128
「かしこまりました、それではお支払いの方は如何なさいますか?」
指輪を買うことを商人に伝えると、商人は笑顔で俺にそう聞いてくる。
まぁ一括現金払いしても良いんだが、予算は金貨100枚って言ってあるしな…
よし、アレで良いか。
「すいません…今現金は金貨150しか無くて…」
俺が、そう言うと商人は笑顔のまま
「お客様、私は商人ですので、買取もしているんですよ」
商人はそう言うと俺のバックに目をやった。
成る程、商人は俺が付けているバックをマジックバックと勘違いしているんだっけ。
まぁこれを渡しても良いんだが、このバックはマジックバックでは無いし、人を騙して金を得るのは好きじゃない。
ていうかそれをするぐらいだったら普通に現金で払う。
となれば、商人が言っていた様に何かを商人に売るという方法を取るしかないか。
「そうですか…なら」
俺はアイテムボックスの中に入っているアイテムから商人に売れそうな物を探す。
う~ん、これはダメ、これもダメ、こんなのはもってのほかだ。
アイテムボックスの中には高値で売れそうな物は沢山有った。
俺がユグドラシルオンラインで作った装備や魔道具なんかだな。
だが、この世界の魔道具などの性能を考えると、俺の作った物は性能が高すぎるのだ。
はっきり言って俺の作った魔道具1つで市場を壊すことすら出来るんじゃないかっめぐらいの値段が付く可能性がある。
武器や防具ならそれを身につけているだけで圧倒的な力や防御力を得ることが出来るしな。
というより、防具をつけた場所だけじゃなくて、全身に防具としての効果が現れるゲームの仕様がおかしいのだが、この世界の人達の強さを考えると、俺の作った防具一式を装備するだけで一騎当千は出来ると思う。
なんせ相手の攻撃を喰らってもダメージは殆ど無いようになるからな。
という訳で武器と防具は無し。
そして同じ理由で魔道具の類も出す事は出来ない。
となると、他に俺のアイテムボックスに入っているのはモンスターの素材や、生産用の素材だな。
モンスター素材はダメだ、俺が出したモンスターの素材が、もしもこの世界に存在しないモンスターだったとなればこの素材をどうやって手に入れた、という話になりかねないからだ。
となると、残るは生産で使う素材なんだが…多分世界樹の葉とかそういう高ランクの素材を出す事は出来ないだろう。
となれば、低ランクの素材を売りに出すしかなくなるのだが…そもそも、宝石商の商人に鉄や鉱石の類を買い取って欲しいと言うのはアレではないだろうか?
というより、この商人は宝石商なのだから宝石を売れば良いじゃないか。
流石に加工済みの宝石を出す事は出来ない。
はっきり言ってなんだが…商人が見せてくれている物より高品質のものばかりだからな。
下手したらバカにしていると勘違いされる可能性がある。
となれば、必然的に商人に売る物は加工していない宝石の原石という事になる。
「コレを買い取って貰えますか?」
俺はアイテムボックスから、初期の方に取れた低品質の原石を商人に見せる。
「コレは…宝石の原石では無いですか!」
商人は俺が宝石の原石を持っていた事に酷く驚いた様で、少し大きな声を上げる。
「これは以前に鉱山で依頼を受けた時に報酬として貰った宝石の原石です、確か依頼主の話ですと、ダイアモンド、サファイア、ルビー、エメラルドの原石と言っていました」
原石としての価値は普通の物より低いだろうが、まぁまぁな量があるのでそれなりの値段にはなるだろう。
「少しこの原石を見ても良いですか?」
俺が頷くと、商人はなにやら虫眼鏡の様な物を取り出して、鉱石を見はじめる。
「どうやら原石としての品質はそこまで良いという訳では無いですが、この大きさです、加工次第では良い宝石になるでしょう…本当にコレを私に売ってくださるので?」
商人の問いに俺は頷いく事で答える。