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少女の名前


  「今度の浮気相手はその人ー?」

 「殴る」

 「殴んなって」

 「本当に亭主みたいじゃん」

 「うるさい」

 「誰だこの子は」

 「私を生んだくせに覚えてないの!?」

 「生めねーよ」

 「突っ込みどころが違う!」

 「うるさい」

 「なによ吉瀬リン、ぷんぷんしちゃって」

 「うるさいっつってんだろこのガキ餓鬼餓鬼っ」

 地獄かここは

 「せとぉっ」

 はい、なんでしょうか

 「このばかぶん殴っちゃって」

 御断りいたします

 「何でだよ、俺を巻き込むな」

 「あんたが声かけなきゃこんな状況になんなかったっつうの」

 濡れ衣だなあそれ

 「いいからぶっとばしてこいつ」

 「…だまってりゃ言いたい放題しやがって吉瀬リン」

 あ

 うん

 これやばいな


  本能には従うタイプだ

 その相手が幼女だろうがなんだろうが

 危険危険信号が出りゃもう確定

 にげろ

 「逃げろおおお」

 「え、ちょ、ぶっとばしていってってさっきから言ってるでしょおが!」

 知るか放せ

 「吉瀬リン、つかまあえた」

 吉瀬の腰の下に細い腕がしがみついている。

 やばいやばい

 「ひっ」

 吉瀬が一番か弱い声を漏らした。

 「さあて、なにしてほしい?」

 「…は、なして」

 「聞こえないよお」

 こんな子供は見たことがないな

 「歯あ折られたくなかったらこの汚い手を離せって言ってんだろこのバカ娘があああああ」

 吉瀬爆発

 うん

 地獄だな


  乱闘開始

 になると思っていたんだが

 「はい」

 「どうも」

 あっさり離しやがった。

 観客を大切にしろよな

 「で?」

 「ん?」

 「このこはだれだ?」

 何で訓練場にいる

 「旧友」

 嘘つけ

 「やだなあ、親友でショ?」

 「あっちいけよもう」

 あれ

 仲よさげだ

 「せめて悪友」

 「下がってんじゃん」

 ええと

 「名前は?」

 「こいつは瀬戸よ」

 「りょーかい。私は鵜那よ」

 「う…な?」

 「変な名前って思った? ねえ、思ったでしょ」

 危険危険

 「断じて思っておりません」

 やばいやばい

 「ふうん」

 殺気

 

  「せんぱーい?」

 「す…が!」

 須賀の声が上から響く。

 「無事っすか?」

 「無事っす」

 「キャラ変わってないすか?」

 「変わってないす…早く引き揚げろおおおおおお」

 この地獄から抜け出させてくれ

 がし

 がし?

 「簡単に脱出させないよ?」

 鵜那さ…ん

 「須賀助けっ…」

 「だあめ」

 意識真っ暗

 あーあ

 これ死んだな

 うん


  声が聞こえる

 「と…と…せと」

 頭が痛い

 「起きろこのウドの大木!」

 おお

 吉瀬か

 「袋叩き2秒前」

 「起きた起きたってグナツ」

 「あ、御免」

 御免じゃねえよ

 「鵜那は?」

 「後ろで寝てる」

 「ここは?」

 「さらに地下」

 「状況は?」

 「かわらず」

 地獄か


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