03話 ~とある勇者の考察~
〇 ~三人称~
「さて、さっそく調査を始めようか。いいかいロサ」
黒と白の騎士一行は、宿に荷物を置くともう一度タバネに挨拶をしてから村を出た。
先ほどの事件をまだ引きずっているのか、三人の表情は晴れない。
白い騎士は努めて明るく振舞っているが、一番精神的ダメージを受けているのは彼だろう。
「ねぇ、本当にいるのかしら。こんな田舎に」
ロサと呼ばれた少女は、首をかしげながらに白い騎士を問い詰める。
ピンク色の、少しだけ癖のあるセミロングの髪が揺れる。
「それは、わからない。けど、この村にはきっと何かがある」
「何かって、なんだよ」
黒い騎士は問う。けれども白は顔を伏せ、また何かを考え始めた。
「いったん情報を整理しよう」
森へと入った一行は、周りに人がいないことを再確認する。小さな鳥のさえずり。うっそうとしたその森は木陰ばかりで、まだ肌寒い。
花の香なのか終始アロマに似た甘い香りが漂っていた。
そんな場所で苔の生えた倒木を見つけた三人は、そこに腰を下ろしていた。
「まず、さっきの宿にいた四人はおそらくこの近辺に出たっていうA級魔獣ユニコーンを狙った『テイマー』たちだと思う」
テイマー。AGIが高い冒険者により構成される、捕獲専門のギルドを指す。
倒さずに捕獲するのだから、どちらかというと罠づくりに特化している。
そしてテイマーが狙う魔獣はこの世にたったの一種。『ユニコーン』のみだった。
「あぁ。たぶんそうだろうな。つかお嬢――じゃねぇわ、ロサはなんでとっ捕まってたんだよ」
「あ、ごめんなさいね。少しお手洗いに行ってて」
「なげぇんだよ。大便か?」「――ちょ、レン、デリカシーなさすぎ」
「いいのですよアル。そうですわ」
「……」
白い騎士は頭を押さえる。気苦労が絶えない、といった感じだった。
「あの女の子には、感謝してもしきれませんわ。いつかわが家に招待して褒美を」
「こらこら、今回は身分を隠しての旅でしょ?」
「そ、そうでした」
「話が反れたね。戻すよ」
と、白い騎士が言うと二人は頷く。どうやら彼が一番のしっかり者らしく、仕切ることも多いらしい。
「さっき宿にもう一組客がいたよね。たぶんあれ、サンディーク家の側近だと思う」
「――ッ。それって、まさか『あの子』もここに?」
「分からない。またいつもの気まぐれかもしれないし。彼女はつかみどころがないからね」
白い騎士とロサは熱く語り合っているが、黒い騎士は会話については行けてなく。
え、誰がきてんの。と唖然とした表情でつぶやく始末だった。
「……いい加減家の名前くらい覚えなよ」「興味ねぇ」
「だよね……」
「誰がいたって関係ねぇだろ。俺たち『勇者の一行』のやるべきことは、魔王を倒すことだ」
黒い騎士は言い放つ。あまりに唐突の発言に白い騎士はあわてて周囲を見渡し。そうして再び誰もいないことに安堵していた。
「ちょっとレン。少しは隠そうとしなよ」
「隠す必要なんてないだろ。お前みたいな鑑定持ちが見たら一発だ」
「……そりゃそうだけど」
と、白い騎士は今しがた宿屋にいた冒険者にしたように指で輪を作り、黒い騎士とロサを覗き込む。
Lv:55
STR:25
DEF:19
AGI:44
INT:1
MND:10
LUC:10
名前【レン】 適職【勇者の剣士】
加護【俊敏A】 【長命AA】 【察知B】
Lv:7
STR:1
DEF:1
AGI:1
INT:60
MND:1
LUC:1
名前【ロサ】 適職【赤の勇者】
加護【英知C】 【抗魔A】
スキル【ブレイブネク】
「これ、本当にどうにか隠せないかな」
「隠せないから困ってんだろ」「いや、こういう時だけ正論はいいから」
「……私としては、別に知られても構わないのだけれど。でも勇者の中でも九人目ってのが不服よね。『あの子』は二人目、なのに」
私のほうが順位が低いみたいじゃない、と呟くロサ。
どうやら、件の人物にライバル心を燃やしているようだった。
「そこはやっぱり。ほら、生まれた順番だから仕方ないよね」
「んんぅ! 分かっているけれどくやしいぃ! あの人あの見た目で一体いくつなのよ!」
「でも、『あの子』がこの場所にいるってことはもしかしたら情報は正しかったのかもしれない――魔王がここにいるっていう情報が」