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120話 本気で褒めてやるぜ。


 120話 本気で褒めてやるぜ。


 クロッカは、仕方なく、自身も、無詠唱でバフ魔法を使う。

 周りに、武装闘気を使っていると悟られぬよう、フェイクオーラを使った上で、

 さらに、無詠唱で、


(龍拳気ランク8!)


 拳にバフを込めて、


「だらぁあああ!」


 ここまでくると、もはや、カウンターを決め込むことはできなかった。

 ビシャは、クロッカの、イカつい一撃を、もろにくらってしまう。


「ぶっはぁああっ!」


 噴水のように血を吹き出しながら吹っ飛ぶビシャ。


 『うわ、死んだ!』 


 と、誰もが思うほどの凄惨な一撃。

 体が爆散していないだけマシか……と、そんなことを周囲が思っていた……

 が、


「っ……ぐ……」


 ビシャは、朦朧としながらも、

 しかし、ギリギリのところで、地面に倒れることなく、自分の足で、体をしっかりと支えている。


 フラつき、血を吐きながら、

 しかし、それでも、死んでいない目で、クロッカをにらみつけている。

 その目は大声で『まだ終わってねぇぞ。くるなら来いや』と叫んでいた。


 それを見たクロッカは、


(ハンデを無視して、魔法を使ったのに……まさか、耐えられるとはね……ははっ……)


 流石に、呆れて笑ってしまい、


「……5分経過……認めるわ。あなたの勝ち」


 そう言って、ビシャに背を向け、

 そのまま、スタスタと、どこかへ歩き去って行ってしまった。


「……」


 クロッカの敗北宣言を聞き届けると同時、

 ビシャの意識がフっと途切れて、その場に倒れこみそうになった。


 地面に顔面をたたきつけそうになった……が、


「おっと」


 ほとんど瞬間移動のような豪速ムーブで現れたセンが、

 倒れそうになったビシャの体を支えていた。


 気絶しているビシャの顔を見つめながら、

 センは、全体回復魔法を使い、意識を失っている3組のメンツを回復させてから、


「……流石に、今の総合力じゃあ、クロッカ様には勝てないと思っていたが……やるじゃねぇか。本気で褒めてやるぜ」


 そんなセンの言葉を受けて、

 自分たちが勝利した、ということを理解した面々は、


「え、勝ったのですか?」

「どうやって?」

「絶対にムリだと思った……」


 と、困惑している様子。

 そんな彼らに、センは、


「全員が一致団結して、出来ることを全て賭した結果、勝利することが出来た。『ゴミ溜めの3組』が『クロッカ様ありの1組』に勝つなど、普通ならありえないが、お前らは、そんなありえない偉業を、成し遂げた。よくやった」


 と、一旦、普通に褒めてから、

 ニタリと黒く微笑み、


「流石、俺だ。さあ、称えろ、お前ら。俺を賛美して、崇め奉れ。……勘違いするヤツはいないと思うが、一応言っておく。凄いのは俺であって、お前らじゃない。アホの3組を、クロッカ様ありの1組に勝たせてみせた……この俺の手腕が凄いんだ。というわけで、さあ、ほめちぎれ」


 と、台無しなことを叫ぶセンに、

 1組のメンツは嫌悪感を示し、

 見学していた2組のメンツはしかめっ面になり、

 観客席の来賓は、魔人の品性の無さに不快感を示す。


 みんな、センが『アホなことをほざく前』までは、

 『3組がクロッカを倒して優勝したこと』に対し、呆然としていたが、

 センの発言を受けたことで、『呆然』が『呆れ』に変貌していった。


 『3組が1組に勝った』ということに対する驚愕は霧散し、

 『センの異常性に対する嫌悪感』だけが世界を席巻していく。


 そんな中、

 学園理事のエトマスが、

 この場に降りてきて、


「勘違いしているようだから、言っておくけれど……優勝したのは、3組ではなく1組よ」


 などと言い放ったので、

 センが、小首をかしげながら、


「はい? いやいや、クロッカ様自身が敗北を認めておられましたけど?」


「クロッカ様はお優しい御方なので、頑張った3組の面々に勝ちをお譲りになられたご様子……だけれど、実際のところ、5分が経過する前に、そこの魔人は倒れてしまい、あなたによって支えられてしまった」



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