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「あっ!そうそう、決着は先に有効打を与えた方って事で良いよね?」
俺がどうやってフェニと立ち回るかを考えているとフェニは思い出した様にそう聞いてきた。
「ああ、勿論良いぞ」
俺はフェニの提案を受ける。
ていうか俺もそっちの方がありがたい。
フランベルジュを持ったフェニと持久戦はやりたくないからな。
条件が揃えば半永久的に戦い続けられるフェニと持久戦なんて圧倒的な火力で押し潰すしかないからな。
しかもさっきの奴も模擬戦だから出来ないし、勝ち目が薄すぎる。
だからフェニの提案は素直にありがたい。
俺はそう考えながらフェニとの距離を少し離す。
そしてある程度離れた所で俺はフェニの方に振り向き刀を構える。
それを見たフェニもフランベルジュを正眼に構えた。
一騎打ちが始まってから数十秒がたっても俺とフェニは行動しない、完全な硬直状態になっていた。
俺は集中する…フェニ全体をよく見て行動の予兆を探る。
一騎打ちの条件は物理攻撃のみの一撃決着、先に攻撃を当てた方の勝利だ。
現在の俺とフェニの距離はある程度離れているがそれでも俺とフェニなら一速で距離を縮めて攻撃ができる距離だ。
だから少しでも気を抜けばフェニは俺に攻撃を仕掛けてくるだろう、そうなると対応するのは難しくなる。
それはフェニも一緒だ、だから俺たちは互いに隙を窺って攻撃を仕掛けるタイミングを見計らってる訳だ。
そして硬直状態のまま時は進み、極限まで集中した意識は僅かな時間を長く感じさせる。
俺は何度もフェニに攻撃を仕掛けるイメージをするがイメージの中の俺の攻撃は当たる直前でフェニに捌かれる。
今攻めても有効打は与えられないか…だがフェニ、このまま硬直状態が続けば俺に有利な展開になるぞ。
俺は未だに行動しないフェニに向けて心の中で言う。
確かに今の集中しているフェニが迎撃に回れば有効打を与えるのは厳しいだろう、だがこのまま硬直状態が続き時間が経てば確実にフェニの集中力は落ちる。
フェニは性格的にあまり待機したり動かなかったりするのは苦手だからな。
そうして集中力が落ちたフェニなら俺は確実に有効打を与えられる。
だから俺から攻撃を仕掛けなければフェニに勝てる筈だ。
我慢比べになったら俺が絶対的に有利になる、そんな事はフェニも分かってる筈。
フェニもそんな展開にはしたくないと考えてるだろう、そうなったら自分から仕掛けるしか無い。
俺はフェニが攻撃を仕掛けてくるのをジッと待つ…そしてそれから少し経った時、遂にフェニが攻撃を仕掛けてきた。
フランベルジュに大量の魔力を込め、フランベルジュから放たれる炎を推進力に一気に俺との距離を縮めてくるフェニ。
対する俺は鞘にしまった刀に手を添えて腰を落とす。
俺とフェニの間にあった距離は一瞬で縮まり、そして俺とフェニは渾身の一撃を放つ。
フェニの力と魔力によって放たれる膨大な威力の攻撃と俺の居合が同時に炸裂する。
「やっぱりユウヤは凄いね…完敗だよ」
「いや、フェニも強かったよ、流石だな」
一騎討ちの結果は俺の勝利だ。
フェニの攻撃を体を傾ける事で避けた俺はそのまま刀でフェニの首を切りつけた。
コレだけ聞くと俺の完全勝利に聞こえるだろうが俺はフランベルジュから出た炎で左側を焼かれている。
対するフェニは首落とされても不死鳥の自然治癒力ですぐに回復できる、今回俺が与えた程度の傷なら直ぐに回復することが出来る筈だ。
この一騎打ち、ダメージ的には多分フェニより俺の方が多い。
まぁ条件内で真剣に戦った結果だから勝ちには変わらないんだが。
「それにしても攻撃の余波だけでこんなダメージを喰らうなんて、どの位魔力を込めたんだ?」
俺はフェニにやられた所にポーションを掛けながらフェニに聞く。
余波だけで俺のMNDを突破したんだから相当な魔力をフランベルジュにこめていた筈だ。
「どの位って…全部だよ」
「全部!?」
俺はフェニのまさかの発言に驚いて声を上げる。
「だってユウヤに中途半端な攻撃は通じないでしょ?だから一撃で決めるつもりで残りの魔力全部突っ込んだんだよ」
「マジか…普通は攻撃を外した時とかを想定するだろ?」
「どっちにしろあの攻撃を防がれたら負けるんだし、失敗した時なんて考えるだけ無駄だよ」
俺の問いにフェニはあっけらかんと答えたのだった。




