62
「ここが問題のダンジョンです」
少しの間高速で動く修羅について行き、件のダンジョンの前に着いたらしい。
確かにこのダンジョンの中から感じるモンスターの数は異常と言って良いほど多いだろう。
そして個体毎の強さもこの前に攻略したダンジョンモンスターとは大違いだ。
「主殿、大丈夫だとは思いますが一応言っておきます、どうかお気をつけて」
「ああ、分かった…修羅、ひとつだけ聞いても良いか?」
そしてダンジョンに入る…前に修羅にひとつだけ聞かなければいけない事が有る。
「はい、何でしょう?」
「確かにこのダンジョンでスタンピードは起こるだろう。
そして個体の強さ、そして群としての大きさから何もしなければこの王都が無くなるというのも分かる。
だが、俺が索敵を発動させてみた感じでは修羅1人でもこのスタンピードを対処出来るんじゃないか?」
そう、このスタンピードは修羅の能力をもってすれば簡単にとは言わなくても充分対処出来る筈なのだ。
修羅の性格ならば市民や冒険者が死ぬことを考えて一人でこのスタンピードを解決するという考えもあった筈、なのにこの様に警報を鳴らし、冒険者に対処させる事に何らかの意味があるはずだ。
「はい、このダンジョンの規模は不明ですがスタンピードは主に上層から中層で起こります。
私でも充分対応する事が出来ます」
「それで、今回冒険者を招集してダンジョンに行かせる意図は?」
俺がそう聞くと修羅は少しだけ黙ったが、理由を話し始める。
「私も初めはダンジョンを封鎖し、私が単身ダンジョンに潜ってモンスターを倒していく事でスタンピードを収めようとしたのですが、問題のダンジョンがアレなので報告時に近くに居た人が警報を鳴らしてしまったのですよ」
そうか、スタンピードが起こるとされているダンジョンは王都で1番でかいダンジョンだ。
警報が鳴ってしまった以上、修羅一人で解決するという方法が取れなくなってしまった訳か。
「主殿、これは私個人の頼みです…どうか、皆の為にも頑張ってください」
「修羅…そんな事、頼まれなくてもやってやる、俺が被害を最小限に収めてやるよ」
「主殿…ありがとうございます!」
俺は修羅のお願いを聞き、返事をする。
すると修羅はお礼を言ってきた
修羅…この世界に来てから成長したみたいだな。
ユグドラシルオンラインでは俺やヤヨイ達、ヘルや皆には友好的で皆のことを考えて行動していたが、俺に関係が無いプレイヤーがどうなろうと関係ないという感じだった。
それが今では冒険者ギルドのギルドマスターとして冒険者をまとめ、支え、そして冒険者の為に頭を下げる様になった。
これは俺が知っている修羅ではやらなかった事だろう。
俺がここに来るまでにどんな事が有ったのかは知らない…が、こういう修羅の成長は嬉しく思う。
「修羅、早くギルドに戻ってギルドマスターの仕事をしてこい」
「はっ!分かりました、直ぐに向かいます」
俺が冒険者ギルドに戻る様に言うと修羅は返事をしてから冒険者ギルドの方に走っていった。
「さぁ、修羅の為にも、このダンジョンにいるモンスターを殲滅しようか」
修羅が見えなくなったのを確認した俺はダンジョンに入っていく。
「前に行ったダンジョンとはダンジョン内の雰囲気が随分違うな…やはりスタンピードが影響してるのだろうか?」
ダンジョンの中は以前に潜ったダンジョンとは違い、薄暗く、軽い瘴気の様な物も発生している。
「グギャ!」
俺がダンジョンの中を見ていると前方から叫び声が聞こえる。
「ゴブリンか…だが、やはり以前潜ったダンジョンのゴブリンより強いな」
声の主はゴブリンだった。
俺にとっては誤差の範囲だが、確実にあのダンジョンのゴブリンより強い。
おれは目の前のゴブリンに対して鑑定を発動させた。