124話 怠慢は別に悪じゃないが、罪ではある。
124話 怠慢は別に悪じゃないが、罪ではある。
「お前のことは、そう簡単には壊さない。じっくりと時間をかけて、徹底的に……『自分が誰を怒らせたのか』を……教えてやる」
「ふ、ふざけ――」
と、叫びそうになったところで、
センは、また金縛りの濃度を高めて、
エトマスの口をふさぐと、
アイテムボックスから、ナイフを取り出して、
躊躇なく、エトマスの右目にブッ刺した。
「―――――――」
おそらく悲鳴をあげたいのだろうけれど、魔法で動き全てを封じられているから、叫ぶことすら許されない。
眼球を潰された痛みだけが全身を駆け巡る。
そんなエトマスに、
センは、
「エトマス……断っておくが、俺は、お前を悪だと思っているわけじゃないんだ。お前の言い分とか、都合とか、感情とか……そういうのもわからなくはない。ただなぁ……無茶を通したかったら、最低限の筋だけは通さないといけないんだ……お前は、俺に対して、それを怠った。怠慢は別に悪じゃないが、罪ではあるんだ」
フラットなテンポで、そんなことを言いつつ、
さらに、センは、エトマスの右耳をナイフでゆっくりとそぎ落として、
「俺に面倒ごとを押し付けたこと。俺のことを何度も殴ったこと。そんなことはどうだっていい。お前からの俺個人に対する侮蔑や暴言なんてのは、俺にとって蝉の鳴き声と同じか、それ以下の雑音でしかないんだ。だから、そういうのは、マジでどうでもいい」
そこで、センは、声のトーンを低くして、
「だが、テメェは、保身だけで、ゴールポストをずらしやがった。俺はそういう、大人の都合でガキが理不尽を被る胸糞が嫌いなんだ。良いか悪いかの話じゃない。あくまでも、好きか嫌いかの話さ。てめぇの行動が正義か悪か……マジで、一ミリも興味ねぇ。ただ、死ぬほど不愉快だったから……とことん、てめぇをぶち壊す。そんだけ」
センはナイフに、魔法の毒を塗りたくると、
エトマスの腹部にストンと刃を落とす。
臓器が裂かれて、体内に毒が浸透していく。
真っ青になったエトマスは、仰向けで寝たまま、ヴォエっと、吐瀉物を吐き散らかす。
センは、毒のナイフで、エトマスの内臓をかき混ぜながら、
「クラス対抗戦なんざ、ガキの遊びみたいなもんで、そんなもんの結果なんざ、ぶっちゃけどうだっていい……ってのが大人の視点。わかるぜ。俺だって年齢だけでいえばオッサンを通り越して、ぐちゃぐちゃの老害クソジジイだからな。ガキの遊びなんざ、大人の都合で処理されて当然。ガキは黙って言うことを聞いてろ。……わかるぜ。ああ、わかるとも。大人の理屈。理解はできるし、気持ちもわかる。だが、それと感情論は全く別だ。テメェがテメェの都合だけでゴールポストをずらすなら、俺も俺の感情論だけでルールを変えさせてもらう。まだ、テメェをどうこうする気はなかったが……イラついちゃったから、とことん拷問させてもらう」
そこでセンは、丁寧に、エトマスの指を全てへし折っていく。
金縛りで悲鳴をあげることもできないエトマス。
短時間で、全身のあらゆる部位がグチャグチャにされていく。
センは続けて、エトマスの肋骨を、梱包のプチプチでも潰すように、親指で、バキバキとへし折っていく。
「……この世界のルールを教えてやるぜ。俺を小馬鹿にしたり、殴ったり、侮蔑するぐらいは全然オッケーだが……俺を本気でイラつかせるのはNGだ。俺は幼稚なガキなんでな。ガチでイラつくと歯止めが聞かなくなる」
そこからも、センは、しばらく、じっくりと、エトマスを壊していく。
痛みという痛みを叩き込んでいく。
「――――」
最初は、人殺しの目だったエトマスも、次第に、目が虚ろになっていく。
ぐったりして覇気が完全になくなったところで、
センは、エトマスの金縛りを部分的に解除して喋れるようにしてあげた。