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俺が教会に掛かってる借金を全て払うと言ったらボスの女が固まってしまった。
「もう一度言おう、俺はエステラが払うことになっている借金、金貨300枚とその利子を全て払うと言ったんだ」
俺がそう言うと固まっていたボスがいきなり笑い出した。
「なんだいあんた、あの女に惚れたのかい?」
ボスが俺を茶化す様に話しかけてくる。
「いや、そんな事実は存在しない」
俺が愛しているのは翔子と春香だからな。
「じゃあなんで出会って2日程度の女子供に金貨300枚の金をポンと渡すんだい?普通ならしないね」
まぁ普通ならしないだろう。
だが、俺はこの世界にゲームをプレイしていた時のアイテムや強さを保ったまんまやって来た。
ならば俺のやりたい様に過ごしていくだけだ。
「なに、ただの気まぐれだよ、ここを物理的に潰すって手もあったんだけどな、俺は金貸しを悪い職業とは思ってないし、穏便に済ませるために金を払うだけだ」
「あんたの気まぐれであの子達の借金を返すと言うなら一週間だ、一週間で金貨315枚を耳揃えて持ってきてもらう」
一週間か、普通なら金貨315枚なんて一週間では集められないだろう。
相手もそう考えている筈だ。
「いや、その必要は無い」
「なんだい?もう諦め…」
俺は相手が喋り終わる前に金貨315枚をアイテムボックスから取り出す。
そしてアイテムボックスから取り出された金貨が入った袋はドサリという音と共にテーブルの上に落ちる。
ちなみに、アイテムボックスから金貨を取り出す時に、手に持つことが出来る枚数、つまり10枚20枚程度だったら俺の手に直接出現するが、100枚200枚などの数になると袋に入った状態で出てくるみたいだ。
「ほら、この袋の中に金貨315枚、きっちり入っている…確認してくれ」
そう言うと真剣な表情になったボスが袋の中を確認する。
その手際は流石金貸しをしているという感じであっという間に数え終わった。
「どうやら本当に金貨315枚有るみたいだね…ちょっと待ってな」
女はそう言うと先程まで座っていた机の引き出しを魔法で開け、中から一枚の紙を取り出した。
「ほら、これがあの教会の借金の借用書だよ、これであの教会の借金はあんたに譲渡された、紙を破いて借金を無かったことにするもよし、あんたの自由にしな」
そう言って渡された紙には魔力と共に魔法の形跡が見られた。
成る程…契約魔法の1種か、一定期間借金の支払いを怠ると呪いの様な物が発動するようになっているのか。
担保が教会って言っていたから教会の所有権が強制的に変更されるとかそういう類いなのだろうか?
「ちゃんと確認した、じゃあ俺はもう行くぞ」
俺は契約書に掛かっている魔法を強制的に破壊し効力を無くしてから契約書を火魔法で燃やす。
俺は金貸しの事務所から出ていき、教会に向かっていく。
それにしても契約書に書いてあった元神父の名前はジャイル・フィンリーか、覚えておこう。
おれは先程通った道のりを辿って教会に戻る。
「ユウヤさん、お帰りなさい」
「ただいま…クロス達は何してる?」
「ええ、まだ庭の方で何かをしていますよ」
「そうか、ありがとな」
俺はエステラにお礼を言ってから庭の方に歩いていく。
すると三人とも俺の教えた通りに修行をしていた。
「兄ちゃんお帰り」
「おう、ただいま」
リルとシェラは集中しているのか俺に気づかなかったが休憩していた様子のクロスは俺に気づいてこっちにきた。
「その様子だと魔力切れになったみたいだな」
まぁ初めの内は自分の魔力量を正確に感じる事は出来ないからな。
「まぁ基本的な練習は俺が言ったことを繰り返して、剣術は何処かの道場みたいな所で学べば良いだろう、まぁ、まだ休んどけ魔力切れはキツいだろ」
俺はクロスに声を掛けてから教会の中に入る。
その後、練習を一段落させたリルとシェラ、クロスも中に入ってきた。