咲夜さんは夏休みをもらいました
「めーりん!」
8歳くらいの少女だろうか、つい最近紅魔館へやってきたばかりの少女は「紅 美鈴」に呼びかける。レミリアは物好きなもので、道で一人で泣いていた少女を連れてきてしまったのだ。
「どうしたの?咲夜ちゃん」
この子の名前は咲夜と言うらしい、この子が拾われてきた日が十六夜だったから、「十六夜 咲夜」というらしい。
「めーりんは私のこと好き?」
「大好きですよ?」
この少女、咲夜は、美鈴が好きなようで、暇があれば美鈴のところに行っている。美鈴はメイド長なもんだからいつもかまってあげられず、結局咲夜が美鈴の後をついて回るなってことも度々あった。
それから十数年。
「美鈴!また寝てるんでしょ!」
「うわっ!咲夜さん...寝てません!」
咲夜はすくすく成長し、咲夜がメイド長、美鈴が門番をするようになっていた。
「せっかく一緒にお茶しようと思ったけど寝てたからお預けね」
「そんなぁ...」
(昔の咲夜さんは可愛かったのになぁ...)
そんな美鈴の願いも届かず、コツコツとヒールの音を立て去っていく咲夜。
(なんで仕事中に寝れるのかしら!まったく。)
咲夜は紅魔館へ入っていってしまった。残された美鈴は、その後ろ姿をぼーっと見つめるとまた眠りについた。
同時刻、図書館にて、
「パチェ!聞いてくんない?」
「何よ」
紅魔館主レミリア•スカーレットは図書館でパチュリー•ノーレッジに相談をしていた。なんでも最近咲夜が仕事をしすぎていて心配だという。
「咲夜が働きすぎなのよ。どうにかならないかしら」
「いいじゃない。働いてくれるんだったら」
「パチェは分かってないのよ!あんなに働いたらいつか過労死してしまうわよ」
「じゃあ休ませれば?」
「その手があったか!」
レミリアは紅魔館の主であるが、見た目は少女。その見た目通り思考も少女で、単純なこともわからず、我儘である。
図書館を去り、自室に帰ってきたレミリアは咲夜を呼ぶ。
「咲夜!」
咲夜は時を止める能力があるために、呼ばれると時を止め、レミリアのところまで歩いていき、そこで解除する。止められている側からすれば瞬間移動に見えるのだ。
「相変わらずね、咲夜。話があるの。」
神妙な面持ちで咲夜にこういった
「働きすぎよ。嬉しいのだけど、心配だから、1ヶ月休みなさい。今まで導入したことは無かったけど、夏休みよ」
「は、はぁ..」
咲夜は戸惑った。一人で紅魔館から放り出されても、自分の家はないし、一緒に過ごす人もいないからである。
「ですが、私には紅魔館しか家はないですし、一緒に過ごす人もいません。ですから...」
その言葉を遮るようにこういった。
「わかった。家は博麗神社にお願いしておくわ。あと、どうせ暇だから美鈴を連れてきなさい。」
「め、美鈴!?!?///」
咲夜は露骨に驚いていた、耳まで真っ赤にして。
「どうしたの?耳まで赤くして。嫌だったかしら?」
「滅相もございません!では!」
ドアをガチャンと音を立てて走り去ってしまった。それをみたレミリアはサディスティックな笑みを浮かべていた。
「知ってるのよ、咲夜」
メイド服を脱ぎ、ジャージに着替え、身支度を済ませた咲夜は、門の後ろで、息を整え、いつもどおりの涼しい顔になり、門を開けた。
「咲夜さん!?どうしたんですかその格好!」
美鈴は咲夜のジャージ姿に驚いている様子だった。
「お嬢様から一ヶ月の休みを頂いたわ。美鈴、あなたもよ。」
咲夜はそう言うと、驚きを隠せない美鈴の手を引き、人里へ走っていった。
「で、なんでアンタたちがここにいるのよ。」
霊夢は、少し怒った様子で言った。
「お嬢様が夏休みだっておっしゃったもんだからよ」
「いいから出てって」
今日の霊夢は不機嫌だった。
博麗神社をあとにした二人が向かったのは人里の服屋。美鈴が仕事服は嫌だと言って聞かなかったらしい
「咲夜さん足長いからショートパンツなんてどうですか?」
「短いわね...でも美鈴が言うなら履いてみよう...かしら」
咲夜は頬を赤らめていた。しかしどこか嬉しそうだった。
「そう言うめーりんはこれだと思うわ」
咲夜が差し出したのはジャッキー○ェンの服セット上下だった。
「えぇっ!咲夜さんいくら何でもこれは...」
「.........」
このとき、美鈴はこれが無言の圧力だと実感した。頬をぷくっと膨らませて涙目でこういった。
「めーりんはカッコいいのがいいんだもん...」
「はぁ...わかりましたー着ますよ」
「ほんと?やった!」
紅魔館へやって来た時のような屈託のない笑顔を浮かべながら会計をする咲夜。それを見て美鈴は
「まったく咲夜さんはいつでもかわいいですねっ」
と小さい声で言った。
「なんか言った?」
「何も言ってませんよ、ふふっ」
「なんか今日の美鈴変ね」
「そうですか?」
それから、咲夜たちは買い物をして、もう一度博麗神社へ向かうことにした。
「はっ...お嬢様!」
「随分楽しんでるようね。....あら、美鈴じゃない、どうしたのよその格好は?」
「咲夜さんに着てほしいって言われまして...」
レミリアは必死に笑いをこらえていたが、それを咲夜は冷たい目で見ていた。
「レミリアから話は聞いたわ。泊まっていっていいわよ。」
「「やった!!」」
その日の夜。神社のある部屋に二人で泊まることになった二人。これからお風呂に入るようだ
「ねぇめーりん、おふろいっしょにはいらない?」
「いいですけど...咲夜さん酔ってます?まぁ、汗流したいですし一緒に入りましょ!背中流しますよ」
「っはぁー!!やっぱりか博麗神社の露天風呂は気持ちいいですねっ」
「そうね。....あのさ?めーりん」
「なんですか?咲夜さん」
咲夜はそこで沈黙をして一人でモジモジしている。それを美鈴はニコニコしながら見ていた。そして咲夜が何かを言おうとしたその時
「私めーりんのこと...」
「好きです、付き合ってください?ですかっ?」
「っ!?!?!?!?. ........バカ!せっかくわたしあが心を決めて告白しようとしたのにっ!!」
「いやぁ、咲夜さんがあまりにももじもじしてるので待てなくて...これ以上入ったらのぼせそうなので出ましょ」
こうして、紅魔館の従者二人のカップルが爆誕したのだった。
〜その後〜
「めーりん!また寝てないでしょうね?」
(ZZZ)
いつもだったらナイフを投げる咲夜だが、夏休みが開けてからは変わった。
(寝てるんだから何しても怒られないよね?)
頬にキスをしようとした咲夜だったが、その時美鈴がくるっと顔の向きを変え、触れる唇と唇。それから5分ほど経ってからやっと離れる二人。
「はぁっ...めーりん!起きてたでしょっ!」
「ははっバレちゃいました?」
夏の暑さも二人の暑さも
まだまだ続きそうだなこりゃ。
end
今回東方Project二次創作ということで、めーさくの百合小説を書いてみました。原作の、東方Project様、ありがとうございます。また、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
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