101話 覚悟はいいか? 俺はできてる。
101話 覚悟はいいか? 俺はできてる。
「爆速で限界を超えてもらう。そのためには命をかけるのが手っ取り早い」
そう言いながら、
センは、右の肩を回し、
「……『お前ら二人』VS『俺』の殺し合い。お前らの勝利条件はただ一つ。俺を殺すこと。俺を殺せたら自由だ。ここから出て、好きに生きればいい。ただ、俺が生きている間は、ずっと、俺と殺し合ってもらう。昼も夜もクソもない。ただひたすらに殺し合うんだ。ワクワクするだろう?」
そんなセンの言葉に、ラスが、冷や汗を浮かべて、
「あの……じょ、冗談ですよね? そんなの、ありえな――」
「俺は冗談が嫌いだ。だから、産まれてこの方、一度も冗談とやらを口にしたことがない。そうだろう、ハロ」
「サー、イエッサーッ!」
「というわけだ、ラス。ハラを決めろ」
などと言いながら、上着を脱いで上裸になると、
センは、左腕をぶんぶんと振り回し、
「じゃあ、さっそくはじめるぞ。覚悟はいいか? 俺はできてる」
口調こそ、ファントムなままだが、
しかし、目はマジだった。
センは、全身にオーラを充満させると、
「いくぞ、ぼけごらぁああああああ! 死ねぇ、クソガキどもぉおおお!」
『教師が生徒に言ってはいけないセリフ、ナンバーワン』を堂々と口にしながら、ハロ&ラスに殴り掛かる狂気の閃光。
――そこで、それまで、『サーイエッサBOT』に成り下がっていたハロが、
「ボケっとするな、ラス。死ぬぞ。王は本気だ。……前衛は私がやる。お前は背後から援護しろ」
「……え、あ、いや……」
まだまだ事態を受け入れることが出来ないラスとは違い、
ハロは、完全に覚悟を決めた顔で、
突進してくるセンを全身で止める。
「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
本気の全身全霊で、センエースの特攻を抑え込むハロ。
そんなハロの背後で、ラスは、
「ちょっ……本気で……えぇ……くっ……」
『覚悟が決まった』わけではないが、
この『やらざるをえない空気感』と、
『ハロの尋常じゃない覚悟』に後押しされて、
ラスは、
「連続・豪氷矢ランク3!!」
『タンク役のハロに抑え込まれているセンエース』めがけて、
自身に使える最高の魔法を叩き込む。
魔法の矢が当たる寸前、
センは、
「魔壁ランク3」
防御系の魔法を使い、サクっと、ラスの攻撃を処理すると、
「おらぁああ!!」
ハロの顔面を両手でつかんで、
その鼻っ面に、左ひざをぶち込んでいくという、『バキバキのチンピラ暴力』を迷いなく遂行。
『己の生徒に対する諸行』としては、あまりにも不適切な一手。
センは、それを十分に自覚した上で、
「おらおらおらぁあ! 君が! 死ぬまで! 殺すのを! やめないぃいいい!」
やべぇことを叫びながら、
何度も、何度も、何度も、何度も、
ハロの顔面に、ニーを叩き込み続ける。
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
ラリったように笑う閃光。
それをドン引きの顔で見つめるラス。
地獄の時間は、まだまだ始まったばかり。
★
――センの時間は、終わることを知らない地獄。
マジで、延々に、ラスとハロをボコボコにし続ける閃光。
「寝てんじゃねぇ、ラス、ごらぁあああ!」
疲れ果てて倒れているラスの頭を、
友達認定を受けたサッカーボールみたいに蹴り飛ばす。
「ぐわぁああ!」
激烈な痛みの中でのたうちまわるラスに、
「そんなにお疲れなら、寝ててもいいけどよぉ……しかし、避けなきゃ、ハチの巣になって死ぬぞ! 散弾・豪氷矢ランク5!!」
あえて、ラスの得意技の上位魔法を使うセン。
激烈な魔力の波動を感じたラスは、
(避け……ないと……ほんとうに……死ぬ……)
意識の上では、それが理解できているのだが、
しかし、体がボロボロでまったく動かない。
指一本動かせない極限状態で、
「う、ぅう……」
死を前にした絶望感は、やはり、強力なトリガーになる。
火事場の馬鹿力を総動員。
ラスは、残っているオーラと魔力……そして生命力のほぼ全部を右手に流し込む。
……『それだけ』では、絶対に届かなかった。
これまで愚直に積み重ねてきた『地道な鍛錬』が、ようやく花開く。
「散弾・豪氷矢……ランク4!!」