120
ショートテレポートで屋敷の中に侵入した俺とヤヨイは現在レントルード侯爵の寝室を探す為に屋敷の中を探索していた。
「思ったよりも人は居ないな」
屋敷の中を歩いていて気づいたのだが、どうにも屋敷の中には人が少ない…というより警備の兵士以外は見かけない。
「こんな時間ですし、皆寝ているのでは無いですか?」
ヤヨイの言っている事は分かる、実際今の時間は深夜だ。
日本の様にゲームやパソコンが無いこの世界では起きている人が珍しいという時間帯だ。
「だけど人の気配を感じないって可笑しくないか?」
部屋の中に人が居る気配も無いし、感じるのは近くにいる警備の兵士ばっかりだ。
「まぁ良いじゃ無いですか…メイドや執事が居ないという事は屋敷のなかで何をしても一般の人に迷惑が掛からないという事ですから」
「まぁ、そりゃあそうだけど」
イメージだと住み込みで働いてるって感じだから、少し期待はずれ感も感じるな。
「まぁ居ないなら好都合だ、バレない内に早く目標を探すぞ」
「はい」
という訳で屋敷の探索を再開した俺たちだが、レントルード侯爵の寝室はアッサリと発見出来た。
「ここ、だよな?」
「多分そうです…よね?」
俺たちはレントルード侯爵の寝室と思わしき部屋の前に居るのだが…本当にここがレントルード侯爵の寝室なのか?
部屋の前には兵士が3人配置されていて、部屋の中からは人の気配がする。
自分の寝室の前に兵士を配置するのは分かる、権力者なら、自分がやっている事から暗殺者などの刺客が来ることを見越して、自分を守る為に兵士を配置するのは当たり前だからな。
だが、見回りの兵士以外に兵士が配置されているのがここだけというのはどういう事だろうか?
普通は何部屋か寝室とおなじように兵士を配置して、自分の寝室を見つけにくくする筈だ。
だが、俺とヤヨイがレントルード侯爵家を探索した所では、この部屋以外に兵士が配置されている所は無かった。
これではレントルード侯爵がここに居ますよ~と教えている様な物だ。
「これ…隠す気があるのか?」
「いえ、マスターこれは別に刺客が来ても問題はないというアレではないでしょうか?」
「そうか?…ただ単に警戒心が無いだけじゃないか?部屋の前に居る兵士もそこまで強くなさそうだし…」
まずまず寝室の扉が金色って…趣味悪すぎだろ。
「まぁ、こんなに自分の姿を隠さないと言うことはそれだけ自分の身を守る事に自信があると言うことだと思います…なんらかの魔道具が有ると考えても良いんじゃないでしょうか?」
「そうだな…じゃあ部屋に入るぞ、ヤヨイは左の1人を気絶させてくれ、俺は右に居る2人を無力化させる」
「はい」
俺は右側に居る兵士を無力化する。
2人の兵士を闇魔法の精神干渉魔法の1つであるスリープで強制的に睡眠状態にする。
「っと、これで大丈夫だろう…ヤヨイ、そっちはどうだ?」
「はい、私も兵士の無力化に成功しました」
ヤヨイも無事に兵士の無力化に成功したみたいだ。
「一応そっちにもスリープをかけるぞ、それから身動きを取れない様に縛るから、縄を用意していてくれ」
「分かりました」
俺はヤヨイが気絶させた兵士にスリープを掛けて直ぐに目を覚まさない様にする。
「マスター、コレを」
「サンキュー」
そしてヤヨイから渡された縄で兵士3人を縛って動けない様にする。
「後は…よし、これで大丈夫だろう」
最後に目が覚めた時に大声を出されたりしないように猿轡をはめる。
「よし、じゃあ部屋に入るか…ヤヨイ、誰か人が来た時は直ぐに知らせてくれ」
これまでの警備を見るに寝室には何らかの魔道具が有るのだろう。
俺も気をつけて行動しなければいけないな。
ヤヨイが頷いたのを確認した俺はレントルード侯爵の寝室の扉を開いて中に入って行く。