15
夕方辺りにクリスが眠りから覚めた後、馬車の周りは一気にお祝いモードになった。
馬車を1度止めて騎士達がクリスにお祝いの言葉を掛けていく。
それにクリスは対応している訳だが…これは戻ってからで良いのでは無いか?
俺的には王都に戻る方が先決だと思うのだが…まぁ俺が言った所で変わるわけでもないから意味がないんだけどな。
そんな事は分かっているのだが…コイツら祝いの言葉が長すぎだろ!
そして俺ももうそろ限界が近い。
具体的に言うと暇すぎてヤバい。
現代日本で生活していた俺にとって暇とは天敵である。
日本に居たときはゲームやらネットサーフィンやらで暇を潰せたが、科学が進歩していないこの世界でそんなものが有るわけがない。
よし、寝るか。
これが終わったら誰かが教えてくれるだろう。
俺は近くにある木に寄りかかって目を閉じる。
「黒騎士さん?」
10分位経っただろうか?クリスの声が聞こえて俺の意識は覚醒する。
「なんだ?終わったのか?」
まぁここにクリスがいる時点で終わったんだろうけど。
「はい、これから皆さんで夜ご飯の準備をするみたいです」
「という事はもう1日夜営をするって事か」
「はい、王都に着くのは明後日になるそうです」
明後日か、まぁどうにかなるだろ
「了解した、それで?食料は足りるのか?」
「ええ、食料は余分に買っておいたので心配しなくても大丈夫ですよ」
そうなのか、まぁ何かあればアイテムボックスから食材を出せば良いか。
その後は晩御飯を食べ、次の日はみんなに料理を振る舞ったりして時間は過ぎていき、2日後には王都が見えた。
「おお~これが王都か」
アニメとかで良く見た門が眼前に広がる。
ユグドラシルオンラインの時の街の入り口とも違った感じで面白いな。
門の前には王都に入る前に検問所があり、商人らしき人や初めて王都にきた人を検問しているらしい。
王族や貴族、冒険者や一部の貴族御用達の商人は検問をパスする事が出来ると言う事で王族の馬車に同行している俺は検問を受けることも無く、王都に入ることが出来た。
「凄いな」
俺がそう呟くとそれを聞いたクリスが自慢気に話始める。
「はい!ここに住んでいる皆さんはとても素敵でこうしてこの街の人が元気に生活しているのを見るともっと頑張らなきゃって気持ちが湧いてくるんですよ!」
「クリスは街の人たちが好きなんだな」
「はい!もちろん冒険者の皆さんも商人の皆さんも大好きですよ!」
という会話を挟みながら、馬車は王城に向かって進んでいく。
すると周りにいる人たちがクリスが帰って来たという事で声を掛けてくる人が居た。
一般人が第二王女に声を掛けて騎士達がなにもしないという事はこの光景は日常茶飯事、またはクリスが喜んで受けているという事だな。
馬車の周りには国民で人だかりができつつあるが、馬車は王城の前に着いた。
王城の前に着いた所で門番が馬車に近づいてくる。
「お帰りなさいませ、第二王女様、それでは死者や負傷者の確認をお願いいたします」
門番がそう言うと馬車を引いていた人が伝える。
「試練の祠に着く前に30名程の盗賊に襲われて殆どの者が負傷しました」
「なんだと?それで、皆は大丈夫なのか?」
「ああ、途中で助けが入ったんだ、その人の回復魔法で負傷者は完全に回復して、その後は姫様の試練も無事に終わった」
そう御者が門番に伝えると門番は安心した様に息を吐く。
「そうなのか…皆無事で良かった、その助けてくれた人にも感謝しないとな」
「ああ、本当に、黒騎士さんが居なかったら俺達は帰れなかった可能性もあるしな」
「よし、じゃあ門を開けるぞ」
門番がそう言って後ろにいる兵士に命令をすると城門が開いていく。
馬車は門を通り、城に向かう。
「そうだ、黒騎士さんが暗殺者教団の暗殺者を捕獲して、馬車に積んであるから回収しておいてくれ」
「ハァァァ!!!?」
御者が思い出した様に門番にその事を伝えると門番の驚いた声が響き渡る。