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儀礼剣を売っている商人の露店を離れたあと、俺は他の商人の露店も見て回っていたのだが、途中で身に付けている腕時計からアラーム音が鳴り響いた。
「おっと…もうそんな時間か…」
俺は腕時計のアラームを止めて、ヤヨイとの待ち合わせ場所である親父さんの鍛治屋の前に向かう事にする。
俺はヤヨイと別れた後に、昼の待ち合わせに遅れない様にと腕時計のアラームを設定しておいたのだ。
設定した時間は11時50分だから、今から向かえば12時前には着くだろう。
俺は真っ直ぐ親父さんの店に向かって歩いていく。
「ん?」
親父さんの店の近くに来た俺が周りを見渡すと、店の前には既にヤヨイが立っていた。
が、どうやら絡まれているらしく、ヤヨイの周りには数人の男性が立っていて、ヤヨイに何かを話している。
それを見た俺は少し駆け足でヤヨイに向かって進んでいく。
「ヤヨイ、待ったか?」
俺は手を上げてヤヨイに近づきながら周りにいる男たちにも聞こえる様に少し大きめの声でそう言う。
俺の声に反応した男たちは俺の方を見てくる。
「あぁん?誰だテメェ、邪魔すんじゃねぇよ」
その中の1人が俺に向かって近づいてきて、凄んでくる。
まぁ凄んだ所で迫力が無くては意味はない。
やるなら威圧位は発動させないと怖がらないと思う。
「お前らが絡んでるの、俺の知り合いなんだけど、邪魔だから何処か行ってくれる?」
俺は男たちにヤヨイから離れる様に言う。
「なんだと!俺たちを誰だと思ってやがる!」
俺の言葉を聞いた男たちは俺に向かって怒鳴ってくる…このままだと面倒になるな。
「…良いから消えろ」
俺は軽く威圧を発動させながら男たちにココから去る様に言う。
すると男たちは泡を吹いて倒れてしまった。
「あれ?…マジかぁ」
あの程度の威圧で気絶してしまうとは思わなかった。
仕方ない、この様になってしまったならしょうがないな。
「ああ!この程度で気絶してしまうとは情けない…」
俺は気絶した男たちに某有名RPGの有名なセリフ風に言う。
「マスター?」
するとヤヨイがなにをしているんですか?という風な感じで俺の事を呼んできた
「いや、気にしなくても良い…それより、ココから離れようか」
既に俺たちの周りには軽い人だかりが出来かけているからな。
俺はヤヨイの手を掴んで引っ張っていく。
「ええっと…マスター?、あの男たちは放っておくんですか?」
「ああ、アイツらが絡んできたんだ…気絶したのは俺のせいとは言え、何かやってやる義務は無い」
運が良ければ誰かが起こしてくれるだろう。
まぁ多分その前に金目のものは剥ぎ取られるだろうが…まぁこれに懲りたらナンパは控える事だな。
「そうですか…」
「そうそう、ヤヨイ、なんでアイツらに絡まれてたんだ?」
アイツらはナンパ目的でヤヨイに声を掛けたんだろうが、ヤヨイなら軽くあしらえるだろうし、逃げることも簡単な筈だ。
というより、俺がやったみたいに軽く威圧してやればあんな男達は直ぐに撃退できると思う。
ヤヨイなら俺と違って気絶させるなんて事にはならないだろうしな。
「私が情報収集を終えてお店のマスターが来るのを待っていたらあの男たちが私に絡んできたんです…」
ヤヨイの話を聞くと、俺を待っている間にあの男たちがそこでお茶でもしない?とナンパしてきたらしい。
「マスターと私の目的はこの国に封印されている邪神の力をどうにかする事、問題を起こす訳にはいかないので待っている人が居ると言ったのですが聞かなくて、流石にしつこかったので実力行使をしようとしたのですが」
「その前に俺が来たって訳か?」
俺の言葉にヤヨイは頷く。
成る程、アイツらは典型的なナンパ男だったって訳か。
「ヤヨイ、問題を起こさない様にしようという気持ちは良いが、ああ言う輩は1発ガツンとやらないと諦めないから、次からは俺みたいに対処して良いと思うぞ」
俺はヤヨイにアドバイスをする。
「はい、次からはそうする事にします…」
「よし、じゃあ昼食を取るついでに聞いた情報の整理をする事にしよう」
そう言って俺はヤヨイを連れて近くの店に入る事にした。