139
公国がワザと戦争を起こそうとしていたかを調べるかどうかは後で考えるとしよう。
「それで、四大貴族の評判については分かった、それで、他にはどんな情報を集めたんだ?」
「はい、四大貴族の評判を聞き終わった私は今回の目的である四大貴族が良く行く所が無いか?という質問をしました…結果から言うと、この国の観光地の1つである伝承の祠に邪神の力が封印されている可能性が高いと思われます」
おっ、ヤヨイもその話を聞いたのか…となると四大貴族が伝承の祠に通っているというのはこの国に住んでいる人にとっては常識みたいな所が有るのだろうか?
というより十中八九そこに邪神の力は封印されているだろう。
市民に何故伝承の祠に行くのかと聞かれた時にはなんらかの儀式をしていると言っていたらしいし、隠す気はないだろうしな。
ブラットさんの話からして伝承の祠には古から伝わるという伝承が書いてある以外には何もないらしいから、多分地下通路か何かで邪神の力が封印されている場所に行けるのだろう。
「私が集めた情報は以上です…まぁ他は今回の事に関係なさそうなので省略しますが…」
最後の言葉を行った時にヤヨイが少し疲れた様な表情をしていたから、情報収集の時に何か有ったのだろうかと気になった俺はヤヨイに尋ねてみる事にした。
「何か問題ごとでも有ったのか?」
俺の質問にヤヨイはすぐに答えた。
「いえ、何度か冒険者に絡まれた位なので大丈夫でしたよ…まぁ面倒事を起こせないから冒険者たちをあしらうのが面倒だっただけです…」
ああ~成る程、ヤヨイは美人だからな、冒険者たちがナンパをしてきたって事か、それで、その時を思い出して、嫌な気分になったって事か。
それだけ冒険者たちがしつこかったって事か。
俺はヤヨイが疲れた顔をしていた理由に納得する。
「じゃあ次は俺の報告だな、俺はヤヨイと別れた後、露店を開いている商人たちを中心に四大貴族が良く行く場所に心当たりは無いか、という質問を始めた訳だ。
まぁ商人はこの国に住んでいる訳じゃ無いから、詳しい話は聞く事は出来なかったんだが、とある商人が四大貴族の人が良く伝承の祠に行くという噂を聞いた事が有ると話してくれたんだ」
俺は商人から聞いた話をヤヨイにする。
「成る程、マスターも伝承の祠について話を聞いていて、目星はつけていたという訳ですね」
ヤヨイは納得したようで頷きながらそう言った。
「ああ、その商人が噂程度だから本当かはわからないという話をしていたから、他の人にも聞いて本当かを確認しようとして、酒場に入ったところでブラットさんに会ったんだ」
「ブラットさんですか?一緒の馬車に乗っていた?」
ヤヨイは本当ですか?と俺に聞いてくる。
まぁ別れる時は早く彼女に会いに行くってテンションが高かったから、酒場に居たとは思えないだろうしな。
「ああ、そのブラットさんで有っているぞ、それで、俺もなんで彼女さんに会うって言っていたブラットこんな時間から酒を飲んでいるかが気になったから事情を聞く事にしたんだ」
「そうですね…あの様子でしたら今日は彼女さんと一緒に過ごしている筈ですよね?それで、理由はなんだったんですか?」
俺はヤヨイに促されるままにブラットさんの事情を話す。
ブラットさんの話を聞いたヤヨイは有り得ないといった表情をしている。
まぁヤヨイの気持ちは俺も分かる。
ただ武装しているというだけで避難所に入れなくするのは可笑しいし、そもそもブラットさんを避難所に入れる事が出来ないなら彼女さんを避難所から連れてきてもいい筈だ。
「まぁそんな訳で、プロポーズする為に彼女に会いに行ったら会う事すら出来なかったから、ブラットさんは酒場でやけ酒をしていたって事だ」
「なんですか…それ…」
ヤヨイは肩を震わせながらそう言う。
まぁヤヨイが怒るのも仕方ないだろう。
「…しょう」
「ん?」
ヤヨイが何かを呟いたが、小さくて聞こえない。
「行きましょう、マスター!」
ヤヨイはそう言うと俺の手を掴んで外に向かう。