107話 センエースという魔人の教師適正。
107話 センエースという魔人の教師適正。
(……ラス程度の存在値で……ランク4の魔法……普通ならありえない……魔法の超天才だったら、ありえなくもないけれど……ラスは、天才じゃなくて、普通の落ちこぼれ……それとも……遅咲きの天才だったとでも?)
ランク4の魔法を使われてしまうと、流石にケイルスも動揺する。
それだけ、ランク4の魔法は、とんでもない高みにある魔法ということ。
ちなみに、驚いているのは、ケイルスやコータスだけではなく、
来賓の方々も同じ。
「あの3組の生徒……存在値30そこそこで、ランク4の魔法を扱っておりますね」
「ランク3の応用魔法も、見事に扱っている……」
「魔法もそうだが、体さばきもなかなかのもの」
「1組のコータスは、相当に有能な近接職の学生だったはず……」
「そんな彼の猛攻を受けても折れないフィジカルと心……」
「素晴らしい資質……なぜ、それほどの器が、落ちこぼれの3組などに……」
と、ラスが3組にいることに対し疑念を抱いている者たちに、
2組の担任であるニスンが、慌てて、
「ら、ラスは、つい数日前まで、ランク3の基礎魔法をギリギリ使えるという、『そこそこ優秀な魔法使い』でしかなかったのです。もちろん、ランク3の魔法を使えるのは素晴らしいのですが、それ以外の全てが、あくまでもそこそこで、ゆえに『総合的』には『2組に届かない』という評価を受けておりました。ようするに、典型的な一撃特化型(微妙)な学生……だったのですが」
そこで、現状、ヒマを持て余しているクロッカが、
『来賓たちが見学している観客席』の方に近づいてきて、
「数日前に、私は、あのラスという学生に会っている。あの時は、そこの職員が言っていたように……正直、微妙な魔法使いだった」
クロッカの擁護に、ニスンは、ホっとした顔をするが、
「――『落ちこぼれの中の上澄み』という評価が精々。それは間違いない。もちろん、学校側が、ラスの『潜在的な資質の高さを見誤った』のは事実だけれど」
その発言を、ニスンは、責められたと思ったのか、一度、ビクっと体を震わした。
が、クロッカは、決して、そんなつもりはなく、
「……当時のラスを3組に配置した学校側の判断は、間違っていなかったと私は思うわ。学校のテストは、受験者の『潜在能力』をはかるものではなく、『現状の実力』をはかるものだから」
と、絶対的な事実を口にしていく。
その上で、
「学校側は、常に、最善を選択している。決して、何も間違えない。だから、うちの犬を、3組の担任に据えたことも、もちろん、間違いないではなく、完璧な最善。あなたたちも、そう思うでしょう?」
にっこりとそう問いかけられて、
来賓も、教職員も、みな、
苦笑いでごまかす事しか出来なかった。
表向きは、それしか出来なかったが、心の中では、
(確かに、クロッカ様の言う通り……センエースという魔人の教師適正は非常に高いと言わざるを得ない)
(魔人は、そもそも、魔法系統の実力が高い……)
(魔人教師の実力がそれなりであることは認めるが……しかし、人間の教師よりも、魔人の教師の方が『質が高い』……というのは、色々と問題があると言える……)
(クロッカ様の、今回の一手は、あらゆる意味で、かなり高度ないやがらせと言えるだろう……)
(厄介なことをしてくれる……魔人教師が有能である前例など、あっても良い事は何もない……)
★
闘いが始まって9分ほどが経過した。
その間、
ラス&ハロは、必死になって、ケイルスを削り取ろうと踏ん張った。
しかし、ケイルスを落とすことはできなかった。
ケイルスは、口だけのイキり女ではなく、本物の才女。
センの教導を受けて、ハロとラスはかなり強くなったが、
それでも届かない場所にいるのがケイルスという超人。
彼女の強さに、つい、敬意を表してしまうラスとハロ。