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「よし、これで大丈夫だろ」


俺は自分の服装を見てそう呟く。


現在の俺の格好は黒いシャツにズボンという至って普通の…決して冒険者には見えないだろう格好をしている。


これで避難所に行っても門前払いをされないだろう。


多分何故今頃来た、とか言われそうだけど、商人の馬車に乗って公国に帰ってきたが、戦争が起こるらしいから避難しに来たと言えば騙せるだろう。


そうして中に入れば後はブラットさんの彼女さんを探すだけだ。


確かブラットさんの彼女さんの名前はフィオレだったよな


俺はそんな事を考えながら自室から出てリビングの方に向かう。


リビングに着くとそこには先ほどと同じ格好をしたヤヨイの姿が…


「どうした?着替えてないのか?」


今のヤヨイの服装はゲーム時代に装備していた俺が作ったメイド服だ。


まぁメイド服なら冒険者として疑われる事は無いだろう…せいぜい俺に仕えているメイドと思われる位だろう。


「マスター?」


ヤヨイの口から放たれたその言葉に俺の体はビクッ!と反応した。


「な、何だ?」


俺は出来るだけ落ち着いた雰囲気でヤヨイに返事をしようとしたが焦ってしまい、上手く言葉が出ない。


ヤバイヤバイ!


何が原因かは分からないが、ヤヨイは今完全に怒っている。


昔一度だけヤヨイを怒らせてしまった事が有るが、あの時は最悪だった。


ヤヨイの顔は笑っているのに目が笑ってないっていう…普段怒らない人が怒ると怖いと言うのは聞いた事があるが、あれ程とは…


もうヤヨイを怒らせない様にしようと思っていたのに…何故ヤヨイは怒っている!?


確か前に怒られた時は確か…思い出せない。


何故だ?俺は基本的に見たことは覚えているし思い出そうと思えば直ぐに思い出せる筈なのに何故かヤヨイに怒られた理由だけは出てこない。


思い出そうとしても靄がかかった様な感じで思い出す事が出来ない


考えられる理由は…


「あれか…」


俺がヤヨイを怒らせた理由を思い出せない理由…多分だが、無意識下に記憶のロックをしているのではないか?


俺は基本的に一度見たことの有るものは思い出そうと思えばすぐに思い出す事が出来る、なのにあれ程怖い思いをしたのにその原因が思い出せないと言うことは、無意識的にその時のことを思い出さない様にしているのだと思う。


「マスター?何をブツブツと呟いているんですか?」


ヤヨイは平坦な声で俺に向かってそう言ってくる。


やはりヤヨイの顔はニコニコとしているのに目が笑っていない。


ヤヨイがこちらに近づいてくる…静かな部屋の中にヤヨイの足音が響いている様に聞こえる。


ヤバイ!完全にあの時と同じ顔をしている。


俺は急いで何が原因でヤヨイを怒らせてしまったのかを考える…が、ヤヨイを怒らせた理由は想像が出来ない。


そうこうしている間にもヤヨイは俺の元に歩いてきて…そして俺の目の前に立つ。


怒られる!そう思った時に俺が咄嗟に取った行動は…


「ヤヨイ!すまない!」


謝る事だった。


何が原因かは分からないが取り敢えず謝らなければと思ったのだろう、俺はヤヨイに謝っていた。


「マスター?何を謝っているのですか?」


「いや、あの…俺が何をしたのかは分からないがヤヨイが怒っているという事は俺が何かしたんだろう…だからすまない」


俺がそう言うとただでさえ静かな部屋が静寂に包まれる…


やっぱり駄目か…なら


あんな理由で謝っても許される訳が無い…そう考えた俺は怒られる覚悟を決める。


「はぁ、もう良いです…」


「へ?」


そうヤヨイの言葉を聞いた時、我ながら間抜けな声が出てしまった。


「着替えてくるのでマスターはここで待っていてください」


突然の事に呆けている俺にそう言うとヤヨイはリビングから出て行く。


「助かった…のか?」


ヤヨイの居なくなったリビングで、俺はそう呟いた。

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