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「火よ、この手に集い、敵を穿つ力になれ…ファイアーボール!」
詠唱の後に火の玉が出てきて的に向かって飛んで行く。
そしてリルの放ったファイアーボールは的に当たる。
俺の作った的はファイアーボールが当たり砕けた。
「おお~」
見た感じあの魔力量でまぁまぁな威力は出ているんじゃ無いか?
「さて、リルは今魔法を使った時に詠唱を用いたが、この詠唱にはどんな意味が有るのか分かるか?」
「ええっと、詠唱した方が安定して魔法が発動するから?」
シェラの答えは良い所を付いている。
「そう、シェラが言った通り、詠唱とは魔法の発動率を上昇させる。
では何故詠唱をしたら魔法が発動させやすいかという問題だ」
俺は1拍置いてから説明を始める。
「先ずは魔法の発動条件を教えよう、魔法の発動条件は簡単に言うと魔法のイメージとその魔法に必要な魔力を込めるだけだ」
「イメージと魔力ですか?」
「ああ、詠唱って言うのは、魔法のイメージを補完する為に作られた物だ。
例えばリンゴという単語を聞いたらリンゴが頭のなかに浮かぶだろ?」
二人は俺の説明を聞いてうんうんと頷いている。
「さっき言ったリンゴと同じで、リルの詠唱は火よで火を想像させ、この手に集い、で手に魔力を集め、敵を穿つ力になれで、魔法の飛ぶ方向を指定している訳だ」
二人とも俺の説明で納得出来たみたいだ。
どうやら二人とも頭が良いらしい、それに小さいから固定観念が無いから修正も楽そうだ。
「だから基本的に発動させたい魔法のイメージが出来ていれば」
俺はそう言ってリルと同じファイアーボールを的に放つ。
「こうやって無詠唱でも魔法を撃つことが出来るって訳だ」
「お兄さん、凄いです!」
「今までの魔法理論を覆す程の物だわ」
俺は二人の反応を見てもしかしてヤバイことを教えてしまったのではと考えてしまう。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて、後は魔法の応用とでも言うものを見せてあげよう…これは魔力が有る者なら誰でも出来る事だから秘密だよ…クロス!ちょっとこっちに来てくれ」
俺は二人にそう言って少し離れた所で素振りをしているクロスを呼び出す。
「なんだ?兄ちゃん」
「まぁクロスはソコに立っててくれ、さて、二人には1つ便利な事を教えよう、二人は言葉には力が有るというのを聞いたことが有るだろうか?」
俺の問いに二人は首を横に振って答える。
「言葉には力が有る。
それはさっき説明した詠唱の原理にも利用されている訳だが…その力を利用したらこんなことも出来るわけだ。
クロス…ひれ伏せ」
俺がそうクロスに向けて言うとクロス俺にひれ伏す。
「え?」
「なんで!?」
二人はびっくりした様な声をだす。
「クロス、もういいぞ」
「っは!何だったんだ?今の」
「さて、今俺がやったことは簡単、言葉に魔力を込めただけだよ」
「声に?」
「魔力を?」
「込めただけ?」
三人ともノリが良いな
「そう、二人にはさっきも言ったが、言葉には力が有る、 まぁ今回使ったのは二人にも教えた想像させる力だけどな」
クロスはさっきの説明してなかったからリルとシェラが説明している。
「成る程!そう言うことか」
「あんた絶対に分かってないでしょ」
「まぁクロスへの説明は一旦置いておいて、今回俺がやったことを説明しよう」
そう言うと三人とも静かになってこちらを向いた。
「さて、俺がやったのは言葉に魔力を込めただけ。
音というのは空気の振動だ、その振動は耳から入り脳で処理され、言葉として認識される」
三人は完全に理解しているわけでは無さそうだな。
まぁこの世界では科学が発展してる訳じゃないから分からなくても別に良い。
「普通は声が聞こえてから思考して、行動するが、言葉に魔力を込めるとその言葉が脳からの命令として体に働くって訳だ」
まぁ魔力耐久が高いやつには効きにくいけどなと言ったが、三人とも驚いた顔をして固まってしまった。