33
建物を消し飛ばした俺は背中に翼を生やして上空に飛び上がる。
周りを見渡すと少し離れた所に森が有った。
「よし、行ってみるか」
次の目的地に森を設定した俺はそのまま滑空する様に空を飛び、森を目指す。
少しの間森に向かっていきながら敵感知を発動させる。
「うん、やっぱり修羅達が言ったように強いモンスターは居ないな」
敵感知スキルはゲーム時代と仕様が変わっていた。
ゲーム時代は視界の右上に表示されていたミニマップにモンスターの居場所が表示され、脅威度毎にアイコンの色が変更される仕様だったが、この世界の敵感知は自分の近くにモンスターが居るかが分かるようになるというスキルになってしまった。
鑑定もそうだが、この世界に来たことでゲーム時代の時より性能が低くなっている物がある。
俺のゲーム時代に取っていたスキルはそこまで多くないので確認は追々していけばいいだろう。
森の中に入り、周りに生き物の気配がしないところを探す。
敵感知を発動させながら探すと良い感じの場所が見つかった。
俺はソコに土魔法で大きな穴を掘ってアイテムボックスから実験の犠牲者になった人達を取り出す。
そして時空魔法を発動して死体を囲む結界を作り出し結界の中に火魔法で作った火を作って死体を焼く。
それなりの魔力を込めた火魔法は死体を焼き尽くし、その身を灰に変える。
「よし、こんなもんで良いかな」
人工キメラの実験室の様な建物から実験台になった人たちを回収した俺は、取り敢えず死体を火葬してあげようと考えた。
この人たちはさぞ苦しい思いをしたのだろう、その苦痛は俺には分からない。
だから静かな場所に埋めてあげようとおもって森を探索していたわけだ。
実際には家族の元に送り届けられたら良いのだが、この実験がいつ行われていたかも定かでは無いし、そもそもこの人たちの家族を探す手段がないからな。
俺は結界の中にある灰を先ほど掘った穴の中に入れて上から土をかけて元どおりにする。
「どうか安らかなる眠りを」
そして墓の前で手を合わせてからその場を離れる。
「さて、まずは修羅にこの事を話すか」
先ずは王都のギルドマスターである修羅に話を通そう。
修羅ならこの世界の文字を読める筈だし、この実験について何らかの手がかりが分かるかもしれないからな。
俺はテレポートを発動させて王都に転移する。
王都に無事転移出来た筈なんだが…ここは何処だ?
ゲーム時代でもテレポートを使える人は少なかった為、この世界にテレポートを使える人は少ないだろうと考えて王都の中で人が居ない場所を指定して転移した訳だが、失敗したかも知れない。
いきなり人が現れたなんてパニックが起こらない様にと考えても見覚えのない場所にくるのは予想外だ!
ゲーム時代はテレポートは一度きた事のある場所にしか転移が出来なかったから軽く転移したのだがまさかテレポートまでも仕様変更がされていたとは…まぁ王都にいる事は確定なんだしそこまで気負わなくてもいいか。
最悪光学迷彩もどきを発動させて空を飛べばいいしなと考えた俺は適当に入り組んだ道を進んでいく…
「マジでここ何処だよ!」
いくら適当に歩いていたとは言え10分程歩いて大通りにすら出ないってどんだけだよ。
「しょうがない、最終手段で行くか」
これ以上無駄な時間使いたくなかった俺は光学迷彩もどきを発動させて空を飛び、冒険者ギルドを探して中に入った。
ギルドの中には酒盛りをしている人達やクエストの報告をしている人達が居た。
どうやらこの時間からクエストを受ける人は居ないらしいな。
俺は冒険者登録を頼んだ受付嬢の元に行く。
「ユウヤさん、こんにちは」
「こんにちは…所でギルドマスターは居ます?」
現在の俺は一冒険者だから修羅の事をギルドマスターと言うことにしている。
「マスターなら執務室居ると思いますけど」
「そうか、ありがとね」
俺は受付嬢にお礼を言って執務室の方に向かっていく。