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「…なんでそう思ったんだ?」
俺に言葉を遮られたブラットさんは俺にそう聞いてきた。
「そもそも、冒険者という職業は常に死の危険が身近にある職業です、そんな冒険者に息子がなりたがっていると気づいたのなら、普通夫であるブラットさんのお父さんに相談するでしょう」
そう言ってブラットさんを観るとブラットさんは俺の話を静かに聞いている。
「これは俺の予想ですけど、多分ブラットさんのご両親はブラットさんが両親に冒険者になりたいと言うずっと前からブラットさんが冒険者になりたいと思っているのを知っていたんだと思います」
「そりゃあ知ってたんだろうな、だからこそお袋は俺を応援してくれたんだろ?」
「いえいえ、私が言いたいのはもっと前…ブラットさんが冒険者に憧れた時位から知っていたんじゃ無いかって事です」
ブラットさんは別に冒険者になりたいというのを隠していた訳では無い。
冒険者に憧れ、両親に「俺、冒険者になる!」と言った事も有るだろう。
ブラットさんのお母さんも小さい時に言った時は冒険者に助けられた憧れからそう言っているのだろうと思っていても1年、2年経ってもその気持ちが変わっていないと知れば少しは真剣に考える筈。
家族の事なのだから自分一人で考えるのでは無く夫に相談するだろう。
だからこそ俺はブラットさんの両親はずっと前からブラットさんが冒険者になりたいと思っているのを知っていたんじゃ無いかと考えた訳だ。
「でも俺が言うまで一度もそんな話は出た事が無いぞ?」
俺が昔から両親は知っていたんじゃ無いか?と言うとブラットさんはそう返答した。
「そこはご両親がブラットさんからの話をするまで話をしないとか決めてたんでしょう」
俺はそう言うが、ブラットさんはまだ納得しきれていない様子だ。
なら、と俺は別の方面からアプローチする事にした。
「確かブラットさんは毎日木剣で素振りをしたりと鍛錬をしていたのでしょう?」
俺がそう確認するとブラットさんは頷いた。
「ご両親…特にお母さんから何か言われましたか?」
「いや、特に何か言われる様な事は無かった…ってそもそもバレない様に朝早くから起きてやってたんだから言われるわけが無いだろ」
ブラットさんは何を言っているんだ?と俺に対して言ってくる。
「ブラットさん、考えてください、毎日自分の息子が朝早くから起きて家から出て行っているのを両親が本当に気づいていなかったと?」
特にブラットさんのお母さんは朝の仕込みやら何やらで早起きをしている筈、ならブラットさんが家から出かけてるのに気づかない訳がないだろう。
「本当に気づいていなかったかも知れないだろ?」
「まぁコレは俺の憶測ですからね、本当かどうかは分かりません、でも、ブラットさんのお父さんが木剣を一度捨ててから今までしていた素振りをやめた、でも何故か朝早くから起きているという状況になれば違和感を持つ筈です」
「ユウヤ、お袋が昔から俺が冒険者になりたいって事を知っていたとして、それが今回の話に関係するのか?」
ブラットさんは俺の言い分に納得してくれた様だが、この話がさっきの話とどう関係するのかを聞いてきた。
「ブラットさん、貴方の両親がずっと前からブラットさんが冒険者になるために努力していた事を知っているという事はどれだけブラットさんが本気だったか、を知っているかの証明になります」
小さい頃に一時的に素振りをしていただけなら憧れからの一時的な行動だろうと考えるだろう。
だがそれが一年、二年とずっと継続していたら…それはそれだけブラットさんが真剣に冒険者になろうとしているという事の証明になる。
「つまり、俺が言いたい事は、ブラットさんが14歳の時に冒険者になると話した時、ご両親がブラットさんに対して言った言葉は前々から決めていたんじゃ無いか?という事です」