木々の切れ目
「とりあえず六発蹴りますか?」
「何でだよ…」
「蹴ればいいじゃない」
「…」
吉瀬とは違って寡黙なやつだな
「…萌」
「は?」
「…萌だ」
「可愛い名前っすね」
「あ、名前か。何かと思った」
「よろしく萌チャン」
「やめといた方がいいわよ? 彼女あたしよりもSだから」
「…フ」
「うわ、笑った」
「須賀、怪我する前に遠ざかっとけ」
マジみたいだな
さて、四人になった
出動っつわれたらどうするよこれ
「吉瀬さん手は解いてやりましょうよ」
「そしたらまた瀬戸にやったみたいに真っ先に頸動脈狙ってくるわよ」
「え? 俺頸動脈やられたの?」
「だから血拭いたって言ったじゃないですか」
まてまて
え、頸動脈って結構大変な脈じゃ
「やっぱ六発蹴っとけ」
「まあ、非道ね」
「先輩ひどおい」
脈切られた方が非道か
「…ごめん」
萌が、萌が単語じゃない文を言った!?
「クララが、クララが喋ったあ!」
乗るなそこ
恥ずいのはこっちだ
ん? ごめんって単語か
って真剣に考える自分めが
「…一発で仕留め損ねた」
「?」
「…楽にしてやれなかった」
ちょっと待て
電波かこの子は
何故日本語が通じないんだ
「殺す気だったの?」
聞くなそこ
「…無論」
いや、論点は大量にあるだろ
木々を抜ける地点まで来てしまった
「話してるとあっという間っすねえ」
「須賀って体力あるのね」
「ありますよそりゃ」
「…見えない」
「ちょ…萌さん」
何で意気投合してんだよ
「瀬戸はつらいんじゃない?」
「年ですからね…痛いっ」
グーでいった
「二八だと言ったろ」
「嘘だあ」
「…嘘」
「嘘ですよ、冷静に考えたらやっぱ嘘です」
黙れお前ら
二八で悪かったな
どうせアメリカンアイドルみたいにはなれねぇよ
「…」
「憐れみの眼で見るなああああ」
これだけ大声で話してりゃ見つかると思ったんだがな
敵さんもこの人数と組み合わせにビビってるのか
「吉瀬さんて前線なんですよね」
「そおよ」
「俺は…少佐です」
「嘘つけ」
「嘘じゃないっすよー」
「間が空いてただろおが」
「じゃあ、中将でいいっす」
「上がってんじゃん」
「…中将は私」
「あ?」
「え?」
「嘘ー?」
「…だから腕を解け」
だんだん言語が発達しているじゃないか
可愛げないな
頸動脈切った時点でないかそれは
「…ナイフなんて持ってないから」
「出せ今すぐ」
天然か?




