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四章 心を消して

 ルキの誕生日。ルキはいつもより早く目がさめた。

いつもは整えるだけの黒くて少し長めの髪も今日は後ろで二つに分けて、

かわいらしく縛られるている。鏡の前で自分に向かって笑顔を作る。

その笑顔を見るたび元気が出る。

キリアにふられた心の傷を上手に隠してくれているから。


 「じゃあ行ってきまーす。」


ルキは学校に向かった。いつものようにキリアと一緒に学校に行く。

だからキリアを家から少し歩いた公園の近くで待った。

 

 「ルキ、今日は早いね。誕生日だからかな。」


キリアの声がした。いつもならキリアの方が早くいてルキを

待ってくれていたが今日は違った。


 「どう?この髪。」ルキが笑顔で聞いた。


 「とっても似合ってるよ。ちょっといつものルキより子どもっぽく見えるけど。」


 「そう?」


 「うん。小さい頃のルキみたいで可愛いよ。」キリアが笑って言ったから、

ルキはすごく恥ずかしがった。


 「もうっ!そういうこと言わないでよ!こっちが恥ずかしいんだから。」

でも、本当は嬉しかった。今でもキリアが笑ってくれる。もうルキはそれだけで良かった。


空は晴れていて、暖かくて、明るくて気持ちがいい。

気がつけばもうすっかり春らしい季節になっていた。

そしてキリアと一緒にいられることが何より幸せに感じた。


 学校に着くと、キリアはクラスが違うからひとまず別れた。

 

 「誕生日プレゼントはあとで渡しに行くから待っててね。」


そう言ってキリアは教室に入っていった。

ルキが教室にいくと、シルクとアリスとレイ、三人ともいた。

 

 「ルキちゃんおはよう!」アリスはいつでも朝から元気だ。


 「おめでとうルキ。これ、プレゼントだよ。」

シルクがピンク色の紙に包まれたプレゼントをルキに渡した。

アリスもプレゼントを渡した。しかし、レイが浮かない顔をしていた。

ルキはレイに今日がルキの誕生日だと教えていなかった。


 「あー…私ノリ悪いね。ゴメンルキ、プレゼント買ってない。」


 「言わなかった私が悪かったよ。ゴメンね。」とルキが言ったら、


 「ウソだよ。ちゃんとミルクが教えてくれたから!」と言ってレイが

プレゼントを渡した。昨日、シルクはルキ達と別れたあとに一度レイの家に

行ってからレイと一緒にプレゼントを買いに行ったのだ。


「さすがミルクちゃんっ!!」そんなアリスの言葉で

シルクは少し照れてしまった。


 「みんなプレゼントありがとう。」


 「ねぇ、ルキちゃん、あけてみてよ!」とアリスが言ったが、


 「帰るまであけないかな。楽しみはとっておきたいからね!」と言って開けなかった。


 「ルキ、昨日キリア君が言ってたのって何なの?今日何かあるんでしょ?」


シルクはルキが昨日教えてくれなかったことが気になっていた。


 「どうしよう…あんまり言いたくないんだけどな……」


ルキはやっぱり教えてくれない様だ。その時、

キリアがシルク達の教室に来た。


 「ルキ、プレゼント持ってきたよ。ルキの欲しがってたCD。」


 「えっ!もしかしてrubyの?!」


 「うん。」


 「本当!!嬉しい!キリアありがと!」


 キリアはルキの好みを良く知っている。ルキは「ruby」という歌手の大ファン。

ルキに言わせれば「ruby」の歌ほどいい歌は他にないのだとか。

シルク達はさすが幼なじみだなあと思った。

そして、


 「ルキ、さすがにまだ来てないよね?」


 「うん…多分放課後に多いと思う。」二人だけで話が進む。


 「二人だけで話してないで教えなよ。」さすがにレイも気になったらしい。

そして、仕方がなくルキが小声で言った。


 「なんか…好きだって告白されんのよ……」


 「えっ、誰に?」シルクがとっさに聞き返した。


 「悪魔……」ルキがもっと小さな声で言った。


「ルキってすごく悪魔の男子にモテるんだよ。だから誕生日って

告白してくる人がいるんだ。」


キリアもルキのことを考えて小声で言った。

シルク達は改めてルキのすごさを知った。というよりも、

ルキのような美人を今どきの男子が放って置くわけがないと納得した。


 「恥ずかしいから内緒にしておいてね。」ルキが本当に恥ずかしそうにしている。


でも、逆にアリスは楽しそうに見えた。


 「えーっ!いいじゃん!彼氏作っちゃいなよっ!」

 アリスはルキが恥ずかしがってもおかまいなし。さらに声が大きい。

 そして、それを聞いて焦ったのか、ルキは大変なことを口走ってしまった。


 「でも、そんなにすぐ彼氏なんて作れない。

 私にだって好きな人いるし!あっ…」


 しまったと思った。しかし、もう遅い。

シルクのいる前でキリアが好きだなんて口が裂けても言えないし、

この状況はどうやってもごまかしきれない。

ルキは黙るしかなかった。

だが、状況はさらに悪化した。


 「ルキに新しい好きな人がいたなんて知らなかった。」


キリアが真に受けてしまった。


 「えっ!ルキちゃん、前にもいたの?」


 「実は、この前ルキに告白されちゃって。あれ、みんな知らなかった?」


キリアがついに言ってしまった。キリアのこの言葉を聞いてルキは震えた。

怒りなのかはわからないが、

ルキの中にこみ上げてくるものがあった。

そして、それは、ルキの心を消して、嘘をつかせた。


 「黙れ!お前なんか好きじゃねぇよ!」


ルキは机を蹴った。


 本当はこんなことを言いたくなかった。でも、仕方がなかった。

どうしていいかわからなかったから。


 キリアは「悪かった」と一言だけ言って自分のクラスに戻ってしまった。

キリアはルキが今でも心のどこかで失恋したことをつらく思っているのだと気づく。

ルキがシルク達にも秘密していたことを自分がしゃべってしまい、

キリアはひどく罪悪感を感じた。


 ルキは後悔した。何よりも自分の気持ちの弱さが嫌だった。

怒らずに笑って過ごせば良かった。自分の心に嘘をついて笑っていれば…


 シルク達はルキに何て話しかけていいのかわからなかった。

そのまま放課後まで何も話さないでいた。だが、


 「やっぱりルキとちゃんと話そうよ。」シルクがアリスとレイに言った。

そして、シルクがルキに話しかけた。


 「ルキ、私は気にしてないよ、元気だして!」


 「ありがとう……でもキリアになんて謝ればいいか……。

 私、キリアに嫌われたら……」


 「そんなに気にすることないって!キリア君の他にもいい人いっぱいいるよ!」


 アリスはルキを励ましたかっただけだった。しかし、

ルキに今の言葉を悪くとられ、


ルキが「アリスにはキリアの良さがわからないんだ……」と言った。


シルクとアリスは話しかけたことが逆効果だったと思った。

するとその時、レイが思わぬことを言った。


 「あんたバカじゃないの?早く謝ればいいのに。

 ふられてさらに嫌われてたんじゃ最悪でしょ。」


 聞いていたシルクとアリスは最初、こんなにきつい言い方をしたら

まずいんじゃないかと思った。


しかし、レイが「今日謝れなかったらもう仲直りできないかもよ。」と言ったら、

ルキが何も言わずに考え、そして急に立ち上がって教室を出ていった。


ルキはキリアのところに急いで向かった。

どう謝るかとか考えている暇なんてない。

とにかくキリアに自分の気持ちの全てを伝えたかった。

自分の気持ちに素直になりたいと思った。そして、キリアのところについた。

キリアは玄関にいた。ルキはキリアを目にした時、

抑えていた気持ちを全て素直にぶつけた。


 「私が悪かったの。私がキリアのこと何も考えてなかったから。

あんなにひどいこと言って……」


 「ルキのことはちゃんとわかってるからもう気にしないでいいよ。」


キリアが優しく言ってくれた。


そしてルキは気づいた。キリアが笑ってくれると気持ちがほっとする。

そんなキリアといつも一緒にいたかったから好きになったのだと。


でも、もう一つ気がついたことがある。それは自分とキリアとの距離。

実はとても近いところにキリアがいた。

恋人にならなくても初めから特別な関係だったのだとやっと気がついた。


 「ありがとキリア。私、もう大丈夫だから。」


そう言ってルキはキリアを愛していた時間を心の中にそっとしまった。

二度とその心の中を開けることはないけれど、愛していたことを忘れはしない。

でも、もう再びキリアを愛さないと思うとちょっぴり涙がでる。



四章 完


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