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一章 平和になった世界で恋は始まる



 人間には見えない世界がある。天使とか悪魔とかが本当に住んでいる世界。

人間が世界を支配するよりずっと前からそこでは争いが絶えなかった。

しかし、世の中は変わるもので、今は敵対していたはずの天使と悪魔が平和に暮らしている。

自分達がやってきたことの悲惨さに、人間の戦争を見てやっと気づいたのだ。



この世界はこれからも平和でいられるだろう――

 

 

 月曜日の朝。ミル・シルクは七時くらいに起きた。

バタートーストを一枚焼いて食べ、薄い黄色の綺麗な髪を整えて、

洗顔などを済ませたら、制服に着替えていつもと変わらず学校に通う。

シルクの通っている学校はアルテリス聖学(「聖学」は「高校」と同じ感じです)。

家からは結構近い。十五分も歩けば見えてくるほどだ。

校門のそばには大きい桜の木がある。しかし、花が咲くにはまだ早い季節。

 


 「おはようミルク!」友人の「レイ」が後ろから声をかけてきた。


 「あ、レイ。おはよう。」


 「ん、ミルク、なんか今日は寝ぼけてる。夜更かしした?」


 「うん、昨日は本読み過ぎた。」


 「なんだ勉強じゃないんだ。ミルク相当頭いいからガリ勉かと思ったよ。

 でも、勉強しなくて良かったの?一時間目から魔法のテストじゃん。」


 「えっ、そうだっけ?!」


 「うわ、珍しい。あんた今日はネジ一本抜けてるね。」


 「どうしよう・・・。」


 「教室入ったら私が教えてあげるから悪あがきしな。」


 「ありがとう。でも、悪あがきはひどくない?」


 「文句言わずにさっさと行くよ。」


 「うう・・・・・・。」


 

二人は急いで教室に入った。二人のクラスは一年B組。

天使は二十二人。男子十人、女子十二人。

悪魔が二十三人。男子十二人、女子十一人の合計四十五人のクラスだ。

ちなみにA組からF組まである。


 

 「あっミルクちゃんおはよう〜。」


友人の「アリス」だ。親しい友人はシルクを「ミルク」と呼ぶ。


 「アリス、私達B組の天使のアイドルは今日はちょっとネジが一本抜けてるのよ。」


実はシルクはクラスで結構モテている。

 

 「あれ、ミルクちゃん何かあったの?」


 「いや、大したことじゃないから。」


 「もしかして・・・恋の悩み?!だったらまかせて。私、ミルクちゃんのサポートするから!」


アリスはやる気に満ちていた。何人かの注意を引いてしまった。



 「なんでそうなるのよぉ〜」


 「良かったじゃん、話が大きくなりそうだわ。」


 「レイ、あなた本当に天使?人の不幸を喜んで・・・。」


 「そんなの天使も悪魔も関係ないでしょ。大体、天使と悪魔なんて、

 羽と血ぐらいしか違わないじゃない。顔だけじゃどっちかはっきりわからないし。

 悪魔だっていい人沢山いるわよ。」



 そうこうしているうちに担任が来てしまった。

 

 

 「あ、勉強してない!」

 

 「もう悪あがきも出来ないわね。あきらめな。」


 「うん、そうする・・・。」

 


 朝のSHRが始まった。連絡は特に無かったようだ。

いや、シルクの頭の中はテストのことで一杯だったから聞いてなかったのかもしれない。

問題のテストは案の定、シルクはあまりいい点数を取れなかった。

そして昼休み。シルクは食事を早めに済ませて本を読み始めた。

「Into the dream・・・」という小説だ。

 


 「もしかして、昨日の夜読んでたのってそれ?」レイが聞いた。


 「うん。これ面白いと思うんだ。レイも読まない?」


 「私はパス。小説とか読むの好きじゃないから。アリスに勧めなよ。あの子きっと喜ぶよ。」


 「あ、そうだね。じゃあ早速勧めてきます。」シルクはアリスのもとへ本を勧めに行った。

 

 「あ、スゴく読んでみたいなあ〜。ねぇ、今日は用事ないから

 放課後一緒に図書室に借りに行かない?」


 「うん、じゃあそうしようか。」




 予想通りアリスは喜んでいた。そしてベルが鳴って昼休みが終わった。

月曜は七時間授業なので、アリスは放課後が待ちきれないでいた。

しかし、やっと放課後になったと思ったら、アリスは急に部活のミーティング

で呼び出されてしまった。仕方なくシルクはミーティングが終わるまで図書室で

待っていることにした。すると偶然隣のクラスの「キリア」が図書室に入って来た。

シルクとはちょっとした知り合いだ。



 「シルクさん、一人で読書ですか。」

キリアが窓際の席に座っていたシルクに声をかけた。

キリアは悪魔。だが意外と優しい性格で少し大人っぽい。


 「今アリスを待ってるの。あの子吹奏楽やってるからミーティング中だって。

 でも、私のテニス部なんか今の時期ほとんど練習ないから、ちょっとでも

 部活があるのはうらやましいよ。」


 「僕のサッカー部も同じだ。今日も休みだから小説借りようと思って来たんだ。」


 「あ、キリア君どんな小説読むの?」シルクが何気なく聞いた。


するとその時、ちょうどアリスがミーティングを終えて戻ってきた。


 「ミルクちゃんただいま〜。ゴメンね遅くなっちゃって・・・・・・あ、キリア君。」


 「こんにちは。知ってるかな、Into the dream・・・って小説。

読んでみたくて初めから借りようと思ったんだ。」


 「あっ、私たちもちょうどその小説借りにきたのよ。私は二巻まで読んだから

 三巻借りようと思うんだけど、二人とも一巻だよね。二冊あったかなあ・・・・・・。」


シルクは小説の一巻を探してみた。しかし困ったことに、一巻は一冊しかなかった。


 「どうしよう・・・・・・。」アリスが少し寂しそうな声で言った。すると、


 「アリスさん、借りてもいいですよ。僕はやっぱり借りずに買うことにするから。」


キリアがアリスに小説を譲った。


 「本当にいいの?!」アリスは満面の笑みを浮かべていた。


 「うん。じゃあ僕は帰るとします。」そう言ってキリアは図書室から出て行った。

 

 「じゃあ小説借りてくるね。」アリスが貸し出し口のところに行った。


 その時、シルクは少し考えごとをしていた。



 

 「どうしたのミルクちゃん、ぼーっとして。」少し経ってアリスが小説を借りて戻ってきた。


 「えっ、あっ、いや、別になんでもないよ。」


 「そう?まあ、なんでもないならいいんだけど。それよりさあ、思ったんだけど、

 キリア君って結構カッコいいよね。ちょっと細めで背は高いし、勉強できるし、

 スポーツできるし、優しいし。でも、なんか悪魔の女の子にモテてないよね。どうしてだろう?」


 アリスがシルクに聞いた。


 「それってきっとキリア君が優しいからじゃない?

 何ていうか、悪魔っぽくないのよ。キリア君は。」


 「そっかあ。言われてみれば、悪魔よりは天使っぽいよね。何でかは知らないけど、

 髪黄色だし。明るい色の髪の悪魔って滅多に見ないよね。」


 「うん。染めてるのかなあ?」


 「どうなんだろうね。でも、結局は悪魔だもんね。

 私やミルクちゃんが恋とかしたら堕天使になっちゃうよ。」


 「そうだね・・・・・・」

 


 天使が悪魔のことを好きになってしまうと「堕天使」と呼ばれ、

差別されてしまうことがある。そしてちょうどこの時からだ。

シルクが不幸になってしまうかもしれない恋が始まったのは――




 一章 完

読んでいただいて本当にありがとうございました。


この小説は私が小説を書きはじめた頃のもので、思い出したついでに投稿してみました。今読むと、恥ずかしいところなんかがあったり、ダメ出しされそうなところがあったりしたのですが、あえてそのままにしておきました。


続きも不定期ですが投稿しようと思います。


感想いただけると嬉しいです。


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