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「大人達が森から帰ってきた後は本当に色々と凄かったんですよ」


そういうと女性は大人達が帰ってきた後にあった事を話し始めた。


「大人達が無事に帰ってきた事と、迷いの森を自由に出入りする事ができるようになったという事で集落の皆が宴を開いたんですよ」


死ぬ事を想定して迷いの森の調査に行かせた者たちが成果を持って帰ってきた訳だからな。


調査員を労わるという意味でもこれからの生活が豊かになる事を祝うという意味でも宴会を開いた理由は想像できる。


「迷いの森から無事に戻ってきた訳だからな、それに成果の大きさを考えたら当然だろう」


「そうですね、まぁ宴を開いたのは良かったんですよ、調査に行った人たちが無事に帰ってきたんですからね」


そう言った女性はその時の事を思い出しているのか少し嫌そうな顔をしていた。


「何か問題でもあったのか?」


何故女性があんな顔をしているのか不思議に思った俺は女性に聞く。


だって迷いの森の調査に行った人が無事に成果を持ってきて帰ってきたんだし、女性が嘘を言っていなかった事も証明できたんだし良かったんじゃ無いのか?


「いえ、問題という事では無いですけどその時ちょっと…いや少し嫌な事があったんです」


「嫌なこと?」


俺は女性の言った事を聞き返す。


宴会で嫌な事が有ったのか?でも女性は迷いの森から出る方法を見つけた張本人だし、集落の人たちが女性が嫌がる事をするとは思えないが…


女性が褒められたりする事はあれど、嫌がるような事をされる筈がないだろう。


だって村に利益をもたらしたんだから、そんな人物に対して褒めるならまだしも嫌がるような事をするなんて普通あり得ない。


逆にそんな事をする奴らが居たとしたら相当性格が悪いとしか言いようが無い。


「いえ、嫌がらせをされたとかじゃ無いんですよ、でも褒められすぎてちょっと…」


「ああ~成る程、そういう事か」


俺は女性の話を聞いて何故女性が嫌な事があったと言ったのかを想像出来た。


成る程、要するに褒められまくった事が逆に嫌に感じたって訳だな…


この女性は14歳で立ち入り禁止とされた迷いの森で3ヶ月間も生存し、脱出方法と一緒に集落に帰ってきた。


そしてその後の調査によって女性あのお陰で森の資材や食料が得られるようになってこれからの生活が豊かになる事が確定した。


だからこそ集落の人たちは女性の事を褒めに褒めまくったのだろう。


でもそれが女性にとって少し嫌だったという事らしい。


褒められる…という一見嬉しい行為も行き過ぎれば嫌に感じてしまうからな。


何でもかんでも褒められたら逆に馬鹿にされている様に感じてしまう。


「長なんてこの子は選ばれし子じゃ!とか言い始めて皆の前で褒め始めたんですよ!あの時の事を思い出すと本当に恥ずかしくて…」


そう言っている女性の顔は羞恥から紅くなっていた。


そりゃあ恥ずかしかっただろうな…


俺は女性の言っていた状況を想像してみてそう思った。


そして女性が集落の皆に褒められた事が嫌だと思った理由も分かった。


恥ずかしかったのだろう。


集落の皆の前で長に絶賛されるという事自体が恥ずかしかっただろうけど、それよりもその時のの状況が何よりも恥ずかしかったんだ。


本来なら自分の危機感の無さや勝手に迷いの森まで行った事を怒られる筈なのに、それが集落の利益に繋がって怒られる筈の事が逆にそれが褒められたんだからな。


自分のミスや失敗を褒められるだけじゃなくて、皆の前で絶賛されるとか…俺だったら絶対に嫌だ。


というか俺じゃなくても嫌がるんじゃ無いか?そんな状況公開処刑の様な物だぞ…


「分かるぞ、自分のミスを逆に褒められるって凄く恥ずかしいよな」


俺は女性に共感してそう声をかける。


「そうですよね!私は褒められる様な事なんてしていないのに皆に褒められて、あまつさえ皆の前で自分の失敗を褒められるなんて…本当恥ずかしい…」


すると女性は間を空けずにそう言ってきた。


本当に恥ずかしかったんだろうな…


女性の様子を見た俺は改めてそう感じた。

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