100話 今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをして貰います。
100話 今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをして貰います。
「さあ、来るんだ、ケイルス。俺とお前の闘いは、まだ始まってすらいない。準備運動の途中で抜けることなど許されるはずがない」
そう言いながら、一歩、詰め寄る。
センの覇気に、ケイルスは、
(ひっ)
口にこそ出さなかったが、
しかし、確かに、悲鳴を抱いた。
本物の恐怖というものを、ケイルスは、この日、初めて知った。
魂の深部が震えている。
そんな彼女の心を敏感に感じ取ったクロッカが、
「セン。そこまでよ」
と、間に入ってきた。
「流石に、これ以上は見ていられない。私は忙しいのよ。わかるわね?」
ケイルスのプライドを慮ったカット。
『ケイルスが精神的にボコボコにされるのを止めた』……のではなく、『時間がない』から止めた。
あくまでも時間がないから。
センは、
「……」
数秒だけ黙ってから、
「……ダメだ……止められないね」
と、大人気なく、
「ケイルス。怯え始めたキミは、すごくいいよ。その瞳。その表情。その心意気。……ああ、今すぐキミを…………壊したい……っ」
と、サイコ全開の、やべぇ顔で、
よだれをたらしながら、そう言うと、
ケイルスとの距離を詰めて、
彼女の顔面に、どでかい拳を一発かまそうとした……
が、そこで、
「セン!!」
と、クロッカの怒声が響き渡った。
結果、センの拳は、ケイルスの顔面を砕く寸前でビタっと止まる。
センは、サイコな顔で、
ケイルスの、おびえた顔を覗き込みながら、
「そんな目で見つめるなよ、ケイルス。興奮しちゃうじゃないか」
と、最後の最後まで、気色の悪いことを言ってから、
ようやく、センはオーラを収めた。
ケイルスに背を向けて、
「……次はルール無しの『真剣勝負』で戦ろう。……命をかけて」
と、猟奇的な言葉を残し、
ラスと共に、この場から去っていった。
センの姿が見えなくなったところで、
ケイルスは、クロッカに、『心底、ヘドが出る』という顔で、
「クロッカ様……さっきも言いましたが……改めて言います。これは本気の進言です……あの魔人とは……関わらない方がよろしいかと存じます。アレは、本物のキ〇ガイです」
「……そうね。まともな人生を望むのであれば、絶対に関わってはいけない人種だと、私も思うわ」
「……でしたら」
「だからこそ、手放すわけにはいかない」
「……」
「今回の、あなたとの一件で、改めて、『私には、アレが必要だ』と強く思ったわ」
★
ケイルス&クロッカと別れた直後、
センは、ハロを呼び出し、
ラス&ハロと共に、
『限定空間』にこもると、
二人に向けて、
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをして貰います」
と、笑顔で、激ヤバな発言をぶちかましていく。
「え……あの……先生……」
と、ラスは困惑しているが、
隣にいるハロは、
「サー、イエッサーッ!」
と、生気のない目で、勢いよく肯定するだけ。
よどみのないまっすぐな返事を受け止めたセンは、
うんうんと、満足そうにうなずき、
「いいぞ、ハロ。なかなか仕上がってきたじゃないか。そこらの学生とは面構えが違う」
「サー、イエッサーッ!」
『さーいえっさ』を口にするだけの人形になり果てているハロ。
そんなハロと、満足そうにうなずくセン……二人の顔を見渡しながら、ラスが、
「あ、あの先生……ハロは……どうして……こんな……壊れて……」
「壊れてなどいないぞ、ラス。むしろ、これこそが、生徒のあるべき姿なんだ。そうだろう、ハロ」
「サー、イエッサーッ!」
「……」
ドン引きしているラスの前で、
センが、非常に満足そうな顔で、
「というわけで、これから、ゴリゴリに殺し合ってもらう。クラス対抗戦まで時間がないからな。半端なトレーニングでは1組に勝てない。爆速で限界を超えてもらう。そのためには命をかけるのが手っ取り早い」