17
王座の間でお礼の品こと、王城に自由に出入りできる権利を手に入れた俺は王城から出て城下町に出ていた。
城下町は先程も言った通り人に溢れ活気に満ちているが、この黒騎士セットを装備しているせいか周りから視線を感じる。
俺は人の居ない場所を探すために路地の裏を通り、人目のない場所を探した。
少しいりくんだ道を進んでいくと人のいない場所に着いた。
人目が無いことを確認して俺は黒騎士セットを外す。
「ふぅ~やっぱり鎧は視界が悪くなるのが難点だよな」
黒騎士セットに温度調節機能を付けてたから鎧の中は涼しいけど他の人は温度調節機能がないから大変そうだな。
すると何処からか怒鳴り声の様な物が聞こえてくる。
俺は音を頼りにその方向に向かっていくと声の先には古い教会があり、教会の前にはシスターの様な人と複数の男性が居た。
「どうか少しだけ待ってください!」
「うるせぇ!じゃあなんだ?借金の分お前が体で支払うか?」
「ゲッヘッヘ、ここのシスターは上物だからな、変態貴族に売っぱらったら高値が付きそうですね」
これは…あれか?何かしらの理由で借金をつかまされたシスターとそれの取り立てというパターンじゃ無いか?
「なんだぁてめぇ!みせもんじゃねぇぞ!」
俺が見ている事に気づいたのか男たちの中から1人が俺の元に歩いてくる。
肩を揺らしながら歩いてくる様はまるで一昔前のチンピラの様で笑いが込み上げてくる。
「おい、こいつ肩を震わせてビビってやがるぜ、怖いなら帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」
そう言われた俺はこの男の発言に笑いが吹き出した。
「ブハ!ママのおっぱいでもしゃぶってなっていつの時代の言葉だよ!今時そこらにいるチンピラでもマトモなこと言うぜ」
そうチンピラに言うとチンピラは顔を真っ赤に染め上げる。
「てめぇ!ぶっ殺してやる!」
そう言ってチンピラの男は腕を振り上げて俺を殴ろうとする。
が、そんな大振りの攻撃に当たるわけも無く、半歩左に避けてチンピラが体制を崩した所で鳩尾に軽くパンチを当てる。
「グッ!」
そのまま男は殴られた鳩尾を抑えながら倒れていく。
倒れた男は受け身も取れずに頭から落ち、ぐぇ!という声と共に意識を落とした。
「てめぇ!やりやがったな!」
仲間がやられたからか激昂して俺に向かってくるチンピラども、1人だけ俺の事をじっと見ている奴が居るがそいつがボスなのか?
「ぐっ!」
「ごはっ!」
「チクショウ…」
と言ってもチンピラどもがソコまで強いなんて事もなく返り討ちにした。
「おまえさん、随分とやるじゃねぇか」
「そりゃどうも、でもあんたの部下は躾もなってないみたいだな」
「そりゃあすまねぇな、コイツらは頭に少しでも血が回ると手が出ちまうみたいでな、まぁ今回は大人しく帰るとするよ」
「まぁ俺はこの教会にはなんの関係もないんだが」
あの言い方だと俺がこの教会になにか関係あると思ってるみたいだからな。
「じゃあな」
「おい!部下もつれてけよ!」
ソイツは倒れている部下を放って帰ってしまった。
「あ~どうしよ」
またしても厄介事に巻き込まれてしまった様だ。
「ありがとうございます!」
シスターは俺に向かってお礼を言ってくる。
「いえいえ、俺は偶々ここを通っただけです、コイツらをやっつけたのも襲われたからですし…でも見たところ借金ですか?」
俺がそう訊ねるとシスターは話し始める。
「ええ、この教会の前の神父があの方達から借金をしていたそうで、あの方達は借金を返せないなら教会と土地を寄越せと言ってきたんです」
成る程、前の神父がした借金をこのシスターが負わされたパターンか、教会と土地って事は何かの取引所として使う気なのかは分からないが、放って置けないよな。
「そうだったのか、すまないが現状俺が君たちを助ける事は出来ない」
「いえ、気にしなくてもよろしいのですよ、それで、あなたは何故こんなところに?」
聞かれたので俺は冒険者ギルドを探していたら迷ってしまったと説明をする。
「そうだったんですか、それでは助けていただいたお礼に私が案内します」
という訳でシスターが冒険者ギルドまで案内してくれる事になった。