22
ギルドから出た俺は折角こういう世界に来たのだからと宿屋に泊まろうとしたのだが、何処の宿も空きが無いという状況に陥ってしまった。
空いている宿が無いという事なので、宿屋に泊まるというのは今度にするとしよう。
そして次に俺が向かったのは広場だ。
広場はクリスと一緒に乗っていた馬車からも見えているが活気に溢れて人々の元気な声が聞こえてくる。
「おい、兄ちゃんうちのリンゴ買ってかねぇか、甘くてうんめぇぞ」
そう言って声を掛けてきたのはがたいの良いおっさんだった。
「ああ、じゃあ2つ頼む」
オススメされたというのと、この世界の品種を食べたことが無いという理由で2つリンゴを買うことにした。
「毎度あり!合計で銅貨20枚だ」
俺は先程渡された袋の中から銅貨を取り出していき、20枚渡す。
そしておっさんから渡されたリンゴをかじる。
成る程、おっさんの言ってた通りにリンゴは甘くて美味しかった。
それも日本の品種改良しているリンゴよりも甘かったのでこの世界特有の何かが有るのだろう。
「おっさん、このリンゴ美味しかったよ、また買いに来る」
俺は2つのリンゴを食べておっさんに感想を言う。
「おう!俺の所は他の果物もうめぇから今度は違う奴も買ってくれよな」
という事でおっさんと別れた後も俺は露店で売っている物を見ることにした。
アクセサリー等の類いも売っていたが、現在は着けることも無いのでスルーした。
暫く見てまわっていたのだが、途中で知っている人を見かけた。
先程ギルドに案内して貰ったシスターエステラだ。
その近くには小さい子供が何人か居る。
子供は人間や獣人、エルフの3人が居る所を見るとあの教会は孤児院の様なものをやっているのだろう。
シスターの周りにいる子供には楽しそうに笑っている。
すると一人が俺に気づいた様で俺を指差してシスターに話しかけている。
子供が指している方を見て俺に気づいたエステラはペコリと一礼してこっちに歩いてくる。
「ユウヤさん、さっきぶりですね」
「はい…所でそちらの子は?」
俺がそう訊ねるとシスターは答えた。
「ええ、あの教会で一緒に暮らしてる子供達です、ほらクロス、シェラ、リル、挨拶を」
エステラに促されて3人は前に出て挨拶をしてくれた。
最初に挨拶をしたのはクロスと呼ばれていた人間種の男の子だ。
「俺はクロス、兄ちゃん、さっきはシスターを助けてくれてありがとな」
「そうか、まぁ俺はたまたまあそこに居たから助けただけだけどな」
続いてエルフの女の子。
「えっと…リルです、お兄さん、さっきはありがとうございました」
そして最後に獣人の女の子だ。
「シェラよ、シスターを助けてくれた事、礼をいうわ」
「こら!シェラ…まったく、ユウヤさん、すみませんね」
「いえいえ、気にしなくても良いですよ、エステラさん達はお買い物ですか?」
「はい、そうなんです、ユウヤさんはどうしたんですか?」
「ええ、ギルドから出て宿屋を探したんですがどこも満室でして…」
俺は素直に事情を話すことにした。
「それはお姫様の成人の儀が有ったからですね」
エステラの話によると、クリスの成人の儀が有るという事で3日前程から各地から人が集まっているらしい。
それも今日成人の儀を終えて帰って来たからパレードの様なものも行うため、宿屋に人が泊まっているのでしょうと言われた。
そして少し考えてから何かを思い付いた様にエステラが話す。
「そうです!助けていただいたお礼という事で本日は私達の教会に泊まっていきませんか?」
とエステラの提案は俺の予想外の物だった。
「教会にですか?」
「はい、他の皆もユウヤさんにお礼を言いたいでしょうし、それに恩人である貴方に野宿をさせる訳にはいけません」
エステラにそう言われ、俺は断る事は出来ないので、教会に泊まらせて貰うことにした。