104話 クラス対抗戦、最後の闘い。
104話 クラス対抗戦、最後の闘い。
「さて、そろそろ1組と3組の試合だから、わたくしは行かせてもらうわ」
「え、あの、クロッカ様……まさか、クラス対抗戦に参加されるおつもりですか?」
「ええ、そのつもりよ」
「そ、それは……流石に……」
クロッカが学生の模擬戦に参加するのは、
幼稚園の運動会に金メダリストが出場するようなもの。
『本気を出すなどもってのほか』だし、
『手を抜くなら参加するな』って話でもある。
だから来賓の方々は、彼女が出場するなど思っていなかった。
「1組VS2組の闘いでは見学なされていたのに、どうして、3組との闘いだけ参加なさるのですか? 確かに、3組は、あなた様のペットの指導のおかげか、素晴らしい成長をしておりますが……しかし……あなた様が出るのは、流石に……」
『クロッカ様が出てしまえばイベントが壊れてしまうので、やめた方がよろしいかと存じます』という、まっとうな発言に、
クロッカは、
「3組の限界を体感したいから参加するわ。つまりは……うちのペットの限界を知りたいの。私は、飼い主でありながら、あの狂犬の底を知らない。……今後のために、少しでも知っておきたい」
「そ、そこまで危険視しているのであれば、殺処分してはいかがでしょうか? 手を噛まれる前に。もちろん、クロッカ様であれば、犬の牙でケガなどしないでしょうけれど、妙な病原菌に感染する、という事もございましょうから」
「危険視などしていないわ。ただ知りたいだけ。狂おしいほどに」
「……」
「きっと、私は、あの犬を愛している」
「クロッカ様……その発言は……あまりにも……あまりにも大きな支障があるかと……」
「ペットを愛していると言っただけよ。何も問題などありはしないわ。あなたも確か、鳥のペットを飼っていたわよね? その子のことを、あなたは愛していないの?」
「……」
★
クラス対抗戦、最後の闘い。
1組VS3組。
本来であれば、どんなハンデがあっても、3組が1組に勝つことはありえないが、しかし、センによって魔改造された3組は、バキバキに仕上がっており、『もしかしたら』という期待感を、観客に抱かせた。
当然の話だが、3組は、多くのハンデはもらう。
そうでなければ、誰も期待など抱かない。
今回は、クロッカも参加するということもあり、1組は、かなりえげつないハンデを背負うことになった。
まず、1組全員が、『存在値を5ほど低下させる首輪』を装着する。
その上で『重量感のあるブーツ』も着用。
これで、全員の動きがかなり制限される。
クロッカが背負うハンデは、それらの比ではない。
まず、存在値が50ほど低下するという、むちゃくちゃなデバフ用指輪を装着。
それでも、話にならないぐらい強いので、クロッカは、完全に魔法禁止で、片手以外使ってはいけないというハンデを担う。
その上で、さらに、最初の10分はクロッカから攻撃するのは禁止、かつ、10分経過したタイミングで、クロッカ以外が全滅していた場合、1組の敗北というルールも制定された。
そのルールを前にしたラスは、ボソっと、
「10分以内に殲滅しないと敗北……厳しいルールですね」
『魔法禁止だろうと片手だろうと、クロッカには勝てない』という強い確信が、その言葉には込められていた。
隣にいるハロも、首を縦に振りつつ、
後ろに並んでいるクラスメイトたちに、
「最初の作戦通り、私とラスでケイルスをどうにか処理する。君たちは、他のメンツをどうにか処理してくれ」
と冷静な口調で指示を出す。
粗野で乱暴で自分勝手だったハロの、異常な性格の変化に、クラスメイトたちは、かなり戸惑った。
「ハロ、どうしちゃったの?」
「先生にボコボコにされたって」
「さすが、セン先生……常識がかけらもない……」
「別にいいんじゃない。前のハロは鬱陶しいだけだったし。今の方がよっぽどマシ」