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三章 悪魔と悪魔

 次の日の放課後。シルクは少しの不安と勇気を持って、

アリスとルキにキリアのことが好きだと正直に話した。するとルキが、



 「堕天使とか関係ない。ミルクは仲間だよ。」と一言だけ言ってくれた。



その一言で少しクールなルキの優しさが全部伝わってきた気がした。


しかし、アリスは黙り込んでしまった。「アリス・・・やっぱりダメなのかなあ・・・」


そう思ってシルクが寂しげな表情を浮かべる。

それから少しの間、教室は重々しい空気で静まった。そして、



 「ゴメンね。昨日はひどいこと言ったよね。堕天使は嫌いとか言っちゃって・・・」



アリスが言った。



「いいよ・・・嫌われてもしょうがないのかなとか思ってたから・・・・・・」



シルクがどんどん落ち込んでいってしまう。

だが、やっぱりアリスはシルクを気に入っている様だ。

シルクの不安は意味をなさなかった。



 「そっか、みんな堕天使とか気にしてないんだあ。なら私も気にしない!」



アリスが笑って言ってくれた。

心の中の霧が一気に晴れていく様に不安が消える。

シルクはアリスに認めてもらえたことが何より嬉しかった。



 「・・・・・・ありがとう。」



 「そうと決まれば告白しかないねっ!!積極的にいかなくちゃ。」



アリスが張り切って言った。



 「ちょっと早いんじゃないかなあ・・・もう少し仲良くなってからでも・・・・」


少し赤くなりながらシルクが言った。



 「ダメよ。キリア君みたいなタイプは積極的に押し切らなきゃ!

 必死に好きだってことをアピールするの!それならバッチリだって!!」



アリスがそう言うと、



 「そうだね。キリアはミルクに積極的にせめられたら絶対に断れないよ。」


ルキが少し笑いながら言った。するとアリスも笑い出してしまった。

シルクは最初、二人が何で笑っているのかわからなかった。

しかし、気づいたとたんに顔が真っ赤になった。



 「・・・・・・ちょっと、変なこと考えないでよぉ〜」



 「ゴメン、悪かったよ。」ルキが謝った。


 「でもさあ、キリア君は天使と付き合ってもいいよって言ってくれるのかな?」


アリスが聞いた。



 「・・・・・レイも言ってた。どうしたらいいのかな?」



 「うーん・・・・」アリスとシルクが少し考え込んでいる時、ルキが言った。



 「私、キリアに聞いてあげようか?ていうか、

 アイツはそんなこと気にしてないと思うけど。」



 「よかったねっ!ミルクちゃん!」


シルクは少し安心した。



 外はだんだん暗くなってきた。空の端から夜が来る。

夕焼けすら気づく間もなく夜に飲み込まれていった。



 「さて、そろそろ帰ろっか。もう五時半だよ。」ルキが帰ろうと言い出した。


するとその時、教室の前の廊下をキリアが通ったのが見えた。



 「今、キリア君いなかった?」アリスが聞く。



 「いたね。追いかけてみようか。そしたら一緒に帰ろ。」

とルキが言うと、シルクはかなり焦った。



 「えっ、そんな急に一緒に帰れないよぉ!」



 「ミルクちゃん大丈夫だよ。みんなで帰るから問題ないって!」

アリスが笑って言った。アリスはかなり楽しんでいるように見える。



 「ミルク、でも絶対に今は堕天使のこと聞いちゃダメだよ。」ルキが言った。



 「それくらいわかってるよ。」だんだんシルクが落ち着いてきた。


 シルクもさすがに恥ずかしがってるだけじゃダメだと思った。


「もっとキリア君に近づかなくちゃ!」シルクは決心した。


三人は急いでキリアを追った。そして玄関の前でやっと追いついた。


 「キリアく〜ん!」アリスが声をかけた。


ルキとアリスは怪しまれないように、

追ってきたことがばれないようにさりげなく振舞う。シルクは少し動揺してる。



 「アリスさん。今帰るの?」


 

 「うん!そうだよ。」アリスは上手く話している。



 シルクはなんて話せばいいかわからないまま、ただその場

に立っているようだった。そしてそのまま四人はしゃべりながら学校を出た。

 


 「キリア、明日は何の日かわかる?」急にルキが話題を変えた。



 「ルキの明日誕生日だよね。」



 「・・・やっぱり憶えててくれたんだ。」ルキが微かに照れたのがわかった。


 三月二十八日はルキの誕生日。実はこれでやっとシルク達と同じ年齢になる。

意外とルキの誕生日はみんなよりも遅かった。

しかし、シルクとアリスはルキに誕生日を教えてもらっていなかった。


 「ルキちゃん!なんで誕生日教えてくれなかったの!」

アリスが少しきつく言った。



 「いや、なんか気をつかわせると悪いかなって思ってさ・・・。」



 「全然いいんだよ!遠慮なんてしないでよっ。」アリスがそう言うと、



 「二人ともルキの誕生日がいつもどうなるか知らないんだね。」

キリアが少し笑って言った。



 「余計なこと言わなくていいってば!!」

ルキが珍しく恥ずかしがってるのを見た。



 「とにかく、明日になれば絶対わかるよ。」キリアが言った。


シルクとアリスは何が何だかさっぱりわからなかった。

とにかく明日はルキの誕生日で、何かが起きるらしい。

そして、気づくとある交差点の所まで来ていた。

その交差点でみんなと帰る方向が変わる。

しかしルキとキリアはまだ一緒だ。



 「ルキちゃん、ミルクちゃん、キリア君バイバ〜イ!」

アリスが大きく手を振って言った。



 「じゃあねえ〜アリス〜」シルクも手を振りかえした。



 「シルク、また明日ね。」


 

 「うん。じゃあねルキ。」ルキ達とも別れる。


そしてシルクは家に帰った。家について制服を着替えようとした時、



 「あっ!プレゼント用意してない・・・」



シルクはルキへのプレゼントのことに気がついた。

とにかく財布をもって買い物に行った。



 ルキとキリア、二人の家は近いが、学校からは結構遠い。



 「やっぱり最後はいつも一緒に帰るね。」ルキが言った。



 「しょうがないよ。同じ方向なんだから。昔からいつもルキと一緒だね。

 カイさんはいないけどさ。」



 「うん。でも、一緒に帰って大丈夫かな?

 なんか私達、誤解とかされてたりしない?」


 ルキは近頃、キリアと一緒に帰るのが少し恥ずかしく思えてきた。



 「今さらどうしたのさ。誰も誤解してないって。

 でも、ルキが一人で帰るって言うなら今度からそうしようか?」



 「・・・・・やっぱりいい。さっきのは気にしないで。一緒に帰ろ。」

 


 ルキとキリアは小さい頃からずっと一緒にいる。

ルキの兄の「カイ」も半年前まで二人とずっと一緒にいた。

カイはルキ達よりも少し年上で、何よりサッカーが好きだった。


 

 そして半年前、なんとカイはプロのサッカー選手になったのだ。

それで今ここにはいない。カイとキリアがサッカーで知り合ったのが

この三人の一番最初。近所の公園がはじまりの場所。

カイとキリアはすぐ仲良くなり、そして気がつくと

いつも一緒にサッカーで遊んでいた。

ルキはそんな二人にいつもくっついて遊んでいた。

カイは妹のルキに優しかった。幼いルキを邪魔者扱いせず、

ちゃんと上手くなるように、兄としてサッカーを教えた。

だからルキはサッカーが得意。男子に負けないくらい。

だが、キリアはそれ以上に上手い。キリアはサッカーをしている時、

いつもの穏やかな性格とは違い、かなり悪魔らしい。

そして、ルキはそんなキリアが好きだった――



 「ねえ、私がキリアに告白した時のこと憶えてる?」



 「うん、憶えてるよ。」



 「あの時、私に言ったよね。もっと他の人に認めてもらえないと

 いけないんだって・・・・・・」

 


 ルキはカイがいなくなった少し後にキリアに告白していた。

その時のことは二人ともちゃんと憶えている。キリアは天使と悪魔の子。

だから、他人にはあまりいい印象を与えない。

それでもルキはキリアが好きだった。

キリアのことをしっかりわかっていた。しかし、二人はあまりに近すぎた。

ルキに認められてもキリアは人に認められたことにはならない。

もっと別の人に認められなければ、キリアは周りに嫌われたまま。

だからキリアはルキをふった。でも、ルキはキリアを嫌いはしなかった。

それがキリアのためだと思ったから。

 


 「良かったね。もうすぐ認めてもらえるよ。その子、堕天使だけど!」



ルキは精一杯嫉妬する気持ちを抑えて笑った。全てはキリアのため――


 


三章 完 


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