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「じゃあ作戦の確認をするぞ」
ヤヨイが頷いたのを確認して俺は先程までヤヨイとたてた作戦を言っていく。
「先ずは貴族街に侵入し、 レントルード侯爵家を目指す。
この時に光魔法による光学迷彩と、気配遮断のスキルを平行して発動させる事で誰にも気づかれないようにする事を忘れないように」
「はい、分かってます」
「よし、次だ、レントルード侯爵家に着いたら早速中に侵入…と行きたいところだが、先ずは侵入経路の確保だ。
隠密行動をしている俺たちに気づく奴なんて居ないだろうが、侵入者を察知して知らせる魔道具があるかも知れないからな」
「そうですね…万が一の時は門の見張りを無力化して門から入れば良いと思いますし」
まぁそうだな。
見張りだってずっと同じ人がしている訳では無いし、交代のタイミングでは門から出入りするからな。
もしも侵入者を検知する魔道具が有ったとしても、門には設置されていない筈だ。
「まぁそれは最終手段だ、人が通れば見張りが気絶しているのは一目瞭然だし、侵入したというのが直ぐにバレるからな」
「そうですね…まぁそんな事をするなんて無いと思いますが」
「じゃあ最後、レントルード侯爵家に侵入した後だな、屋敷に侵入した後、レントルード侯爵が寝ている寝室を探しだし、侵入して魔法を掛ける…このときにヤヨイは寝室に近づいてくる人が居ないかを部屋の外で見張ってくれ」
「分かりました」
ヤヨイの返事を聞いた俺は転移魔法を発動させ、公国の街道に転移する。
「よし、じゃあやるぞ、ヤヨイ、光魔法と気配遮断を発動させるぞ」
「分かりました」
俺とヤヨイは光魔法と気配遮断を発動させる。
すると俺たちの姿は見えなくなり、気配が限りなく薄くなり、周りと溶け込むように気配が感じられなくなる。
「よし、行くぞ」
「分かりました」
俺たちは貴族街に向けて進み始める。
貴族街に向かっている途中、俺はふと疑問に思った事がある。
俺とヤヨイは現在光学迷彩と気配遮断をして気配を消している状況だ。
なのに俺はヤヨイの姿が見えるし、ヤヨイは俺の姿を確認出来ている。
普通なら、光学迷彩を発動している…つまり、自分の周りの光を屈折させて自分の姿を見えなくしているのだから、ヤヨイの姿が見えるはずは無いのだ。
多分これはユグドラシルオンラインでの、気配遮断や姿を隠すスキル、魔法を使用しても仲間には認識できるというシステムがこの世界でも使えているという事なのだろう。
ユグドラシルオンラインでは、同じパーティーに入っている人に適応されていたシステムだが、この世界にはパーティー設定なんて無い。
これがユグドラシルオンラインのステータスなんかを引き継いでいる俺とヤヨイだからお互いの姿を認識する事が出来ているのか、それとも魔法発動者、つまり俺が仲間だと認識している人が俺の姿を見る事が出来るのか…
今度確かめて見るのも面白そうだな。
そんな事を考えつつも俺はヤヨイについていく。
そして俺たちは無事に誰にも気づかれること無く、貴族街に侵入する事が出来た。
「ヤヨイ、レントルード侯爵の家は何処にある?」
俺はヤヨイにレントルード侯爵の家の場所を聞く。
街道での情報収集ではヤヨイと別行動していた為、レントルード侯爵の家の場所を俺は知らないのだ。
「レントルード侯爵家は貴族街の東に有ると聞いているのでこっちですね…商人からは大体の場所しか聞いてないですが、門には家紋が有るから直ぐに分かると言ってましたよ」
ヤヨイはそう言って東側を指差す。
「了解」
俺とヤヨイはレントルード侯爵家を目指して進む。
貴族街を進んでいくにつれ、自らの権威を示すように屋敷が豪華になっていっている
王国の貴族街もそうだったが、貴族街では奥の方に爵位の高い貴族が屋敷を建てているみたいだ。
「マスター、商人に教えて貰ったレントルード侯爵家の家紋を見つけました、ここがレントルード侯爵の家みたいですね」
どうやらヤヨイがレントルード侯爵の家を見つけたらしい。
俺はヤヨイの元に向かって歩き出す。