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実習は霧の如く

  最後だ

 バトルタイムスタート

 「ねぇねぇ、ご主人様?」

 「なんだ」

 「吉瀬リン、チャラ男、日本海、瀬戸チャン、ご主人様、あたし…誰が死ねばいいの?」

 多分須賀がチャラ男

 そして萌が日本海

 逆じゃあないだろ、多分

 「お前は私の命令を聞いてなかったのか?」

 「瀬戸チャン殺せ的な」

 「まぁ、そうだな」

 「でもね、鵜那思うの」

 「私に攻撃する気か」

 「まさか、死んじゃうじゃん。そうじゃなくてね…」

 色んな答えを予想しておいた。

 しかしどれも外れた

 「この下らない選抜してる指揮官のしちゃえば?」


  苦い沈黙。

 「鵜那…本気で言ってるのか?」

 「九割方」

 「却下だ。貴様はガキか? ガキだな…」

 「だぁから、こいつら今まで戦ってきた奴ら息の根止めてないよ。あたしも後始末なんて嫌だし」

 「貴様な…」

 「でね、そいつら殺ってたらタイムアップだよ? 無理じゃん」

 「なぁ、話し中悪いが、こいつら全員復活したぞ」

 悪いな空気読めなくて

 「あーあ、全くレディの腹殴るなんて屑だな、ねぇ萌」

 「…死ねばいいのに」

 「まぁまぁ、二人とも怖いっすよ。俺は、折られた分だけやり返せりゃ十分すかね」

 「…あいつのせいで瀬戸との差が差が差がぁぁ」

 「萌チャン真面目怖いっす」

 「お前ら元気だな」

 ボロボロのくせして

 「先輩、実は話聞いてましたよ。指揮官のしちゃえばいいんすよね」

 「そこだけかよ…」

 「黙れっつってんだろ! 周り見ろ貴様ら!」

 「有明海がどうしたのよ」

 「無視されて傷ついたんすよ、ナイーブチャンだから」

 「…ねばいいのに」

 「吉瀬リン!!」

 「あっ、鵜那」

 抱き合うかに見えて直前で立ち止まった二人。

 ピッと鵜那が指を指す。

 「上も下もないのに横だけあるものなんだ?」

 「線?」

 「外れた」

 「戦場での人間関係」

 「馬鹿、正解」

 「姪と叔母の再会劇パチパチ」

 「うざい須賀」

 「五月蝿いチャラ男」

 「本当にすみません!」

 「鵜那…裏切るのか?」

 有明、うん、ブチ切れてるな

 随分前から

 「違うよご主人様、作戦変更」

 「…なにをする気だ」

 「この六人で逃げる」

 「はあ!?」

 五人が同時に叫んだ。

 否、萌は遅れたな

 「二拓だよ。全員死ぬか、全員生きる。さっき言ったとおり時間もないしね」

 「…」

 「指揮官てどんな奴なんだ?」


 「知らない」

 「さあ?」

 「…知らんな」

 「見たことないっす」

 「大体さ、今日がどうやって始まったかすら覚えてない」

 「それ…俺もだ」

 沈黙。

 「有明海は?」

 「…………覚えていない」

 どうやら突っ込む気力も失せたようだ。

 「わーわーわー! 頭痛いこと言ったの誰? 死ねよもう」

 「鵜那! 自粛しろあんたは」

 「なによう吉瀬リン。早く指揮官倒そうよ」

 「だから、その居場所もわかんないんだって!」

 「なぁ、須賀」

 「なんすか先輩」

 「お前、故郷のポテトパイ覚えてるんだよな」

 「いきなりなんすか。頭いっちゃっ…」

 「俺は待機場所からしか記憶がないんだ」

 「真面目頭いっちゃっ…」

 「有明はどうだ?」

 「わからぬ。貴様らを片付けて、5人に絞れという命令を受けただけだ」

 「でも有明海のこと覚えてるんでしょ瀬戸内海は」 「ああ、そこがわかんねえ。他の奴らはどうだ?」

 「…私の記憶ない」

 「萌…あたしと同じこと言うなんて」

 「いってねーだろ」

 沈黙。

 「どうするよ」

 「だから早く一人倒せば良かったものの…」

 「でもご主人様ぁ、それでどうなったかわかります?」

 「指揮官が現れて?」

 「棺………」

 「先輩、羊がどうしたんすか」

 「棺だ。棺だよ。俺なんかピンと来ちまった」

 「それはつまり頭いっちゃっ…」

 「そろそろ殴るぞ須賀。棺が6つ」

 「夢の話か?」

 「有明、お前も見たのか?」

 「うわ、この二人夢シンクロしてんちゃう?」

 「吉瀬リンいきなり口調…」

 有明が自分の後ろを省みる。

 「この先にな、管理室がある」

 「なぁ…六ってさ、やっぱ…」

 「確証ないこと言うは無駄だ」

 「だな」

 「…どうする」

 「行くぞ、管理室」

 「ご主人様ぁ、いいの? 鵜那、吉瀬リン倒さなくていいの?」

 「クク…もうどうでもいいな」

 「じゃあ穴に戻って…」

 「それはだめだ」


  ラスボスの扉にしちゃ簡素すぎるな

 六人は管理室前に並んだ。

 「吉瀬リン」

 「なに、須賀」

 「愛してます」

 「精神科行け」

 「だから好きです」

 「やめろ馬鹿」

 「キスしてください」

 「代償は命ね」

 「じゃあ、全部終わったら」

 可愛いなぁ

 「瀬戸チャン」

 お前かよ

 「幼女は範囲内?」

 「外だ」

 「冗談なのにぃ」

 だろうな

 「…有明海」

 「何だ日本」

 「…私だからな」

 「なにがだ」

 「…貴様を倒すのは私だ。死ぬな」

 「馬鹿なのか」

 「…覚えてろ」

 「行くぞ」

 「Open!」

 思いっ切り蹴り飛ばした扉の向こうは、書斎だった。

 「いらっしゃい」

 「指揮官?」

 「そうよ」

 「どこにいるのよ」

 「こっちよ、こっち」

 声を追って踏み込む。

 「誰も来てくれなかった今まで」

 なんのことだ

 「有明、声に聞き覚えは?」

 「命令したときと同じだ」

 「どこにいるんすか!」

 「後ろ」

  六人が扉を振り返った。

 「クスクス、人数オーバーだもの」

 「し…き官?」

 「みんな失格だわ」

 「ふざけんな狂人」

 「あらあら棺よ?」

 時が止まる。

 「…なんか、電波がいるんすけど」

 「集中しろ、あれでも指揮官だ」

 「何しにいらして?」

 「あんたのその制服用済みだって伝えにね」

 「嫌よ。私は指揮官なの。皆さん命令待つだけよ」

 「だから五百の部下を殺したのか?」

 「んー残念ね。まだ百三十二人生きてるわ。あなた方を含めて」

 「なにがしたいのよ」

 「…」

 「こんな人数動かして上に立っといて、あんたなにしてんのよ」

 「マジでそうっすよ」

 「…ねばいいのに」 「来てくれなかったからよ」

 「え…?」

 「誰も来てくれなかったじゃない!」

 

 「なにいって…」

 「だからだからだからだから!! みんな入れちゃえば良いんだよ」

 「誰か、通訳ちょーだい」

 「吉瀬リン静かに」

 「なによ、須賀の癖に…黙るわよ」

 「様子がおかしいぞ」

 「瀬戸、貴様も感じるか?」

 「ああ」

 「やっぱりこいつらシンクロ…」

 「吉瀬リン?」

 「はいはい、黙りますー」

 「みんなみんな、棺の中に」

 「下だぁ!!」

 落下。

 「落とし穴あああああ?」

 「死ぬって…」

 「…ねばいいよもう」

 「萌、手握って」

 「…怖い吉瀬リン」

 やばいな

 このスピードはやばい

 「先輩、空中戦は習ってません!」

 「気抜けるなお前は…はは」

 「笑ってる場合か。須賀、貴様なんのための武器だ」

 「あ、気づいてたんすか。敵のくせに」

 ガクン。

 「勿論ワイヤーはくくりつけてますよ?」

 「がっは…須賀、腰にいつの間につけた?」

 「須賀、腕が千切れるかと思ったぞ」

 「みんな無事ぃ?」

 「なんでそんな元気なのよ鵜那あ!」

 「だって、穴は独壇場でしょ?」

 「あれ、鵜那チャンにつけた覚えは」

 「鵜那はロープ使いだ」

 「あん、バラすんだご主人様」

 「…いいから早く上げろ。いつまで奈落を見てるつもりだ」

 「初めて萌が二文しゃべった!」

 「駄目よ、命綱なんて仕掛けちゃ」

 寒気

 「指揮官っ」

 「ダメダメ。こんなの没収よ」

 「あいつマジ気違いでしょ!!」

 「棺は下よ。入りなさい」

 「……お前も入るんだよな」

 「え?」

 指揮官が固まるのが見える。

 「お前は部下全員手に入れて独りで生きてけねぇだろ」

 バツッ

 あ、切れた

 落下だよ

 「勿論じゃない…」

 へぇ、ご苦労なこって


  6つの棺がありました。

 全て空だったそうです。

 だから、指揮官は思いました。

 入れてあげなきゃ可哀想

 「ぶはっ」

 「ふあっ」

 「下水溜まりとか舐めてんだろあいつうう」

 「…溺れる」

 「萌、大丈夫。手繋いでるから」

 「で、先輩」

 「言うな」

 「いつになったら今日が終わるんすか!」

 「あいつが何したいのかわかんなぁい。鵜那立ち泳ぎできないのよ」

 「鵜那、私に捕まれ。で、瀬戸、どうする?」

 あれぇ

 俺、リーダー?

 「あ」

 「え?」

 ボチャン

 は? え、何が

 「棺まで案内しますわ」

 指揮官、おま…馬鹿だろ

 「ついてくしかないだろ」

 「長い演習すね」

 「だな」


  狭くて暗い地下水路を抜けると、広間に出た。

 棺が並んでいる。

 「着きましたわ」

 「ここで眠れってか」

 「ノンレムで?」

 「…笑えない」

 「じゃなきゃ終わらなくてよ」

 「あんたマジなにしたいかわかんなぁい」

 「先輩、そろそろ手出していいすか」

 あれ?

 だから大人しかったのか

 「無駄です!」

 「っ消えんのかよ!」

 「あれ、どこいった?」

 「…疲れた」

 「もう棺入っちゃいましょうよ」

 「吉瀬リン…」

 「夢落ちよ夢落ち。目覚まさなきゃ」

 「瀬戸、私はわからない」

 「みんなわかってねぇよ」

 「…棺、入るか?」

 それ以外にしたいことあるか?

 トイレも無いぜここ

 「いやっす」

 「須賀?」

 「鵜那チャン言ったじゃないですか。六人で逃げるって」

 「どこにだよ」

 「ここ以外にです!!」

 「須賀…」

 「いやですよオレ。逃げますよ独りでも」

 「私も逃げるよご主人様」

 「鵜那…仕方ないか」

 「…疲れたけど、ここは嫌」

 なんだよお前ら

 「はっ…行くか」

 「先輩! そうこなくちゃ」

 六人。

 逃げ道はあるはずだ

 「ここに来るまでにね、風が吹き込んでくる抜け穴があったよぉ」

 鵜那、愛してる

 範囲外だがな

 「よおぉし、行くわよ!」

 「吉瀬リン、いっきましょう!」

 「…エロい須賀」

 「何でっすかあああ!!」

 うん、いつものテンポでよろしい



次回最終回さ!

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