114話 龍神族の中でも、最高位の資質。
114話 龍神族の中でも、最高位の資質。
どうやって人材を確保していくか。
どうやって、家族を皆殺しにするか。
革命を成したあとは、どのように統治していくか。
かんがえることは山ほどある。
成すべきことは腐るほどある。
クロッカの闘争は、まだまだ始まってすらいない。
「呪縛ランク4!」
時間稼ぎを目的としているビシャは、
丁寧に、『無詠唱のランク6』との併用である二重呪縛を仕掛けていく。
ほかにも使える魔法はたくさんある……というか、一番得意なのは毒系の攻撃魔法なのだが、倒すことは目的ではないし、ビシャの実力ではクロッカを削り切れないので、とにかく、足止めの魔法ばかりを乱用していく。
全力で、クロッカの足を止めようとするが、
しかし、すでに種も底も割れているので、
クロッカは、軽やかに回避していく。
仮に、ミスって捕まったとしても、
もはや驚愕というデバフがないので、
丁寧に対処されて、ほとんど時間がかからず解除される。
そんなビシャとクロッカのぶつかり合いを、
全力サポートしながら、ハロが、心の中で
(流石、クロッカ様……強すぎる……ビシャの魔法を丁寧に対応しつつ、こちらに対する警戒も一切、怠っていない。……その気になれば、取り巻きである私たちを瞬殺できるのに、あえて、それをせずに、私たちのサポートを受けているビシャを、赤子扱いしている)
ハロの背後からビシャをサポートしているラスも、心の中で、
(……これが、龍神族の中でも、最高位の資質を持って生まれた天才の中の天才の実力……桁違いの超人だということは、もちろん、最初から知っていたけれど……実際に体感してみると、『本質的なスペックの差』というものを痛感する……生まれ持った命の差……)
先天的な資質の差に震えながらも、
しかし、心が折れることはなかった。
なぜなら、最初から分かっていたことだから。
ないものねだりに意味はない。
配られたカードで勝負するしかない。
――これも、センから与えられた教導の一つ。
この数日で、二人は、センから多くの教えを賜った。
その全てが高次の指導手。
『高みに到るためには必須』と断じるにいささかの躊躇もない、眩いばかりの道標。
ハロは、後方のラスに視線を送ることなく、
「……ラス、一瞬でいい。クロッカ様を止めてくれ。私の全てをぶつける」
「……やってはみるけれど、成功するかどうかは分からない……ということは念頭に置いておいてください」
そう言ってから、ラスは、
ダっと、足に力を込めて、クロッカへと接近。
『突飛な奇襲』が目的なので、安全圏の遠距離からではなく、出来るだけ、最前線へと近づきたかった。
異質な行動は、相手の演算を震わせる。
クロッカは、接近してくるラスに、怪訝な目を向けた。
(距離を詰めて何を……ラスにできることは、もうないはず……)
そう思わせるために、ラスは、ここまで、
『とっておき』を隠しておいた。
命がけの死闘は嘘しかない心理戦……賭博黙示録なカードゲームのようなもの。
最後の最後まで『相手に悟られない切り札』を残しておいた方が勝つ騙し合い。
(幻影・豪氷矢ランク4!!)
ラスは、ここまで隠し通してきた『ランク4の応用魔法(無詠唱)』を放つ。
クロッカの周囲に顕現した30本以上の豪氷矢。
流石のクロッカも、その包囲網に、一瞬、ギョっとしたが、
あまりにも数が多すぎるため、すぐに、
(……幻影か。実体を持つのは2~3本というところ。……しかし、無詠唱で、これだけの数を……ふむ……ラスの資質は、思ったよりもかなり高いところにあるらしい……それとも、センの教えが、それだけ高みにあるということか……)
などと考えながら、
クロッカは、全身を包むように、
「ふぅ……」