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我と紅玉とドラゴン

”魔族なのに何故か光属性のハーピーでした”のブクマが300件超えました。

ありがとうございます!!

このお話は魔王様のお話となっております。

「別に魔王様の為に頑張ったわけじゃないもん」


そうそっぽを向きながらわれの前に立つルビー。

人族の年齢で言うならば15,6歳の外見に真っ赤な髪を角の脇で2つに結わき、手を腰にあてつつそっぽをむきつつもチラチラとこちらを見る。

そしてその態度と裏腹に尻尾は褒めて褒めてと言わんばかりに揺れている。

うむ。相変わらずルビーの尻尾は本人の態度とは裏腹に正直だ。


「それでも、ルビーが頑張ってくれたおかげだろう?」


我がルビーの頭をなでれば嬉しそうに笑ってくれる。

うむ。我が四天王は本当に可愛すぎるだろう!!


彼女は我186代目の魔王であるユヴェルの四天王の1人、ドラコニュートのルビー。

髪色が示す通り、炎をまとい槍を操れば負けなしと言われている四天王の1人目。

ドラコニュートと言っても四天王は我の魔力を元に誕生したから通常のドラコニュートとは違う。


魔王の資格がある者だけが入れる領域に生命の木がある。

生命の木はある目的の為に魔王が魔力を注ぐことで分身ともいえる部下が生まれる。

我が力を注いで出来た分身は4人。

4人ともとても可愛い我の子供とも言える存在だ。


ぬし達は至福の一時と言ったらどういう時を思い浮かべる?


美味しいものを食べている時?

暖かい布団の中での睡眠?

一仕事やり終えた後の一杯?


我の至福の一時は、分身ともいえる我の可愛い四天王達と過ごす時だ。

ん?四天王と言ったら魔王の指示で人を襲うのが仕事??

一緒にいる時が至福なら人を襲う時が至福の時じゃないかだと?


何を言う、この可愛いルビー達に何故戦って来いと言わねばならぬのだ。


今日もこれから四天王達と庭でのんびり過ごす予定なのだからな。


「そろそろ他の者達も集まる頃だし庭に行こうか」


そうルビーに促せば我の腕に手を絡めて共に庭に向かう。

正直、魔王になるのは面倒としか思っていなかったのだがな。

こんな可愛い分身が出来て、我は幸せ者だ。

まぁ、現在は頭が痛くなる問題があって心の底から喜べないのが残念だ。


庭に出るとふと頭に影がかかり、見上げると大きなドラゴンがこちらの舞い降りてきた。


「おじじ様!!」


ルビーは舞い降りてきたドラゴンの首に飛びつく。

羽もあるルビーなら大きなドラゴンに飛びつくのも楽だろうが面白くない。

我がドラゴンを睨んでいるとドラゴンの背から青年が飛び降りて来た。


「お久しぶりです。魔王様」


「久しいな。人狼の里は相変わらずか?」


「ええ。こちらは魔獣も滅多に出ませんし、平穏ですよ。

 血の気の多い若者がアンフェールに行きたがっているくらいです」


「主もまだ若者に入ると思うがな?」


「俺はあそこはごめんですね」


苦笑しながら人狼の青年に言えば穏やかに笑って返すだけだ。

このドラゴンと人狼は東の方の山を越えた奥に住んでおり、この人狼は名をアルバと言い、人狼族の長の補佐をしている男で定期的に里での報告をしにくる。

ちなみにドラゴンはこう見えてもドラゴン族の前長でルビーの師匠でもある。

だからこそルビーも懐いているのだがな・・・。

ちなみに人狼達は魔族に分類されるが、ドラゴン族達は魔族ではないのだぞ。

人族はたまに魔族と勘違いして襲うらしいがな。

魔族と呼ばれる者にはある特徴があってな。

瘴気耐性が高く、瘴気が漂うなかでも長時間戦う事も可能だ。

ドラゴン達は体は大きいが瘴気の漂う中に長時間耐える事はできなず、滅多にここに来ることはないのだがな。

我が即位してからは定期的にこの前長は来るようになった。


理由は1つ、ルビーに会いに来るためだ。

我が四天王を誕生させた後、力の使い過ぎで休まなくてはならなくなってしまってだな・・・。

情けないことに我が部下はルビーの修行先としてドラゴンに頼んだのだ。

我が不甲斐ないばかりにせっかくの育成をドラゴンに奪われるとは悔しすぎる。

しかも本来ならば同族種に近いドラコニュートに頼む予定だったのにこいつがしゃしゃりでてきた。

しかも魔力の使い過ぎで倒れてた俺が聞いたのは4人をそれぞれの修行場所に送り出して魔王城にはいないと言う酷い報告だった。

あの時はこの城を壊してしまおうかと思ったが”壊したらますます帰って来るのが遅くなりまずぞ”との部下の言葉に渋々壊すのをやめた。

我の四天王はどれもこの領土には住んでいない魔族の姿をしているから修行でいなくなるのは仕方ないが、何も我が倒れている間に決めなくてもいいではないか。

しかも我が魔族ではなくドラゴンやエルフや有翼族に頼むのか。

何故魔族ではなく他の種族に任せねばならぬのか。

あの時の事は今思い出しても腹立たしい。


「ルビー。こっちこい」


昔を思い出してムカッとした我が両手を広げてルビーを呼べばルビーが我の腕に飛び込んでくる。


「魔王様、今日のお茶会はクローヌお爺様も一緒?」


うっ。

ルビーよそのおねだりは卑怯だぞ。

そんな笑顔で言われてしまったら否と言えぬではないか。


「仕方あるまい。今日はアルバ達も一緒だ」


我の態度にアルバが苦笑しておるが我は知らぬ。


「相変わらず魔王は心が狭いのぉ。

 ラトンよ、魔王と話があるでな、先にルビー達とお茶の支度をしといておくれ」


「畏まりました!!さぁ、ルビー様行きましょう」


クローヌの首元にある宝石から幼子の姿をしてひつじの角と尻尾をの姿の少女が飛び出し、ルビーに抱き着く。

可愛い者同士が戯れる姿は素晴らしい。


「では、魔王様。先に行っています」


笑顔でアルバとラトンと共に庭の奥へと向かって行く姿を我が見送っているとクローヌが呆れたようにこちらを見ている。


「全く其方そなたは四天王の事となるとしまりがないのぉ」


「主にだけは言われたくない。

 我の可愛い四天王達が育つところを我じゃなくお主らが見たかと思うと腹立たしい」


「仕方あるまい。其方は相当弱っておったのだから」


「だが、できれば我はこれ以上主らに借りを作りたくはなかった」


そう。

この土地はどういう訳か何もしなくても瘴気が自然にわいてくる土地だ。

ここに限らず他の土地でもそういう場所はあるがここは広範囲で瘴気が漂っている状態で、瘴気が漂ってない場所は魔王城のある城周辺くらいしかない。

それ故に瘴気を糧にする我等がここで暮らし、死の大地にならないように調整をしながら暮らしておる。

だが、いくら糧と言えども取り過ぎれば我等とて魔獣と同じような存在になってしまう。されど魔族は浄化の魔法と使える者がおらぬ。

どうしようもない時はエルフや有翼族達に頼んで浄化してもらうが、限度はある。

有翼族が浄化特化の剣をこの地に刺そうとしたが、大地と剣が反発しあって刺すことが出来なかった。

困った我等を助けてくれたのが精霊達から贈られた生命の木だ。

この生命の木にはルシエルと言う名の精霊が宿っており、彼女の力と共に魔力を込めると実がなり、分身と言われる存在が生まれる。

生まれてくる分身は力を込める者のイメージが宿るが力に関しては運としか言えようがない。

それでも浄化に近い能力を持つものが現れるからこの土地は今まで死の土地になる事はなかったと言える。

だからこそ生命の木に力を与えられるものが魔王と名乗るようになった。

生命の木は一度、実をつけると早くても50年は実をつけることが出来ない。

長い時は100年以上の時もあったと言われておる。

魔王の交代は生命の木に実がなるようになった時になるから過去の魔王達も未だに存命の者が大半だ。

ただ、浄化に近い力を扱える者は必ず生まれるとは限らない。

これまでの魔王達の分身で力を持って生まれた者はほんのわずかだ。

しかも生まれた分身の中で一人でもいればよい方で、手に余る時はエルフと有翼族にもかなり世話にはなっておるがな。


前魔王の分身は5人おり、そのうち1人が瘴気を吹き飛ばすことが出来るものがいたから我が魔王になった時には浄化の力を持つ子はいないかもしれぬと誰もが思っておったよ。

過去の例を見ても1度生まれると数代の間をおかないと生まれたためしがなかったからな。

されどいざ、分身が出来たら我の四天王達は全員がその力を持っていた。

ルビーとアズライトは瘴気を焼いて減らし、ベリルは瘴気を魔力に変換して使うことが出来、そしてパールに至っては無理だと言われていた魔族初の浄化の力を持つ子。

この事には我もびっくりしたが、力を使い果たした我は部屋を出た後に気を失ってしまってな。

分身全てが地から持つ子だからこそ我は倒れたと思われているが、事実は違う。

これは絶対に人には言えぬことだが、倒れた原因は孵ったばかりのパールが何故か大泣きを初めて宥めるのに相当力を使ったのだ。

これを言ったらパールは気にするからこの事は我と生命の木に宿る精霊のルシエルしか知らぬこと。

パールは何故か自分の事を失敗作と思っておって、生まれてしばらくして泣きじゃくって大変だった。。

何故そんなことを想ったのかは謎だが、そんな訳で我の倒れた原因がパールをあやすのに力を使ったからと知れたらとんでもないことになる。


この誕生に喜んだのは我が魔族以外ではなく、他種族も大いに喜んでくれた。

それはありがたいのだが、納得もいかぬ。


「そんなこと気にするのは其方くらいぞ?

 寧ろあの子たちは魔族だけでなくわしらにとっても希望となる。

 そう思ってるからこそ、あの有翼族共も手を貸してるのだろうさ。

 それに今のドラコニュート達ではあの子に教えるのは難しかったろう」


クローヌのいう事は正論だ。

瘴気を糧にしない一族はここ以外の土地で暮らしておる。

ドラコニュートは人にドラゴンの角に羽に牙に尻尾を持つ外見だ。

人狼や人虎族は人化してしまえば人と区別がつかぬがドラコニュートは違う。

人化することもドラゴンになる事も出来ないからこそ人族に魔物として狩られる事が多い一族だ。

それ故に今はドラゴン族達と共に過ごしているが、数は年々減っている。

ここ以外でも瘴気が発生する場所があり、そこの管理と瘴気の中でできる魔石を回収するのは魔族でないとできないからだ。

魔石は魔法の補助として非常に役立つ宝石で、魔力を持たない者でも武器に加工することにより魔法の効果を得ることが出来る。


だからこそ大昔に死の大地をつくる原因にもなってしまったのだが・・・。

今はこの話もやめておこう。


「ドラコニュートだけではないがな。

 いつかはいなくなってしまう種族もでてしまうのではないかと懸念はしている。

 それに今は・・・」


「勇者か?」


我の言葉にクローヌも溜息をつくように言葉を吐く。

そう、勇者。

つい最近、人族に現れた聖剣を抜いた者。

大いに迷惑な存在だ。


「あの剣の威力は以前に比べて衰えているだろうが、それでも我等との相性は最悪だ」


人族が聖剣と呼ぶ剣は、もともと有翼族が瘴気の浄化を促すために大地に指した剣だ。

試しに我が領土以外で瘴気が発生しやすい場所に刺して効果を調べるとか言っていたのだが、たまたまやってきた人族がその剣を抜いて現れた魔獣をあっさり倒してしまった。

しかもその剣は抜いた者しか扱えることができなくてな。

そういう訳でその剣を聖剣、抜いた者を勇者と呼ぶようになったのだがな。

しかもその剣が有翼族が大地に出した剣だと知ると”天使様が魔族を倒すべきものの為にこの剣を与えてくれた”と考えるようになっていたそうだ。

挙句にその剣が刺さって辺りを中心に街をつくってしまった。

それが我が領土の森を挟んだ先にある国だよ。


その剣は大地の浄化を促すためだから抜いたら瘴気が発生しやすくなると警告したのだが、”勇者に対抗する為に魔族が魔獣を放った”と解釈されてしまった。


他の種族からも話はしてもらったのだが、聞き入れてもらえなかったそうだ。

もともと人族は魔族全てが倒すべきものと認識しているから仕方のない事なのかもしれぬ。

全ての人族がそうではないと言うのが救いだが、我等を敵と考えている者達がすぐ近くに住んでいると言うのが厄介である。


過去の魔王の中にもその剣で倒された者達も何人かおる。

そして今回その勇者が現れた。

狙ってくるのは間違いなく我の首だろう。

我が倒れれば分身たちである四天王達も消える。

それだけは魔族の未来の為にも避けねばならぬ。

あの子たちは我が魔族の希望なのだから。


「だろうな。

 あの剣はわしらにとっても厄介な存在だ。

 いつもならドラゴン族は傍観をするのだがな。

 今回はわしが参戦することにした」


「は?」


我の耳はおかしくなったようだ。

このドラゴンは今何と言った?


「わしの半獣達は長にほとんど預けてきたしのぅ。

 ラトンだけはついてくると聞かなかったがな。

 しばらくはここに厄介になるぞ?」


ラトン達半獣はドラゴン達が精霊達からもらった生命の木から生まれる存在だ。

人化することのできないドラゴン達は力の加減が上手く出来ぬからその為に半獣達をつくり、共に暮らしておる。

半獣達は獣の耳がついてたりする以外はほとんど人族の力と大差はなく、ドラゴン1体に最低1人の半獣がついていると聞く。

一番多いものは10人の半獣がいたドラゴンがいたと聞いた事があるな。


「何を考えているんだ!!」


「長からも頼まれたしのぅ。問題はなかろうて」


「いやいやいや。問題だらけだろう?

 長も前長を出すとは何考えている!!」


「ワシ等だけじゃなく人狼も同じだぞ?

 アルバとて今回は戻らずにこのままここにいることになっておる。

 他にも何人か人狼がこちらに向かうはずじゃ」


そういえばアルバも血の気の多い若者が戦う場を求めているみたいなこと言ってたな。


「我は争う気ないのに周りが争う気でどうしろというのだ」


「だからこそのわしらじゃろ?」


そういえばこのドラゴンもかつては暴れまくって人族と派手な喧嘩もしてきたと聞いた事あるな。

人狼も魔族の中ではトップ10に入る戦闘狂が多い一族だ。


「我が求めるのは平穏であって戦いではない!!」


「知っておるよ。

 だから我等が勝手に戦うから其方はまったりしておればいいではないか」


頭痛がしてきた。


「魔王さまぁ」


頭を押さえている我にパールの声が聞こえてくる。

見ればパールをはじめ、四天王達がこちらに走ってくる。


「魔王様もお爺様もお話終わった?みんな待ってるよ」


「今日は客人がたくさんだ。みんな親父達を待ってるぞ」


ルビー、アズライトの言葉にベリルもコクコク頷く。


「なんじゃ。もうみんなあつまっておるのか?」


「みんな?」


四天王達の出迎えに思わず頬が緩みそうになったが、クローヌの言葉に振り向けばこのドラゴンは当たり前のようにいいやがりおった。


「勇者が来ると言うのだから教育係たちとしては相手にするのが筋であろう?」


なっ・・・。

勇者など適当にあしらって平穏を手に入れようと考えておったのにこのドラゴンは人族を煽るようなことをする気なのか。


「さて。ルビーや。美味しい茶菓子もあるかのぅ?」


「もちろんですわ、お爺様」


「親父、遅いとおいていくぞ!!」


我を置いてさっさと向かう四天王とドラゴンの後姿に思わずため息が出る。


勇者以上に面倒なのがでてきてしまったではないか・・・。


それでも我は四天王との平穏の為ならばまもりきってみせようぞ。


なかなか来ない我にしびれを切らしたパールがこちらにきて我の腕を掴む。


「今日のお茶会はお菓子がたくさんなんですよ」


満面の笑顔で言うパールに頷くベリル。

クローヌの背に乗りこちらを見ているルビーとアズライト。


我は絶対にこの子達を死なせはしない。


どんな手を使っても生き延びていこう。

そう、心に誓いお茶会の場所へと向かった。


若干、短編時と設定が違ってる?と思う箇所があると思います。

短編の方もこちらの設定に合わせていずれは修正予定です。


今後ともよろしくお願いします。

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