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狼達の攻撃を避け続けていると何処からか女性の声が聞こえてきた。
すると先程まで俺を殺そうと攻撃してきた狼達の殺気が沈み、狼達はその場に伏せる。
「これは目標達成だな」
狼達があの一言でひれ伏したという事はさっき聞こえてきたあの声の主が狼達に命令することの出来る存在という事なのだろう。
だとすれば俺のフェルか、フェルの部下が来るまで耐えきるという目標を達成したと言うことになる。
狼達に命令できる存在となればこの群れの主やこの極寒地帯を治めているフェルとかぐらいだろうからな。
俺がそんな事を考えていると一部の狼達は道を開ける様にその場を離れ始めた。
そして狼達の開けた道を歩いてこちらにさっきの声の主が歩いてくる。
「獣人か？」
狼達が開けた道を歩いてこちらに近づいてきたのは獣人の女性だった。
「耳の感じからして狼型の獣人か」
やはりこの女性がフェルに関係する人物というのは決まりと言って良いんじゃ無いか？
「配下の者達がとんだご無礼を致しました、主人に変わって謝罪させてください」
俺の目の前まで歩いてきたその人は俺に狼達が攻撃してきた事を謝罪をしてくる。
この人が謝ってきたという事はやっぱりこの人はこの狼達の上司かそれに当たる存在という事になるのだろう。
それにこの人が言った言葉、主人に変わってと言っていたが、この人にも主人が居るという事はその主人というのがフェルの可能性が高い。
「いや、気にしなくても良いよ、それほど被害は無かったからな」
実際、狼達が俺を殺す気で攻撃してきたが俺は怪我ひとつしていない。
何度か攻撃に当たりそうになったがそれも回避したし…っていうか今思ったんだけど狼達の攻撃って避けなくても大丈夫だったんじゃ無いか？
思えば現在の俺の装備は俺の持っている物でも最強と言っても良い装備だ、狼達の攻撃を全て受けても特に別に問題は無かった。
「そう考えるとさっきまで攻撃を食らわない様に頑張っていた意味は無かったってことか…」
俺は小さくそう呟いてしまう。
なんなら避けなくても結界を貼って待つとか今考えると沢山の方法があったじゃないか…
もっと良い方法が有った、そう考えると少し落ち込んできたぞ。
「どうかなさいましたか？」
いきなり落ち込んだ俺を心配したのか獣人の女性は俺にそう聞いてくる。
「いや、何でもないさ…それで、貴女は私にどういう用で？」
俺は獣人の女性に聞かれた事を誤魔化しながら何故ここに来たのかを聞く。
「私は先ほど上空に向けて異常な規模の魔法が発射されたのでそれの原因を探る為に魔法の発生源に向かっていたのですよ…それで向かっている途中で部下が貴方を襲っているのを発見したのです」
うん、完全に俺が撃った虚無魔法が原因な訳か…まぁ元々そのつもりで撃ったんだけどな。
「それで、貴方は何かご存知ではないですか？」
獣人の女性は俺の放った虚無魔法について何か知っている事がないかを聞いてきた。
うん、これって完全に俺が虚無魔法を撃った張本人だって気づいていないよな。
「ああ…アレか、お前さんのいう魔法を撃ったのは俺だぞ」
俺は獣人の女性に虚無魔法を撃ったのは俺だと伝える。
「何を言っているんですか？あの魔法は人間ではとても撃てる威力じゃないですよ…」
獣人の女性は俺の言葉を冗談だと捉えたのか笑って否定する。
まぁ信じられないのも無理はないか、この世界だと人間ってそこまで強い種族って訳じゃないらしいしな。
「信じられないならここで証拠を見せてあげようか？」
「ええ、出来るなら見せて欲しいですね…あんなの、主人クラスの神獣じゃなければ出来ないでしょうし」
獣人の女性は俺には絶対に出来ないと思っているのか少しバカにした様子で俺にそう言ってくる。
「よし分かった、じゃあ今から証拠を見せてやるよ」
俺は女性にそう伝えると魔力を周りに向けて解放し始める。
