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「お袋には14歳になったら冒険者になるっていうのは言っていたんだ…その時お袋は既に俺が冒険者になりたいって思ってたのは知ってたみたいでな、お前の決めた事なら文句は言わない…でも後悔する様な事は絶対にしない様にしなさいって言ってくれたんだ」
母親には既に冒険者になりたいっていうのは話してたのか…それでブラットさんのお母さんはブラットさんの夢を応援したと…
待てよ、ブラットさんのお母さんがブラットさんが冒険者になりたいって分かってたんならお父さんも気づいている筈だよな?
確かブラットさんの父親はブラットさんが冒険者になるのに反対していた筈だよな、だとしたらもっと早い段階でブラットさんに冒険者は諦めろって言っている筈だよな?
なのにブラットさんの話では父親に冒険者を諦めろと言われたという話は無かった。
可笑しい…
俺はブラットさんの話に違和感を感じた。
「まぁそんな感じでお袋には話していたけど親父には冒険者になるってのは伝えてなかったんだ」
俺は違和感の正体を探ろうとするがその前にブラットさんが話の続きを話し始めた。
違和感の正体はブラットさんの話を聞いてから考えるとしよう。
「何故お父さんには話して無かったんですか?」
俺はブラットさんに質問をする。
母親には相談していたのだったら父親にも前々から冒険者になりたいと相談するだろう。
なのに何故ブラットさんは父親には伝えなかったのだろうか?
確かに小さい頃にブラットさんの木剣を捨てられて、父親が冒険者に反対するかも知れないと考えたとしても、ちゃんと親子で話し合えば解決したかもしれない。
「親父は俺が家業を継ぐと思っているだろうから、冒険者登録が出来る誕生日の日に話そうと思ってたんだ」
なるほど…父親が家業を継ぐことを期待しているのを知っていたブラットさんは父親に冒険者になるって言いづらかったって訳か。
「そうなんですか…それで…」
反対されたって事か。
「ああ、誕生日の昼、俺は飯を食べながら親父に冒険者になるって言ったんだ…その時親父はなんて言ったと思う?」
ブラットさんは俺にそう聞いてきた。
「いえ…」
確かブラットさんがガンテツさんと話をしていた内容ではお前じゃ無理だから諦めろって言われたんだっけか?
「親父は俺にこう言ったんだ…お前に冒険者は務まらない、直ぐに死んで終わりだ、そんな無駄な事で命を散らす位なら家業を継げ…ってな」
成る程…そういうことか。
俺はブラットさんがガンテツさんに親父は俺を家業を継がせるための道具にしか思っていないと言っていた理由が分かった。
先ほどブラットさんが言われたと言った言葉、ブラットさんからしたら小さい頃から冒険者になる為に毎日鍛錬をしたりと努力していた事全てを否定された様に感じたのだろう。
ブラットさんのお父さんが鍛錬をしていた事を知っていたかは分からないが、少なくともブラットさんはショックを受けた筈だ。
そして最期に言われたそんな無駄な事より家業を継げと言われた事で父親は自分の夢を否定して、無理やり家業を継がせようとしていると思ったという事か。
確かガンテツさんの話していた内容だとブラットさんのお父さんは息子であるブラットさんに常に死の危険が身近にある冒険者にさせたく無くて冒険者になる事を反対したらしいが…
ブラットさんのお父さんとしては冒険者になるのを諦めさせようとしたのだろう。
とは言え、流石に当時14歳のブラットさんに言っていい言葉では無いだろう。
当時のブラットさんの年齢は14歳、思春期真っ只中だ。
ブラットさんのお父さんが言った様な言い方は絶対にしてはいけない。
精神的にも多感な時期に自分の夢を完全否定され、あまつさえ諦めて家業を継げとあんな言葉で言われたらそりゃあ傷つくだろう。