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「ッグ…ガァァ!」
男は撃たれた肩を抑えうずくまり、大声を出す。
そして人質から解放された少女は直ぐにもう一人の少女の方に向かっていく。
さて、人質の解放も成功したし、男共を捕縛しよう。
俺は肩を抑えている男に近づいていく。
「くそ…痛ぇ…」
「さて、これだけ証拠もあるし現行犯で捕縛させてもらう」
冒険者はダンジョンに潜りモンスターと戦うことで肉体強度が上がっていく。
多少ダンジョンに潜った程度でも一般市民よりも遥かに強くなる。
その為、冒険者が犯罪行為に加担、又は犯罪行為を行った場合、通常より重い罪が課せられる事になるらしい。
「くそ…俺が何をしたって言うんだ」
男はぶつぶつと小さく何かを呟いている。
「そうだ!俺は悪くねぇ!コイツが!こいつらがやろうって言ってきたんだ!だから俺は悪くねぇ」
男は遂には仲間に責任転嫁をし始めた。
「お前がリーダーの癖に何をいっているんだか…まぁリーダーがお前じゃ無くてもお前がこの少女を襲おうとした事実は変わらない」
「くそ…いつも通りいく筈だったのに…俺は何処で間違っちまったって言うんだ」
男は諦めたのかそう言うと抵抗する素振りも見せず俺が出した縄に縛られる。
そして近くに倒れている男達も一人一人縛ってから一纏めにする。
男達を動けないように捕縛した俺は先程まで人質になっていた少女の元に向かう。
少女は切られた服を抑えて肌が露出しないようにして俺を見ていた。
その少女の後ろにはもう一人の少女が居る。
どうやら見た感じ怪我も無さそうだな。
「怪我は無いか?」
一応本人に聞いてみる。
目に見えないだけで足を挫いたりしている可能性が有るからな。
「いえ、大丈夫です…助けていただいてありがとうございます」
少女達は俺にお礼を言う。
「いや、俺は礼を言われる事はしていない」
あの男達を捕まえるためとは言え男達がこの子の服をナイフで破るまで助けなかったからな。
そして俺はアイテムボックスから一枚の布を取り出す。
「これを羽織ると良い、何時までもその格好で居るわけにも居られないだろう、ギルドまで送らせてもらう」
「あ、有難うございます」
俺は二人の少女と共にギルドに向かう。
そしていつも通り受付嬢の元に向かって事情を説明する。
「そう言うことですか…少しお待ちください、ギルドマスターを呼んできます…それとそこの二人も付いてきてください」
「えっとそれって…」
受付嬢は男達に襲われた少女に付いてくる様に言う。
当事者だから事情を聞かれるのだろうか?
「私の服を貸すのでこちらに来て下さい、それに何時までもその格好でここに居させるわけにもいきません」
その話を聞いた少女ははい、分かりましたと言って受付嬢に付いていった。
そして少し待っていると修羅が出てきた。
「修羅、犯人の男達の元に案内する」
俺は修羅に向けてそう言い、男を捕縛して放置している場所に案内する。
「確かにコイツらは先程トラブルを起こしていた奴等で間違い有りませんな。
最近新人冒険者を狙った事件が起こっていたのですが、尻尾を現さずこちらとしても問題視していたのです。
主殿、この者達の捕縛、有難うございます」
修羅はそう言って俺に頭を下げる。
「いや、俺はたまたま声が聞こえたからやっただけだ…それよりも、コイツらの処置と被害者のあの少女達にどうするかを考える方が良いと思うぞ」
俺がそう言うと修羅は直ぐに答える。
「コイツらの処罰はもう既に決まっています、あの少女達は冒険者ギルドに登録したばかりの新人…つまりほぼ一般人ですな、一般人に手を出した冒険者は例外無く犯罪奴隷となります」
修羅が言うには犯罪を犯した冒険者を奴隷 商人に犯罪奴隷として売り出し、その時の買い取りの金額を被害者へ渡すことになっているらしい。