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「それでは黒騎士様は私と一緒に馬車に乗ってください」
あの後お姫様の一言でひと悶着有ったが、結局俺は馬車にはお姫様と侍女が1人、そして俺という黒騎士が居るという何とも言えない空間が出来上がった訳だ。
馬車に乗って少し経つのだが馬車は舗装されていない道を走っているにも関わらず揺れが非常に少ない。
こういう世界だと馬車はガタガタ揺れるイメージが有ったんだけどな。
「この馬車は揺れないんだな」
会話のたねになるかと話しかける。
「はい!この馬車には古の記録に残るスプリング?なるものを再現した事で馬車揺れが非常に少なくなっているんです」
っと少し話し始めた姫様は次々と話を振ってくれる。
「本によると現在は主流になっている二毛作の他にも様々な利益をもたらしてくれているんです!」
昔の人は本当に凄いですよね!と先程までの落ち着き様が嘘のように話し始めた。
「君は昔の人が好きなんだねえ~と」
そう言えば名前すら聞いていなかったな、俺が少し困ったような声が出たところお姫様も気づいたみたいだ。
「あ、名前を教えて居ませんでしたね、私の名前はクリスティーナ、クリスティーナ・オルディスです」
クリスティーナねぇ、ヨーロッパ風の名前だが、この世界は250年前とはいえプレイヤーが大量にいたからな、そういう感じの名前の付け方が伝わっていたとかだろう。
そして後ろのオルディスというのは王都の名前かな?王都は王族の名前が付いたりするからな。
「分かった、俺は諸事情があってな、名前を名乗ることが出来ない、黒騎士さんとでも呼んでくれ、こちらは何と呼べばいいだろうか?」
王族を勝手に愛称で呼んだりしたら問題になりそうだしな。
名前は面倒事に巻き込まれないように話さない。
「分かりました、私の事はクリスと呼んでいただければ」
「了解、じゃあクリスって呼ばせてもらうな」
「はい!」
その後はクリスがユグドラシルオンラインの時の事が書いてある本、何故か聖書と呼ばれる話をしてくれた。
「まず、私達、つまりこの国の王家に代々受け継がれていた本が有るんです」
「それはさっき話してた昔の人だったり技術が書いてあるっていう本か?」
「ええ、その様な解釈で合っております、そしてクリスお嬢様は聖書の中でもある冒険譚が大好きなのです」
冒険譚かぁ~小さい頃に読むヒーロー漫画みたいな物か、小さい頃は本のヒーローに憧れたりするよな。
「はい!250年前にいきなり現れた星降り人の1人であり強大な邪神を単身で戦い、滅ぼしたとされるユウヤ様の冒険譚が大好きなんです!」
!?今何て言った?
「すまない、もう一回言ってくれないか?」
「はい?ユウヤ様の冒険譚が大好きなんです」
!?!?俺の冒険譚だって!?いつの間にそんなの作られた?あの神の奴やりやがったな!
「そ、そうなのか、良ければ内容について聞いて良いか?」
あの神がどんな内容を本にしているのか分からないので好きだと言っていたクリスに尋ねてみる。
「分かったわ!先ずはねユウヤ様がこの星に降り立った事から始まるの」
クリスの口から話されるのはユグドラシルオンライン配信開始をして初ログインをした時の話だった。
その後もゴブリン討伐イベントやPVP大会、等々の色んなイベントの時が書かれている本らしい…が所々俺が言っていたセリフが書いてあるそうでソコのセリフをクリスが楽しそうに言っていた時は身悶えそうになってしまった。
くそぅ黒歴史ノートを他人に朗読されている様な気分だぜ。
つーかあの神の奴、初ログインの時も本になってるって事は初期の方から俺を巻き込む気満々だったって事じゃねぇか?
やっぱり最初の種族選択で龍人を当てた事が俺の人生のターニングポイントだったのかも知れないな。
その後もクリスによる俺の冒険譚なるものの紹介は続き、それは夜営の時間まで続くのだった。