105話 信じられない強化。
105話 信じられない強化。
「ハロ、どうしちゃったの?」
「先生にボコボコにされたって」
「さすが、セン先生……常識がかけらもない……」
「別にいいんじゃない。前のハロは鬱陶しいだけだったし。今の方がよっぽどマシ」
戸惑いはしたものの、不満や文句はもちろんない。
鬱陶しいだけだった前の性格より、視野が広がった今の『綺麗なハロ』の方が断然いい。
クラスメイトたちの話し声が耳に届いているものの、ハロは、彼・彼女らの評価など、どうでもいいというフラットな顔で、
「さあ、時間だ……行こう」
★
――対抗戦が始まると、
まず、初っ端、ケイルスが迷いのない特攻を仕掛けてきた。
一瞬で終わらせてやるという気概が、そこには見える。
先ほどの、3組VS2組の戦いを見ているので、3組が強化されていることは理解しているが、しかし、そんな程度の『予想外』で狼狽えるほど、ケイルスのプライドは安くない。
「武装闘気!!」
じっくり闘う気などない。
最大戦力で圧殺する気満々。
そんなケイルスの特攻を、
ハロがタンクとして受け止める。
「信じられないほど強化されている……それは認める。実に素晴らしい身体能力! だけれど、私よりは弱いだろ?!! 私に勝てるイメージが少しでもわくか?! それが答だ!!」
ケイルスは叫びながら、
ハロの腹部に、
「うぐっ!!」
なかなか重たい蹴りをぶち込んで、
グラリと体幹をヨロめかせてから、
「オラァラララララア!!!」
魔力を込めた両手で何度も何度も何度も殴りつけていく。
センに鍛えられたことで、ハロとケイルスの存在値差は、そこまで大きなものではなくなった。
しかし、やはり、武装闘気によるバフ差が大きく、ハロは防戦一方。
本来の作戦としては、ハロがタンクとして、ケイルスを抑えている間に、
ラスが、後衛火力担当として、ケイルスを削る予定だった……
が、現在、ラスは、
1組のナンバースリーである『コータス』の速攻を受けて防戦一方になっている。
コータスは、好戦的なインファイトで、ラスの防御魔法をボコボコにしながら、
ラスに、
「……2組との闘いは見せてもらった。必死に手の内を温存しようと頑張っていて、健気ではあったが……正直、お粗末という評価しか下せなかった。……ああ、勘違いしないでほしいんだが、別に、君を貶める気はない。君はよく頑張っている。ただ、君は……切り札を温存したままだと、2組のツツカを削りきれず、結局、渾身のランク3魔法を使っていた。その年でランク3の魔法が使えるのは素晴らしい。ただ、『対1組用の切り札として温存する』という作戦を立てたのであれば、最後の最後まで、その信念を通すべきだった。……もちろん、『切り札を切らせた2組のツツカが優れていた』という評価もできるが――」
「褒めていただいてありがとうございます。1組のナンバーツーに、そこまで言ってもらえるとは、光栄ですよ」
コータスのお喋りをぶった切ってそういうラスに、
コータスは表情を変えずに、クールな態度で、
「……私は、1組のナンバースリーだ」
「クロッカ様を計算に入れるべきではない……というのが僕の見解です。僕がどう思うかは僕の自由でしょう?」
「……まあ、それもそうだが」
などと言いながら、コータスは、
「……拳気ランク2」
拳にバフをかけていく。
他の魔法は得意じゃないが、自分の肉体の精度を上げることだけはそこそこのコータス。
優れた肉体を加速させて、ラスを削り取ろうとする。
センとの修行を経て、ラスの防御魔法は、かなり強化されたが……
流石に、格上相手の攻撃をいつまでも防ぎ切れるものではなく、
「ぐぅっ!」
あっさりと、防御魔法を破壊されて、
顔面に、一撃、重たいフックをぶちこまれる。
コータスは、拳の手ごたえから、
(これで、ラスは処理できた。あとは、ケイルスのサポートをして、ハロを潰せば……3組は終わり)