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第二週 進展と挫折

八日目

 この日は進展が二つあった。一つは日用品注文してくれたこと。ペンとノートを買えば執筆できる!

 最初ペンは医者の許可がないと駄目と聞いていたが、この日用品は医者関係なく買えた。なので執筆していることは主治医には秘密である。

 もう一つはというと、荷物が(スマホなど一部除き)返ってきたことだった。

 荷物の中にあったくノ一忍法帖(にんぽうちょう)を途中から読み始めるが、例のごとく集中して本を読める状態にあらず、これには困ってしまった。折角(せっかく)暇潰(ひまつぶ)しを手に入れたのに。




九日目

 どうしても続く便秘、そのため昼前に下剤を飲むが結局効果がなかった。万事休す!

 その日の夜終わりかけなのもあってくノ一忍法帖を意地で読み切る、が異常に目が疲れる。

 だが幸運なことに荷物内からペンを見つけた。急いで適当な紙の裏に覚え書きをする。




十日目

 ついに文明の利器、ノートとペンが到着した。これから執筆を始める。ただしペンは安物のためか全然書けず、持ち込んだ方のペンを使用することにした。しかしこの日は便秘がしんどすぎて執筆どころではなかった。

 人生初浣腸。苦しかったが効果はそれなりであった。

 そして十日目にしてようやく風呂に入れた。体の(あか)を落とすのに必死で随分時間がかかってしまったが。

 その日訪問看護師に電話をした。(テレホンカードも買ったので)この時私にはずっと不安にしていることがあった。入院する前家の鍵を閉めたか、だ。全く覚えがないのが恐怖だった。なので家の戸締りなど、どうなっているか調べてもらうことにした。運良く荷物に入っていた訪問看護ステーションの電話番号が載ったチラシが頼りだった。




十一日目

 深夜三時に痛みと尿意で目が覚める。痛みからの中途覚醒はよくあることだが辛い。

 朝のOTでテレビゲームが持ち込まれている(PS2)ことに気づき、少し触らせてもらえた。久々にストⅢ3rdをやった。

 そしてこの日も執筆しようとした矢先、事件は起こった。荷物から持ち込んでいた方のペンのインクが切れてしまったのだ。

 買った方のペンは前述の通り書けない役立たずだし……受付にそのことを陳情しに行った。いかに書けないかを力説する私。結局その場はペンを交換したら書けるじゃないとやりこめられたが、あとで書こうとしたところ……やはり駄目だった。

 こうして執筆計画は早くも頓挫(とんざ)してしまった。トホホ。




十二日目

 この日のOTでもストⅢ3rdをやったが、下手でショック。元々上手くなかった気はするが……。

 主治医との二回目の診察があったが先週から事態があまり好転しているとは言えず、今回の会話でも進展に乏しかった。とりあえずドラールという薬を抜くことで様子を見ようという話になった。

 何に使うのか知れないが心電図を取ったりもした。

 昼間皆がおやつを食べている中爪を切ろうとして怒られるという失態を犯してしまったが、それが原因で嫌われたりしないものかと思った。当然この閉鎖された病棟の中にも、友達の一人もいないのであった。




十三日目

 ドラールという薬を抜いたせいか、朝が少し楽になった。代わりに中途覚醒が酷くなったが……

 しかし何事にも代えられぬ嬉しい誤算が一つあった。それは薬はやめると普通に文字が読めるようになったことだ。そういうわけでくノ一忍法帖をまた最初から読み始めた。読書は心のオアシスだ。

 またこの日は主治医が呼んだ御高名な(元)教授とやらと対面した。内容は彼の質問に私が答えるといった形で進むことが多かった。中にはよくそこまで調べたものだという自分の経歴に関する話題もあったかと思う。とはいえ物凄い肩書きの人が何か解決してくれるものかと期待したのは浅はかだった。結局現代医学なんてその程度のものかもしれない。

 その夜また訪問看護師に電話してこのまま入院していいのだろうかと(こぼ)したが、すべきという意見を曲げてくれることはなかった。もう一つ家の戸締りに関しては来週確認しに行くとのことだった。

 病気のこと、家のこと、全てが不安めいてくる……。




十四日目

 毎週火・土は入浴可の日であり、今日はまさにそうだった。月日が経つのは早いというか。

 この日は特にイベントもなく、ただ便秘が辛かった記憶しかない。夜に下剤を飲まされたが、朝ベッドの上で漏らさないか、不安で仕方なかった。その結果は如何(いか)に……!

次回 第三週 執筆再開、新たなる展開

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