すから、そこだけは覚悟してくれ」
普通、龍神族は、等級試験に参加したりしないのだが、
今回、クロッカは、センの底を量るために、等級試験に参加した。
表向きは『いつもの、意味不明な戯れ』となっているが、
彼女は真剣に、センを量ろうとしている。
「それでは、そろそろ、八級試験を始めようか。……『せっかく金を払って試験を受けにきたんだから、八級ぐらいは受からないと』なんてナメたことを考えている奴もいると思うが、そういうナメた考えのやつは、たいがい落ちるから、気合を入れていけ。てか、今年は試験の特性上、八級で、半分は落ちるから、だいぶ気合いを入れた方がいいぞ」
こうして、八級試験が始まった。
八級試験の内容は極めてシンプルで、
『腕相撲』だった。
適当に相手を決められて、勝ったら合格、負けたら不合格。
極めてシンプルで、かつ、大きく運が絡む試験。
基本、八級試験では、このような、『運しだいで合否が決まり、かつ、半分落ちます』みたいな、大胆な試験は行われないのだが、今年は、魔人も参加するということもあり、ルーミッドは、いつもとは趣向をかなり変えた、特別な試験を、受験生たちにお届けするつもりの様子。
――八級試験で、センの相手をすることになったのは、
『腕試し』のつもりで参加した、近所の町のパン屋さんだった。
毎日力仕事をしているせいか、体はムキムキ。
存在値は35を超えており、この世界では、『かなり強い方』なので、普段の等級試験なら、4級まではいける実力者。
ちなみに、普段の等級試験で合格できる存在値の目安は以下の通り。
八級合格目安 存在値25
七級合格目安 存在値27
六級合格目安 存在値30
五級合格目安 存在値33
四級合格目安 存在値35
三級合格目安 存在値45
二級合格目安 存在値50
一級合格目安 存在値55
特級合格目安 存在値60
特級の難易度はかなり高く設定されているため、実のところ、十七眷属の中でも、特級を獲得できていない者はいる。
ルーミッドは、同僚であろうと身内であろうと、試験においては贔屓をしないので、仮に十七眷属の知り合いから『頼むから特級を受かったことにしてくれ』と頼まれても絶対に通さない。




