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我と緑柱石と人虎とエルフ

遅くなってすみません。


短編ではネクロマンサーとなっていたベリルですが、設定を変えました。


「・・・・・・・・・・」


調合をしている我の側でベリルは無言でこちらを見ては、必要な材料をすぐ手配してくれる。

今ではベリル1人でも簡単な調合は問題なくできるのだが、我のサポートをする事をメインとしてくれている。


「後はこれを小分けするだけだが、これ用の瓶はどこだったか・・・」


「棚上、茶の箱に青、白の箱に緑」


我の呟きにベリルがとても小さい声で答えてくれる。

最初は全く無言だったベリルとも会話が増えて我は嬉しい。

師としては独り立ちさせるべきなのかもしれぬが、サポートしてくれると言う間は共に調合をしていこうと我は考えている。


ベリルは緑がかった黒髪に黒の虎耳と尻尾を持つが、アズライトと違って虎の姿にはなれぬ。

人虎族と人狼族は狼か虎かの違い以外は成長も能力も大差はないだろう。

強いて言うならば、戦闘力に関しては人虎族は魔法が不得手と言う事だな。

強化魔法は使えても攻撃魔法を使える者がほとんどおらず、その分パワーに関しては人狼族より上を行くと言ってもいいだろう。

人虎族は普段はエルフの森近くで生活をしておる。

魔法が苦手な人虎と近接攻撃が苦手なエルフとでお互いの欠点を補ってはいるが、何時みてもお互いの事を罵倒しあっている。

それでエルフと人虎族は共同しあっているのだから喧嘩するほど仲がいいと言うべきなのか?


人虎族も虎の姿か人化か上半身が虎の姿でベリルのように耳と尻尾が出ていると言うのはおらぬ。

ベリルはその耳と尻尾から人虎族と言っていいかもしれぬが、能力に関しては魔人族といった方がよいだろうな。

我の四天王は我の力を元にしているから、外見の種族と全く同じではない。

ベリルは人虎族のように力には全く特化しておらず、魔力がとても高い。

言うなれば人虎族と魔人族のハーフと言うべきかもしれぬな。

それ故に人虎族の同じ年頃の子供より幼く見えるし喧嘩も負ける。

ベリルは魔力が高いからこそ魔人族で育てるべきだった。

なのにエルフと人虎で共同で育てると言って連れて行ってしまったのだ。

魔人族は子育ての知識を教える者は別だし、先代魔王は我が倒れてる間の代理をしないといけないし、先々代は旅に出ていてどこにいるか不明だ。

しかしエルフ族は他種族については無関心な事が多いのに何故あの時は協同を主張した理由は1つ、ベリルの魔法の使い方に気付いたからだろう。


魔族は種族によって違うが大体50歳前後で成人と言われる。

だが、四天王達は生命の木から知識などを全て学んで生まれてくるから誕生した時点では人の子で言うところの3,4歳の姿だ。

それから1年位かけて力の使い方を学び、外見は15,6歳になる。

我はその1年の半分以上を共に過ごせなかったがな。

この世界では魔法は精霊の力を借りて使う魔法と生まれ持った魔力を使う方法があるが、ベリルは違う。

ベリルは己の魔力意外に瘴気を魔力に変換して使う事もできる。

それに気が付いたエルフが魔族領で最初から育てるのは危険だと主張して人虎族と育てると言い出したと我は聞いている。

確かに瘴気を魔力として使うならば瘴気が多すぎる魔族領で初めから魔法を覚えるのは危険だ。

通常の魔法を全て覚えてからと言うのは理解できるが納得できないのが我である。

四天王達が誕生してから20年位は経つが、未だに文句を言うと”心が狭いとあの子達に嫌われるぞ”とか言う始末。

腹立たしいのにも程がある。


生命の木から生まれた子達は生まれてから10年位しか経っていなくても成人扱いされるが、我にはあの子達がまだ子供に思えて仕方がない。

魔人族で言えば20歳くらいはようやく知識を学び終え、自分の得意なのが何かが分かってくる時期だ。

そして先代の分身達は3人だが、3人とも悪魔族で無表情。

彼等が誕生したころにあった時はとても可愛かったのに、10年経った頃にあった時には可愛さは何処に行ったんだと聞きたいくらい大人びていたのだ。

先代が言うには”俺意外に懐かせるわけないだろう”とか自慢げに言っていた。

確かに1度、先代魔王には笑顔を向けているのを見たことがあるから嘘ではないのだろう。

要は最初に倒れて育児権を取られた我が悪いと言う事なのだろうか。


それでも4人は我にだけ甘えてくるのは確かだ。

ぬ?気のせいじゃないかって?

失敬な。

決して我の気のせいなんかではない。

先程もベリルは我の呟きに答えてくれたであろう?

それが何よりの証拠と言えよう。

人虎達からパール以外とはしゃべっているのを見たことがないと聞いておったし、再会後に一度も喋ってくれないベリルではあったが、初めて喋ってくれた日を我は今でも覚えておる。

あの日も今日と同じ調合をしていたのだが、材料となる葉が大幅に減っていた。

あの葉は我以外は使わず、朝には大量にあったはずなのだがどういうことだと思いながらも葉の調達が先だと急ぎ森へと向かった。

帰ってみればベリルとパールが先代の魔王に怒られているではないか。

何事かと思えば2人の側には我が使うはずだった葉が大量に落ちている。

しかも踏みつけられており、今回の調合には使えない状態・・・。

まさかと思っていれば先代の分身達が我に状況を教えてくれた。


”ふわふわの葉をベッドにしてお昼寝したいね”

とのことであの葉を庭に持ち出して寝ているのを先代が発見してお怒りになっていると言う事らしい。

魔人領では草木は貴重だ。

魔王城の周りは瘴気が出ないようにしている為、草木は多いが城から離れれば生えてる草木は数少ない。

あの子達が使った葉はエルフ達に頼んで取り寄せてもらったもので我等にとっては貴重で、魔族領では決して手に入れる事は出来ない。。

ちなみに我が積んできた葉は人族との境にある森で、質は落ちるが量は前以上にある。

手入れされていない場所にあるから質は落ちるが、今回の薬に関してはそれほどに影響は出ない筈だ。

魔族領では主にオーク達が瘴気から沸く魔獣を倒し、倒した後に瘴気に強い草木を植えていく事を続けているが、植えた草木が必ず育つとは言えない。。

我がこれから作る調合薬は少しでも草木が育ちやすくなる為の薬だ。

そして先代は材料を粗末にするのをものすごく嫌う。

相手が子供だろうが何だろうがこってり説教をくらう。

この分身の悪魔達でさえ例外ではない。

今回の非はあの子達にあるのだから仕方ないが、今は猫の手も借りたいほどである。

何とか先代の説教を落ち着かせ、罰としてあの子達にはお手伝いと言う事で何とか薬の完成の目途が立ち、我が最後の仕上げをする中、先代の説教が再開をしていた。

先代は本当に材料を粗末にするとお小言が長くなる。

ぬ?助けてあげないのかだと?

悪いことをしたら叱られるのは当然の事だろ。

それを我が口出しする訳には行かぬ。

本来ならば我が叱るべきではあるのだがな・・・。

と言うよりこれはあとで我も叱られるであろうな。

”材料の保管がなっておらん!!”と・・・。


完成した薬をオークに届けるよう手配して部屋に戻ると案の定、先代から我が怒られた。

”材料が消えているからと言って何故探さずに代用品を探しに行く!!”

我が考えてたのと違う意味で長々と怒られることになった。

確かに最初に探しておけば、まだ使える状態で回収できたかもしれぬしな。

先代の言う通りかもしれぬと反省していると早々に説教が終わった。

どうも側で涙目で先代を見上げるパールとベリルの視線に耐えかねたらしい。

自分達が怒られている時は泣きもしなかったのに我が怒られ始めたら泣き出すのには先代も慌てたのだろう。

早々に説教を終え、急いで部屋から出て行った。


「「ごめんなさい」」


先代がいなくなるなり2人して我に飛びついて謝罪をする。

先代があれほど叱ったのなら我からしかるべきことは何もないと2人の頭を撫でているとそのまま眠りについてしまった。

2人を部屋に届け、潰れた葉を早目に調合してしまうことにした。

葉を潰してから作る調合薬で何がいいかと考えながら潰していると扉がノックされた。

我が応えると扉が少しだけ開いたがそれだけだった。

どうしたのだろうと扉を見ればベリルが覗いているではないか。


「ベリル?寝ていたのではないのか?」


我が扉に近づき視線を合わせてもベリルはしばらく黙ったままだった。

ベリルは未だに我には喋ってくれるな。

ってさっきの謝罪は喋ったうちにはいるのか?

と考えていた時だった。


「調合・・・やりたい」


ものすごい小さい声ではあったがそう聞こえた。

驚きで見つめればもう一度同じこと言うベリルを我は室内に入れ早速、今の調合を手伝わせながらも教える日々となった。

何れは教えるつもりではあったが、まさかベリルから言ってくるとは夢にも思ってなかったからな。

あの日は色々な意味で忘れられない1日となった。



「これで完成だな」


瓶に詰め終わり、後は届けるだけだと思った時に勢いよく扉が開く。


「ずるいわ!!

 どうして調合するなら私もよんでくれなかったのよ」


「ここは調合室だから勝手に入るな。

 せめてノックはしろ。

 調合師としての最低限のマナーであろう?」


「ちゃんと終わってる気配がしたから開けたんです。

 ずるいわ!!わたし未だにベリルと調合なんてしたことないのに!!」


我の苦情を気にせずミーナは頬を膨らませる。

ミーナはエルフでベリルに魔法を教えた師でもあるが、1度も喋ってくれなかったと肩を落としていたのを覚えている。

エルフと言うのは容姿端麗でプライドが高いものが多いのだが、ミーナは特殊だ。

種族関係なく誰にも明るく接するミーナは各種族との交渉の窓口にもなっている。

エルフが他の種族の面倒を見る事はほとんどないのだが、ベリルとパールの世話は誰もが率先してやっていたと聞いて我は今でも信じられない気持ちではあるがな。

ミーナに聞いたら”子供は正義だもの”とか訳の分からない答えだったが、オロールが言うにはエルフは意外にも子供好きで人虎族が狩りに行く時も子供の世話はエルフは率先して引き受けてくれるそうだ。

我があったミーナ以外のエルフは必要最低限以外は一切喋らなかったのだがな。


「主の調合は大雑把すぎるから今回の作業には向かない」


「何よ。結果が同じなら過程は大雑把でも問題ないでしょ」


調合とはきちんと計って混ぜるのが重要であるのだが、このミーナは目検討で材料を混ぜて作ってしかも完成させるのだ。

我としては有り得ない事だ。

さすがに難易度が高い調合薬は目検討でやると失敗する確率もあるし、材料も高価すぎるからさすがのミーナもきちんと計ってはいるがな。

今回作った調合薬はミーナ達にとってはどこにでも生えてる草で作るから失敗しても作り直せばいいと考える傾向がある。

逆に言えば魔族領では鉱石は良く取れるから材料に鉱石を使う時に我が適当に割るのをミーナは信じられないと言っていたから種族による物の価値の違いがでるのであろうな。


「限られた材料での作業だからな」


「その草なら今回大量に持ってきたし、言ってくれればいつでも届けるのに!!」


子供のように頬を膨らませ拗ねたように言うミーナはこれでも我より年上だ。

他のエルフと話した後にミーナと話すと本当にミーナはエルフなのかと思ってしまう。


「それは感謝している。

 頼まれている例の鉱石も送る手配をしてある」


「それとさ、屑でいいから宝石ほしいな。

 今、仲間で実験してる調合薬があってね。

 さすがに宝石で失敗は痛いから、屑で試したいんだよね」


「宝石の種類は何でもいいのか?

 高級なものだと屑でもドワーフとの交渉が必要になるぞ」


「まだ、実験段階だから何でも構わないわ」


魔族領には鉱山がいくつかあり、ゴブリン達が鉱石を掘りながら住処にしておる。

それでも高級な鉱石になるとゴブリンの手には負えない。

鉱山内は瘴気も滅多に発生しないから転移魔法を応じてドワーフに手伝ってもらっておるのだ。

簡単な作業はゴブリン達でも問題ないのだが、質が高いものはやはりドワーフに任せるのが1番である。


我とミーナが話しているとベリルが我の服を引っ張り首を傾げてくる。

ベリルは言葉をあまり発しないが、その態度で我等は何が言いたいのかがわかる。

正直言うと最初はわからなくて困っていたがな。

今では大抵の事はわかるのだ。


「ああ。ベリルにはまだ宝石を使った調合は教えてなかったな。

 そろそろ宝石を使った調合もやってみるか」


「それなら私が手取り足取り教えてあげるわ!!」


ミーナが身を乗り出して言うが、ベリルは勢いよく首を横に振る。


「ちょっと!!魔王様?

 ベリルが私の誘いを断るなんてどういう事なの!!」


「それは主の日頃の行いが悪いのであろう」


「なっ!?どういう事よ!!」


ミーナは先程も言ったが、エルフにしては人懐っこい。

そして我の四天王達をミーナもまだ子供と思っている節があり、未だに幼子にするような態度をするのをアズライトとベリルは特に嫌がる。

子供好きなミーナの悪い癖とも言える。

それ故にアズライトやベリルに嫌がられると言うのを理解していないようだ。


「あっ、そうそう。

 レーナ姉さんが近々こちらに来てベリルの魔法を見に来るって言ってたわ」


その言葉にベリルの表情が明るくなる。

レーナはミーナの姉であり、闇魔法が得意なレアなエルフで、ベリルの闇魔法の師だ。

どの属性もベリルは扱えるが得意属性は闇であるからエルフの中では一番、レーナに懐いていたと聞いておる。


「初耳だが?」


「さっき連絡があったのよ。

 向こうでの仕事に区切りがついたから会いに来るって。

 それにしても悔しいわ。

 やはりレーナ姉さんのがいいのね」


ミーナの言葉にベリルは遠慮なく首を縦に振り、それを見たミーナが項垂れている。

闇魔法は魔人族なら大抵の者が扱えるし、無論我も闇属性は攻撃魔法なら得意である。

レーナは闇魔法の補助魔法が特に得意であり、ベリルはレーナに師事しておる。

どうもベリルは瘴気を使った魔力は攻撃魔法に使い、自分で持つ魔力では補助系を使うように使い分けているようだ。

その為かベリルの攻撃魔法は瘴気を使いたい属性の魔力に変えて放つ形式なのでかなり荒いが、補助系の魔法はどの属性も高位魔法まで扱える。

自分の魔力を使った場合の攻撃魔法も使うが、瘴気の魔力に比べて威力は落ちるが性能は上だ。

瘴気の魔力でも性能を上げるのがベリルの今後の課題と言う事だな。


「魔王様ぁ。どうして私の愛は届かないのかなぁ」


「主の場合は熱烈すぎだ」


我の言葉に”普通なのに”とミーナは呟くが、絶対に普通じゃないと我は小さくため息を吐く。


「ベリルよ、宝石の調合をする前に関係する教材を読んでおくこと。

 宝石を使った調合はどれも難易度が高い。

 宝石自体が持つ魔力の効能も把握するのが重要だ」


教材となる本を渡しながら言うとベリルは受け取った本を開く。


「もう!!調合なんて本を読むより、実践が重要なのに」


「主はそれで何度失敗をしておるのだ?」


我が問えばミーナは視線を泳がせる。

本当にミーナはエルフなのかと思ってしまう。


「むぅ。でもベリルには一緒に調合してもらうからね」


そういうとミーナは慌ただしく部屋を出て行った。


「やれやれ。彼奴はもっと落ち着きを持つべきだと思うのだがな」


我の言葉にベリルも頻りに頷いておる。

ルビーの話だとこの前のミーナの試作アイテムを見てた時も何かと構おうとしてくるのをベリルは必死に逃げていたと報告を受けておる。

それでもベリルはミーナの試作アイテムとかには興味があって近づくのだから嫌いではないのであろう。


「よし。ベリルよ依頼品は完成したし今日は簡単な宝石の調合を見せよう」


ベリルが嬉しそうにこちらを見るのを見て我も笑顔になる。

今日も素晴らしい1日である。


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