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俺とクリスは洞窟の中に足を進める。
さっき調べた時に分かった事だが、この洞窟には特殊な結界が張られているみたいだ。
その結界とは魔物はこの結界に入ることが出来ないという物だ。
なのでこの洞窟内にはモンスターは現れないし、トラップの類いも見当たらない。
なので基本的にはただ安全な場所と言った所だ。
この様な結界が常時発動している物は何らかの魔力供給源がなければ作ることが出来ない。
多分あの祠に祀られている神が魔力元とみて良さそうなんだが…何故こんなところにこんな祠が有るのかが不思議だ。
これは可能性の話だが、この祠は昔の人たちの避難所として作られた可能性がある。
少し離れは森のなかに何らかの生物が生活していた形跡が有ったからな。
そしてこれは俺の予想なんだが、後々にこの結界を発見した者がこの結界を神が作ったと考えて祠を作り、なんならを祀ったんじゃないかと。
そうして祠には途中から王族の、成人の儀として使われ、祠に付喪神みたいな感じで神が宿ったら又は祠に神力が形成されたんじゃ無いかと。
確証が無いため断言は出来ないが、可能性は高いと思われる。
俺が考え事をしている内にも俺達は洞窟の中を進んでいき、遂に最奥まで到着した。
「クリス、先に俺が祠に触る、俺に何か有ったら直ぐにここから出るんだ」
俺がそう伝えるとクリスはコクリと首を縦にふり、肯定の意思を俺に伝える。
俺は祠に触り闇魔法の精神操作を発動させる。
如何に神性を持っているとしてもなりたての神に負けるほど俺のステータスは少なくはない。
祠自体に神性が付いたのかそれとも神が取りついたのかはこの方法で分かる筈だ。
祠に神性が付いただけならまだ自我は無いだろう。
でも祠に神が居るなら自我があり精神操作に引っ掛かる。
それでこの祠を調べた訳だが、ただ単にこの祠に向けられた信仰によって神性を祠が手に入れただけらしい。
自我は発見出来なかったしな。
という訳でこの祠に危険性が無いことが分かったのでクリスに教える事にする。
「クリス、どうやらこの祠に危険性は無いようだ、安心して儀式を行うと良い」
「分かりました」
こうしてクリスの試練と言う名の成人式が始まったのだが…祠に祈りを捧げ始めてからクリスが周りに対して反応していない。
そして祠から感じられる神力が桁違いに増えている。
これが試練という事か?
途中で俺が干渉して何らかの悪影響をもたらしてはいけないので俺が出来ることはもうなにもない。
10分位経っただろうか?祠から発せられていた光は徐々に収まっていき、そして消えた。
「終わったのか?」
光が収まったと同時に祈りを捧げるポーズをとっていたクリスが倒れる。
「おい!大丈夫か!」
「スースー」
(おいおい、いきなり倒れたから心配したぞ)
どうやらクリスは祠が行った試練という物で疲れてしまったらしい。
身体的に異常は無く、寧ろ健康体だ。
「これはどうするか…よし、持ってくか」
俺は何時までも祠に居るわけにもいかないのでクリスを抱えて洞窟の外を目指す。
(これが本当のお姫様抱っこってか?)
現在俺はお姫様抱っこと呼ばれる抱きかたをして洞窟の外に向かっている。
前世で翔子と春香にしたことは有るがまさか本物のお姫様にする事になるとは思っていなかったな。
洞窟を戻っていくと外から入ってくる光が見えてくる。
「おい貴様!姫様は大丈夫なのか!」
最初に声を掛けてきたの忠誠心が一際高い騎士クリストファーだ。
近衛であるロベルタもこちらに駆け寄ってくる。
「どうやら試練で疲れてしまった様でな、ぐっすりと眠っているよ」
俺はロベルタにクリスを渡しながらそう伝える。
周りの騎士達にも伝わったのだろう。
心配していた雰囲気が一気に安心した様子になっていた。
その後、馬車は来た道を戻るように王都に進んでいく。
結局眠ってしまったクリスが目覚めたのは夕方になった辺りだった。