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14話 ~とある少女の純潔~


 

    〇 ~主人公視点~


 「――100!」

 「――115!」


 テントの布を剣で切り裂き、即興の服を作りそれを着て少女を追った。

 工匠という加護を持っている私は、とにかく手先が器用で、服作りにもそれが役に立った。

 正直奴隷にしか見えないけれど、何も着ないよりかはましだろう。


 追いかけてたどり着いた場所は、それこそサーカスの会場のような場所だった。薄暗く、ランプの黄色い明かりがあたりに広がっているような、そんな居心地の悪い場所。


 中央にある円形のステージには、ほとんど裸同然の少女たちばかりだった。

 猫耳や、尻尾の生えたいわゆる亜人のような人もいた。


 その中に、エフニーカもいた。

 

 というよりも、今まさに行われているオークションの主体となっているのは、彼女だった。


 下卑た男たちの熱気が、一心に少女へと向けられる。

 口々に叫ばれる数字は、いくらで彼女を買うか、ということだろう。


 ……どうすればいいんだ。


 私は、お金なんて持っていない。もちろんオークションに参加できる資格なんてない。

 けれども、今まで忘れていた贖罪にはならないだろうけれど、一人残してしまった妹を、助けたい。


 「――300」


 「「おぉ……」」


 一気に値段が吊り上がったかと思ったら、そう宣言したのは先の勇者だった。


 ロリコン勇者。

 まさかこんなオークションに参加しているなんて。


 「他に誰もいませんかぁ? うんうん、いないようですねぇ。それでは!今回の目玉商品、エフニーカを買った御仁は前へ!」


 ゆる、されるのか。そんなことが。


 こっちの世界の常識は、こうなのかもしれない。でも、それでも。

 あんまりだろう。


 なぁ、英知。

 

 >はい?


 私を、もう少し幼く……できれば、十歳くらいにもう一度キャラメイクできないかな。


 >できるよ~。でもあいぼー、何を考えてるの?


 ……ちょっとね。できうる限りの美少女で頼みます。


 >でも分かった。スキル【キャラメイク】発動。


 今回の変身は秒で終わった。

 周りの人の視線とかも気になったけれど、みんな壇上に上がった勇者にくぎ付けになっていたから騒ぎにはならなかった。


 「さ、おいで。エフニーカちゃん、だったっけ?」


 ロリコン勇者は手と首の鎖を外すと、エフニーカの手を握りそのままステージを降り、どこかへと消えていった。

 許すまじ。


 私のかわいい妹を傷物にしようものなら、あの男のイチモツをちょんぎってやる。


 って、こうしている場合じゃない。

 早く追いかけないと。


 もう既に淫行が行われているかもしれない。


 私はむさくるしい男たちの間をぬって、天幕の外へと出た勇者を追う。


 「――ッ! めちゃくちゃ上玉じゃねぇか! あれも商品かぁ!?」


 走っている最中にそんな声が聞こえたけれど、無視だ無視。

 むしろかわいくキャラメイク出来ていることを喜ばないと。

 

 あの勇者の目に留まるくらいには、かわいくないと困る。

 

     〇


 うわ、早速淫靡な宿屋に行ったぞあの勇者。

 昼間からお盛んな……じゃなくて、これからどうするかを考えないと。


 私は奴隷商の店から飛び出すと、そのままエフニーカを引き連れた勇者の後を追った。


 往来があるなか、エフニーカにあの恰好のまま歩かせているだけでも殺意がわくのに、あろうことか行きついた先はソッチ系の宿屋。


 元居た世界で言うラブホテルみたいな場所で。


 ピンク色の外観に豪勢な噴水がある建物。

 砂まみれの街にある唯一のオアシスみたいな場所に、豪華絢爛な城のような造りになっていた。


 スタスタと中に入っていくロリコン勇者とエフニーカを見送ることしかできず、どうしたものかと云々唸っていた。


 いやもう、こうなったら覚悟を決めるしかない。


 正面突破だ。


 重厚な門をバンと開けて、いかがわしいお城へと突入する。

 受付のようなカウンターにいた勇者をすぐさま発見できたのは幸いだった。


 「――あの!」


 「……ん? なんだぃ――ッ!」


 私を見た瞬間に、勇者は絶句する。それもそうだろう、英知に美少女で頼むとお願いしていたのだから。

 明らかに女好きの幼女趣味なこの人には、それはもう大層かわいらしく映っているだろう。


 例えば小説に出てくる、ロリ系ヒロインのような。


 「か、か……かわ。いい」


 あざとく小首をかしげて見せる私に、目がハートになるロリコン勇者。

 こんなのが勇者だなんて。大丈夫ですかこの世界は。


 「どうしたのかな? だめだよ、こんなお店に入ってきちゃ」


 「その子、私の友達なの。連れて行かないで」


 と、エフニーカを指さす。当の本人は心底不思議そうな顔をしていたけれど、空気を読んだのか黙ったままだった。


 「ごめんね。この子、僕が買っちゃったから」


 「いやだ! お願い! ねぇ、勇者さまなんでしょう?」

 

 「う~ん。こまったなぁ」


 「私のできること、なんでもするからその子をかえして!」


 「……なんでも?」


 引っかかったぞ!

 勇者の関心はもう完全に私に向いているのか、上から下までじっとりと嘗め回すように私を見る。

 

 そうして「でゅふふ」と、気持ち悪いおやじのような笑い方をしたかと思えば、「しかたないなぁ~」と満面の笑みで私の両手を掴んだ。


 「じゃあ、この子にしようとしてたイタズラを、君にしちゃおうかなぁ~でゅふふ」

 

 「そしたら、エフニーカちゃんかえしてくれる?」


 「うん、約束するよ」


 よし、うまくいった。とりあえずこれでエフニーカの初めてを死守できた。

 もちろん私も、こんな男にくれてやるつもりはない。


 ……つもりは、ない。


 つもりはない、が。


 えっと、握りしめる握力が強すぎて振り払えない。


 勇者と名乗るだけはある。ステータスもさぞ高いんだろう。

 流石に見切り発車過ぎたかな。


 このままだと私、こんな男に。


 ……え?


 


 


 






 

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