92
王が手詰まりと言った事でこの場は暗い雰囲気に包まれる。
「そうか、それなら1つ質問をしよう、王よ、貴方は俺にこの国の命運を託すことは出来るか?」
俺は王に問う。
俺としてもこの国には無くなって欲しくないからな。
俺ならば邪神の力に対処することが出来る。
「黒騎士さん?いきなり何を?」
「黒騎士殿はこの状況をどうにか出来る考えがあると言うのか?」
俺は王の質問に答える。
「ああ、俺ならばこの状況を変える事が出来る」
王は俺の言葉を聞いて真剣に考え始める。
「本当にそんな考えが有るのなら…どうか教えて貰いたい」
考えた結果、王は俺に頭を下げる。
「頭を上げてくれ…王よ、知り合ってそこまで経っていない俺を信用するなら、俺は状況を変えて見せよう」
「約束しよう、私は黒騎士殿の事を信頼する」
王は下げていた頭を上げて俺に宣言する。
「契約成立だ…クリス、コーデリアさん、少し王を借りていきますね」
俺は王の肩に手を当ててそう言う。
「え?それってどういう…」
クリスが言い終わる前に俺は転移魔法を発動させて以前この体の力を確かめる為に作った異空間に転移する。
「ここは…」
王はいきなり知らない場所に転移して困惑しているらしい。
「さて、王は俺の事を信頼すると宣言しただろう、だからこそ今度は俺が返す番だ」
「それはどういう?」
「俺はあまり目立ちたくない、だからこれから見せることは誰にも言わないでくれ」
俺はそう言う。
そして王が頷いたのを確認してから身に纏っている黒騎士装備を外す。
「黒騎士殿?」
「王よ、再度自己紹介といこう、俺の名前はユウヤ、この世界では龍神として聖書に記されている者だ」
俺は改めて王に自己紹介をする…が、俺の自己紹介を聞いた王はポカーンとしている。
いきなり知らない場所につれてこられたと思ったらこの自己紹介だからな、驚いているのだろう。
「いきなり神話に出でくる人物だと言われても信じられないだろう」
俺も神話に書かれているとは思っていなかったけど。
俺は証明をする為に龍神化を発動させる。
そして龍神化が終了した所で一度咆哮をする。
「人が龍になった… 」
王は信じられないと言った風に呟いている。
これで俺がユウヤだという事の証明は大丈夫だろう。
俺は龍神化を解除して王に話しかける。
「これが俺の秘密だ」
「黒騎士殿は本当に…聖書に記されている龍神、ユウヤだというのか」
俺は頷く。
「はは、そうか、本当に…黒騎士殿、いやユウヤ様、もう一度言わせていただきます、どうか我が国をお救いください」
王は膝を付き、頭を下げる。
「態度は変えなくても良いですよ、俺がこの姿を見せたのは貴方を安心させる為だから」
話し方を素に戻して話す。
「そうか…いや助かるよ、いきなり聖書に出てくる龍神、ユウヤが目の前に居るとは…未だに実感がない」
「はは、俺もまさか自分が聖書に載っているなんて知らなかったです」
「黒騎士殿が実は龍神ユウヤだったなんて…クリスが知ったらなんて反応をするか…」
「あ、勿論クリスにもコーデリアさんにも俺がユウヤだって事は内緒にしてくださいね」
俺は早めに王に釘を指す。
「それは何故だ?龍神ユウヤが降臨したとなればこの世界の一大事、全ての国が総力を上げて祝いをするぞ」
王はそういうが、俺は絶対に知らせないでくれと言う。
「俺は元々そうなりたくないから正体を隠していたんだ」
「ふむ、そう言うことなら理解した、誰にも話さないぞ」
王が納得してくれた所で早速本題に入ることにしよう。
「それで、魔王候補についてなんだけど…」
「ふむふむ…それで?…成る程、その案なら大丈夫であろう」
俺が話したプランは2つ。
1つは俺が作った異空間に邪神の力を移して、封印を施す方法。
そしてもう1つはプランAが実行出来なかった場合にやる、魔王候補の悪魔が来た時に修羅か俺が魔王候補の悪魔を退治するという方法だ。